ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

最近LA(ロサンゼルス)では、ヨガや瞑想に加えてLA女子の注目の的になっているヘルシートレンドがあります。それが「ブレスワーク」と呼ばれる呼吸法を習うクラス。この話題のブレスワークについて詳しく解説した『理論編』に続き、この夏一番アツイと囁かれているLAのブレスワーククラスを実際に体験しました。まさか、あんなことになるなんて……。想像を超えたブレスワーククラスをレポートする『実践編』。いよいよスタートです!

LAに溢れるブレスワーク

健康面でもさまざまな効果があるブレスワークですが、最近のLAではやはりメンタルヘルスの一環として利用している女性が多いようです。LA女子は、ヨガからメディテーション、そしてブレスワークへと、共通項を多く含みながらも、緩やかにその選択肢の幅を広げています。特にブレスワークはクラスによって特徴が大きく異なり、ヨガの要素が強くフィジカルエクササイズの延長としてブレスワークを行うクラスもあれば、メディテーションからの流れを組み込みながらもセラピーの色も少し加えるようなクラスなど、インストラクターによって多種多様なのです。

「これは私も一度体験してみたい!」と早速検索をかけてみると、実に多くのクラスがヒットします。その中で特に気になったのが、今回体験したジョン・ポール氏によるブレスワークのクラスでした。昨年から雑誌『ロサンゼルスマガジン(Los Angeles Magazine)』やニュース番組『グットモーニングアメリカ(Good Morning America)』などさまざまなメディアで立て続けに取り上げられている注目のインストラクターです。

「メディテーションが新しい形のヨガだとするなら、ブレスワークは新しい形のメディテーションなんだ。これから5~10年でブレスワークはもっと大きくなり、いろんな形にシフトしながら、ヨガのように当たり前になっていくよ。実際にヨガやメディテーションよりシンプルで効果があるからね。結局人間はシンプルなモノが好きなんだよ」と語るポール氏。ブレスワークを非常にスピリチュアルで、ヘビーなセラピーのように扱うクラスもある中で、初めて見た彼のウェブサイトは非常にシンプルでカジュアル。「僕はドクターでも、セラピストでも、グルー(教祖や教祖的存在の人のこと)でもない。より健康的で満たされた人生を送るためのカギを見つけただけの男だよ」と自身を説明するように、ブレスワークをより身近に誰でも手の届く場所に置いているような印象を抱きました。本来なら、確かに少しスピリチュアルで、知識も必要かもしれないブレスワークを、「とりあえず試してみたらいいんじゃない。ヘルシーライフのヒントが見つかるかも。いや、見つかるからやってみて!」というカジュアルさで提供しているスタイルが、非常に今のLAらしく、これを体験してみたいと数あるクラスの中から直感で選んだわけです。

月曜の夜に集うファンたち

ポール氏が主催するクラスには「ブレスワーク」「メディテーション」そして「ブレスワークとサウンドバスがセットになったクラス」がありましたが、せっかくなので、なんだかお得そうなブレスワークとサウンドバスのクラスに。メディテーションのクラスは、ハリウッドやパサデナなどのスタジオで開かれますが、ブレスワークはサンタモニカの教会の講堂のような場所で開催されるとのことでした。

月曜の夜8時スタートを目指し、7時45分には会場に到着。すでにチラホラと参加者がいます。驚くべきは、彼らの服装でした。

ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

パジャマ姿に枕を持参している参加者もかなり多いのです。確かに事前の案内メールには、「できるだけリラックスできる装いで」と記してありましたが……。寝るつもり100%ということでしょうか?参加者の多くは何度もクラスに来ているような印象です。

ちょうど近くにいた別のカップルの参加者に話を聞いてみると、女性の方は3回目、男性は2回目とのこと。このクラスが気に入っているので、今回が初参加という友達にも紹介したから、後ほど合流するのだと笑顔で話しかけてくれます。「何がそれほどスペシャルなのかしら?」という私の質問にも、「メディテーションも好きだけど、まったく別物だと思う。メディテーションはね、自分の本来の考え方とか姿がクリアに見えてくるじゃない?でもブレスワークは、それにプラスして要らないものが削ぎ落とされるのよ。他では味わえない感覚よね」と熱っぽく語ってくれた彼女。メディテーションにもそれほど精通していない私には、あまりにもレベルの高いトークで、「このクラスについていけるかしら?」と少し不安になったのが正直なところ。

そんな私の不安をよそに、あっという間に会場は人で埋め尽くされました。いよいよポール氏も登壇。少なく見積もっても70人余りいる参加者に向かい、肉声で話し始めます。

ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

どんな先生なのかと思えば、やはり想像していた通り、とてもカジュアルで気さくな人柄だということが、最初の3分で分かりました。高尚でスピリチュアルな話し方、というわけではなく、友だちに語るように、時にはスラングやジョークも交えながら、会場をドッと沸かせます。

「ブレスワークは語ろうと思えば長いけど、やってみればいい。とても簡単でシンプルだから。それで感じたことが君のブレスワークの体験の全てだよ。そして効果は瞑想やセラピーの10年分さ!」とこれまたシンプルなイントロダクション。「とにかく体験してみて」と説明もそこそこで早速、呼吸法のレクチャーに入りました。

初体験のブレスワークで、手足に電流が

彼のブレスワーク自体も至極シンプルでした。仰向けで床に寝転がり目を閉じて、1回目に吸う息で胸をいっぱいに。続けて2回目に吸う息では腹部を一杯にします。最後はそれらをゆっくり吐いていきます。つまり2回吸って、1回吐くという方法。これはさまざまなブレスワークのハイブリットなのだそう。呼吸自体は速過ぎず、遅過ぎずで、フォローしやすいスピードです。初心者でも十分にできるくらいシンプルですが、他のことを考えずに、呼吸に集中しなければならない程度に複雑、という絶妙なテクニックレベルです。

「音楽を聞きながら、とにかく呼吸に集中して。外に出したい気持ちが溢れてきたら、我慢せずに全部出すんだよ。それがあなたの体に溜まった要らないモノだ。捨ててしまいなさい!」ポール氏がそういうと、会場の電気が落ち、紫のLEDライトが少し不気味に壁を這うのがくっきり見えます。「ブレスワークを数十分体験したら、サウンドバスに切り替えるからね。通常の呼吸に戻したくなったら、いつでも戻して大丈夫。無理はせず、リラックスしながら体の変化に任せればいい。それじゃあ行こう!横になって!」

ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

なんとか呼吸法はフォローできるかなと思ったところで、早速スタート。すると会場には割と大きな音量で、決してスローテンポではない曲が流れ始めました。まずこれにも驚いてしまった私。勝手なイメージですが、「水が流れたり、竹が触れたりする」BGMを想像していました。しかし、歌詞も入ったモダンな曲が会場に。その音楽の中に、ポール氏のガイドが響きます。

すると、呼吸法が合っているかも分からないうちに、手足にビリビリとした感覚が広がってきました。寝ている体に腕を沿わせて降ろしているはずなのに、手先がピンっとひきつって床に付きません。「何?これは?」と思っていると、「手足がビリビリとしている人がいたら、慣れないうちはそれが普通だから心配しないで。むしろ呼吸法を実践している証拠だ」というポール氏の声が耳に届きます。なるほど!じゃあ呼吸法は合っているのだと少し安心した気分に。

しかし、さらにブレスワークを続けていると、不思議な感覚に入っていきました。全身の血が巡り回っているような、ビリビリに乗って何かが駆け巡っているような感覚です。確かに何かを外に出したい気持ちもあるような気がしてきました。

その涙は、デトックスか伝染か?

「吸って、吸って、吐いて」「ストレスも不安なこともイヤなこともムカつくことも全部出して。いいエネルギーを吸って、悪いものは全部吐きだして」音楽に合わせてガイドを続けるポール氏。そのうちに彼自身もなぜか感情的になり始め、ポール氏も涙声に。「いいかい、出したいものは出すんだ。泣いてもいい。悲しみも怒りも過去のトラウマも、あなたが前に進むことをブロックするもの全てを全部解放してあげて」という誘い文句に誘われるように、会場からすすり泣きの声が所々で響き始めました。

こうなってしまうと私の場合は、問題があります。私は日常生活でも人が泣いていると、かなりの高確率で感染してしまう、もらい泣きの名手なのです。自分の中で何かワッと湧き出て泣きたいのか、ただいつものように人が泣いているのが伝染して泣きたいのかよく分からないまま、なんと私の目にも一筋の涙が!メディテーションでも涙が出る人がいるとは聞きますが、ブレスワークでも涙が出る人は出るようです。

そんな感傷的な空間から一転。心地良い開放的な音楽に変わり、「今度は手をつき上げて、宇宙のエネルギーを自分に取り込んで。クリアになった今の自分を、感謝や幸福のいいエネルギーで満たすんだ」とポール氏が優しく語りかけます。

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さらに「スピリチュアルに入ってきたな」となぜか客観的に思いながらも、同じように手を伸ばして“宇宙のエネルギー”で満たそうと試みる私。それほど壮大なエネルギーを取り込めたかは不明ですが、毎日の小さなことに感謝する気持ちで胸がいっぱいになったのは確かです。そうしているうちに、今度はサウンドバスの鐘の音が響き始めました。

ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

サウンドバスで全身が揺れる!人々はいびきの世界へ

全身のビリビリも相まって、鐘の音が全身に響き渡ります。この時点でBGMは消え、鐘の音や海にいるような、豆が流れる音など、癒しのサウンドに引き継がれました。この段階で、私はなんだか疲れてしまい、一旦通常の呼吸に。するとすっかり脱力モードに切り替わってしまい、強力な睡魔が襲っています。私はなんとか耐えましたが、いびきをかきながら寝ている人も多数いました。

しかし、サウンドバスの音がこれほどまでに体内に響くのも初体験。マッサージ機の振動の上に乗っているような不思議な心地良さがありました。

味わったことのない疲労感と爽快感

静かにサウンドバスがフェードアウトしていき、再びポール氏の声が響きます。「今日のセッションはコレで終わり。ブレスワークのパワーを感じてもらえたと思うよ。質問は何でも受け付けるから、ぜひ僕の所に来てください」という言葉で約90分のセッションは締めくくられました。

その後も会場は暗いままの余韻に浸り、多くの参加者が言葉を交わしていました。私はというと、すっかり脱力した後に疲労感にドッと襲われていました。仰向けになっているヨガマットからなかなか起き上がれないのです。「このまま寝かせてください」という気持ちをなんとか奮い立たせて、座り直してみました。すると不思議なことに、慢性的に患っている肩コリや首コリが解消したような気分になります。疲れているけど、すっきりしている、という感じです。まさに運動した後のような感覚です。

ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

そして、帰りの車内では確かにマインドがクリアになったような鋭さを感じていました。眠いのに冴えている、とでも表現できるような。体の中や頭の中をゴシゴシと洗われたような未体験の清潔感も残っています……。書き手としての腕を疑われる非常に抽象的な感想ですが、そんな説明がぴったりきてしまうような、まさに“抽象的な”体験だったのです。しかし確かにいえることは、この本人にしか分からない“抽象さ”を求めて毎週LAのクラスが参加者で溢れていること、私の肩コリが少し楽になったこと、明日も頑張ろうと思いながら帰路についたこと、次の日から呼吸を意識することが多くなったことでした。

“胸を張って生きる”ということ

ヨガよりも簡単、瞑想よりも効果アリ?

自分を誇らしく感じたり、自信に満ち溢れたりすると、「胸を張る」という表現を使います。呼吸を意識するようになって思うことは、できるだけ大きく深い呼吸を心がけると自然に胸を張ることになるのです。体の中で肺をめいっぱい広げるイメージです。それは、お腹に息をいっぱい吸い込むときも同じで、ピンっと背筋が伸びていないと体の前面の体積を最大限に開けることができません。今回のブレスワークが仰向けの状態で行われたのは、それも理由にあるのだと私なりに解釈しました。寝ている状態で自然に腕を体に添わせると、肩甲骨が閉じ、胸部が大きく開いた状態になります。普段猫背の方でも、仰向けであれば、重力によって、肩は自然と開くというわけです。そして、真っすぐ上を見る。目を開ければ上しか見えません。まさに“胸を張って、上を向いている”状態です。ヨガの座ったままの呼吸法も同じことが言えます。“胸を張って、まっすぐ前を見据える”。比喩的な捉え方ですが、正しく呼吸するということは、胸を張って生きていくことと、大いに関係しているのかな、とふと感じました。

今回、初めてブレスワークのクラスを体験しましたが、呼吸一つ変えるだけで心身の状態に変化を与えることができるのは明らかでした。当然のように無意識でしている呼吸ですが、一日2万回以上もしている呼吸の質が少しでも変われば、それは心と体にとって非常に大きな変化になると思いませんか?今、何か変えたいことがある方、とりあえず今日は気が向いたときに、大きく体を伸ばして深呼吸をしてみましょう!

出典

http://voyagela.com/interview/meet-jon-paul-crimi-breathe-jon-paul-breathwithjp-com-santa-monica-hollywood-malibu-studio-city-live-online/
http://www.lamag.com/breathwork/
https://www.breathewithjp.com/breathwork/
https://www.breathewithjp.com/breathwork-how-to-breathe-better/
https://www.doyouyoga.com/the-7-best-yoga-breathing-exercises-both-on-and-off-your-mat/

この記事を書いたライター

Beauty Lifestyle Writer

東京でファッション誌の編集・ライターとして活動後、渡米。LAではセレクトショップのバイヤーに。妊娠、出産を機に退職した後はフリーランスのライターとして活動再開。Newスポットの探索、本屋巡り、図書館でお籠り、ハワイへの逃避行が大好き。娘の笑顔とアイスクリームさえあればとりあえず幸せな30代女子です。

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