「美食の街・スペインのバスクに行こうよ!」第1回:旅路編
こんにちは。料理研究家の藤沢セリカです。以前、レシピの記事で「バスクチーズケーキ」をご紹介しましたが、バスクはどこの国にある地域なのか覚えていらっしゃいますか?
実は少し複雑で、バスクはスペインとフランスの間にまたがるようにある地域です。「スペインのバスク」と「フランスのバスク」と2つに分かれ、それぞれ特徴のある街並み、そして食を展開しています。
中でも、もっとも注目を浴びているのがスペインのバスクにある「サン・セバスティアン」という街。世界有数の美食の街として食に関係している人はもちろん、最近ではグルメ好きな一般人も多く訪れる街になりました。
日本では「バスチー」の愛称で知られるほど、チーズケーキ発祥の地「バスク」の魅力をもっと掘り下げて紹介するべく、私・藤沢セリカが「美食の街」を旅してきました。
今をときめく 「サン・セバスティアン」を目指して
サン・セバスティアンは海辺の小さな町ですが、バル(※)が100件以上も立ち並ぶお酒好きの聖地。しかもミシュラン星付きの店も多く、「美食倶楽部」と呼ばれる美食家たちの集まる場所も多数あります。日本でも食の話題に敏感な人々の間で注目を浴び、NHKがバスクの特集を放送したほどの美食の街。また、女優でグルメな石原さとみさんがバスクをレポートしたTV番組が人気を呼び、日本人の旅行者が後をたたないとか。
旅行会社に聞いたところ、ここ数年は前例がないほどバスクへの旅行者が多いそう。これからもっと増えることに間違いありません。しかし、そんな人気の地域なのに出版物は少なく、情報が足りない状況です。私も初めて行こうと決めたとき、調べれば調べるほど、どうすれば行けるのか、どのような行き方が良いのかなど、謎が深まるばかりでした。
そこで、ここでは私の独断によるバスクへの行き方と、できるだけたくさんの美食スポットを回ること(バル巡り)ができるセオリーを数回にわたり、ご紹介します。
まずはサン・セバスティアンにたどり着くまでの、2通りの行き方をご覧ください。
※バル(bar):イタリア・スペインなどのヨーロッパ南部にある居酒屋や軽食喫茶店などのこと。「バール(bar)」とも呼ばれます。行き方その1:ヨーロッパ鉄道で行く謎だらけの車窓の旅
初めてバスクへ行こうと決めたとき、せっかくのヨーロッパだから電車に乗ってみよう、と思いつきました。と、その前に…日本の成田空港からエールフランス航空でパリのシャルル・ド・ゴール空港へ。到着が夜だったため、電車に乗るのは翌日の早朝にして、パリにて1泊。モンパルナス駅から出発するため、駅近のホテルを予約しました。
パリのホテルなのに!思わぬハプニング
そのホテル、立地は良かったのですがエレベーターにビックリ!1人しか乗れない謎の箱?のような驚きの狭さで、トランクを入れたら私が乗れないほどだったのです。部屋の階を押して、まずはトランクだけを乗せて上階へ。私はそのエレベーターを追うため、階段を駆け上がり、無事トランクをゲット!パリについて早々、階段ダッシュのハプニングに疲労困憊でした。
このエレベーター、大柄の外国の方は乗れないのでは…とあっけにとられ、あまりの衝撃に写真を撮るのを忘れてしまいました。
クロワッサン片手に電車に駆け込み!の大騒動
翌朝は、モンパルナス駅からTGVと呼ばれる新幹線のような電車に乗車。ここでまた、思ってもみないハプニングが炸裂!というのも、パリの電車は20分前にならないと、乗りたい電車がどのホームに到着するのかが分からないのです。
TGVは基本的に長距離移動用の電車なので、みんな大きな荷物をいくつも抱え、到着ホームを知らせる電子掲示板に釘付けです。電子掲示板に自分が乗る電車のサインが出たら、さぁ大変!みんな一斉にホームを目がけて一目散に猛ダッシュ。早めにホームにたどり着かないと、荷物を置くところがなくなって乗り遅れる可能性もあるからです。
パリに住む友人が「電車が遅れるのは日常茶飯事だけど、発車5分前にはドアが閉まるから気をつけて」と事前に教えてくれたので、私もクロワッサン片手に駆け込み乗車!なんとか無事に乗ることができました。
※ヨーロッパ鉄道の予約はこちらからできます。あらかじめ予約しておいた方が安心です。http://www.railguide.jp/train/tgv/
パリ版新幹線「TGV」に乗ってバスクへGO!
やっとバスクへ向かう車窓の旅がスタート!パリのモンパルナス駅を出発し、ボルドーを通過し、フランスとスペインの国境「アンダイエ(別の呼称はアンダイユ、エンダイエなど)」まで残り約5時間。
朝日を浴びて気持ちのいい朝、どんな景色が待っているのでしょう。ワクワクしながら見ていても車窓から見える景色は雄大で、ずーっと同じ調子。ときどき牛や羊、馬がちらほらいるのみ…。
でも、電車のシートはなかなか快適で、車内には食堂車とバーも完備されていました。食堂車に行ってみたところ、少しお年を召したヨーロッパ系のおじさまたちで混み合っていたため、車内での食事は諦めて駅で購入したカヌレを頂きました。
アンダイエ駅の乗り換えで、必死の叫び声
やっと、待ちに待ったアンダイエ駅に到着!さてさてサン・セバスティアン行きのバスク鉄道に乗り換え。どのサイトにも「乗り換え場所はすぐに分かります」と記載があったのに、実際探してみるとまったく分からないんです…。
TGVの駅を出たらバス停もタクシーも頼れる手段がなにもなかったので、困ったときの最後の手段!駅の中で「サン・セバスティアン、サン・セバスティアン!」と叫んでみました。そうすると親切そうな人が現れて、隣の駅まで案内をしてくれながらなんと!切符まで買ってくれました。一件落着です。
実際、各種旅行系ウェブサイトに「すぐ分かる」と書いてあったアンダイエの駅は、TGVの駅を出て右に数100m行ったところにあり、建物の外観は宝くじ売り場のような小さな小屋のようなもの。有名な駅であれば、大きく立派な建物かなと思ってしまいますよね…。全然分からなかったのも、何だか納得です。
ちなみに、この出来事は2019年10月現在のこと。2020年1月に再び行ったときは、この駅舎はもう存在せず、5分以上長い階段や坂道を歩いてたどり着く位置にお引っ越ししていました。やれやれ…という気持ちになってしまいますが、ヨーロッパ旅行の際は事前にウェブサイトで情報を確認しつつ、さらに現地でも最新情報を確認して旅行すると良いでしょう。
バスク鉄道に乗り換えて、サン・セバスティアンへ出発!
「右も左も分からない!」という経験を久しぶりにしましたが、バスク鉄道に切り替わると、先ほどまで「ボンジュール」だった挨拶が「オラ」に。国が変わったのにパスポートを見せる必要はありませんでした。陸続きだからでしょうか?基本的に出入国なんていう概念がないのでしょうか…。いや、そんなことはないはずなのですが…少しミステリーな経験です。
ちなみに、サン・セバスティアン駅はスペイン語で「ドノスティア」と呼ばれる、バスク鉄道の終着駅でした。
行き方その2:パリ経由ビルバオからサン・セバスティアンへ
ヨーロッパ鉄道の旅もステキですが、時間に余裕がなく「とにかく早く着きたい!」という方におすすめなのがこの経路。東京・羽田空港からパリのシャルル・ド・ゴール空港へ。2時間ほどのトランジットタイムを経て、ビルバオを目指します。パリからビルバオまでは1時間くらいのフライトです。
旅路の途中、パリの空港内で謎のジャパニーズフード屋さんを発見しました!その名も「Yo! Sushi」。サーモンの握りが2カンでなんと8ユーロ!驚きの価格ですね。
スペイン・バスクの入り口、都会な「ビルバオ」に到着
ビルバオはスペインのバスク地方ではかなり都会。サッカーやグッケンハイム美術館で有名な街です。メトロやバス、トラムなど、あらゆる交通手段が選べ、移動もとても便利。旧市街にあるバル街も広く、見どころがたくさんあるので、ここで一泊、滞在するのもアリですね。
グッケンハイム美術館の正面にはお花で作られた巨大な犬のモニュメントが!季節によってお花が替わるそうです。裏には大きなクモの創作建造物があったりなど、魅惑的な現代美術館です。その美術館の隣に併設しているビストロに偶然立ち寄ったら、とても美味しく、衝撃を受けました!そのビストロに関する情報は、また次回、お伝えしますね。
さて、行き方の話に戻しますと、ビルバオ駅から高速バスに乗って1時間強で「サン・セバスティアン駅」に到着します。そのバス乗り場はこちら。
地下鉄メトロのサン・マメス(San Mames)という駅から直結しているビルバオ市内のバス・ステーション(地下にあります)へ。柱の先にあるBUSが目印です。
バスのチケットは、直接、窓口で購入します。バスの本数は、おおよそ1時間置きに出ています。バスは12ユーロと安く、確実にサン・セバスティアン駅まで連れて行ってくれるので安心です。
ついに!美食の街「サン・セバスティアン」に到着
寄り道せずに直接目指すと、丸一日。ゆっくりと寄り道しても2日間の旅路を経て、サン・セバスティアン駅(スペイン語呼称:ドノステア)に到着です。 ここでお伝えしておきたいのですが、実はサン・セバスティアンには駅が2つあります。1つはTGVからバスク鉄道に乗り換えて着く駅と、もう1つはバスターミナルがある駅。
バルがひしめくローカル駅は、交通手段なし。
バスク鉄道のローカルな駅には、改札を出てすぐ駅構内に「ピンチョス」(代表的なバスク料理:二口大ほどに切ったパンの上に魚やピーマンの肉詰め、コロッケなどを乗せたもの。ワインのお供に好まれます)がいっぱい並んだバルがあります。
到着してすぐに飲むことができるなんて、美食の街「サン・セバスティアン」らしいですよね。旧市街に近いのはこのバスク鉄道の駅の方ですが、こちらはバスもタクシーも、便利そうな交通手段はありません。スーツケースを引きずりながら、ひたすら歩いて宿を目指すしかありません。駅から旧市街地まで徒歩15~20分くらいです。
スーツケースと一緒なら、バスターミナルがある駅を
一方、バスターミナルがある駅はというと、タクシーもバスも観光バスも止まる大きな駅です。タクシーを使った場合、旧市街までは8ユーロくらいでした。駅構内にバルはなく、ちょっぴり残念ですが、大きな荷物を持っている場合は特に、こちらの駅の方が快適ですね。
まるで映画の世界!大人が楽しめる「トレジャー・ランド」
幻想的で風靡な雰囲気がとっても魅力的なサン・セバスティアンは、大人の「トレジャー・ランド」と呼んでも良いでしょう。
目的地であるサン・セバスティアンの旧市街に到着しました。街並みはまるで映画のセットのよう!この街にはバルがひしめき合って並んでいるので、せっかく泊まる宿は、どんなに飲んでも、はってでも帰れる場所にすると、気兼ねなく、楽しいバル巡りができますよ。
●2通りのアプローチで「サン・セバスティアン駅」を目指しました。
行き方その1
日本(飛行機)→パリ(TGV)→アンダイエ(バスク鉄道)→サン・セバスティアン
行き方その2
日本(飛行機)→パリ(飛行機)→ビルバオ(バス)→サン・セバスティアン
のんびり時間をかけられる場合は電車を使って、ボルドーあたりで途中下車するのもきっと楽しいでしょう。早めにバスクに着きたいなら、ビルバオ経由でのバス旅行がおすすめです。
次回はスペインバスク・の玄関口ともいえるビルバオの素顔に迫ります。急いでバスクを目指す「行き方その2」の場合でも、寄り道できる現代アートの街にはどんな魅力が隠されているのでしょうか。次回の旅行記も、ぜひお楽しみに。
【バスク旅行記】
『“美食の街・スペインのバスクに行こうよ!”第2回:ビルバオ紀行編
』
『“美食の街・スペインのバスクに行こうよ!”第3回:バル巡り編(サン・セバスティアン)』
『“美食の街・スペインのバスクに行こうよ!”第4回:爆走バスで行くゲタリア・美術館編』
『“美食の街・スペインのバスクに行こうよ!”第5回:ゲタリア・世界一のアンチョビとレストラン編』
『“美食の街・スペインのバスクに行こうよ!”第6回:シドレリアの“チョッツ!”チャレンジ編』