コロナ禍の「口呼吸」にご用心。鼻は天然の高性能マスク!
マスク生活が始まってもうすぐ2年になろうとしています。季節に応じて、夏は接触冷感や吸湿速乾などのマスク、冬は二重構造、温度調整機能などのマスクが販売されています。快適にマスク生活が送れるよう工夫がなされているものの、「やっぱり煩わしい 」「息苦しい!」との声が後を絶ちません。呼吸はついハーハーと「口呼吸」になりがち。でも口は食べるための器官。本来は鼻が息をするための器官です。そこで今回は口呼吸と鼻呼吸の違いにフォーカス。美容の面でも「口呼吸」は老化の要因にもなるのです! 鼻呼吸がいかに優れたものであるのかお伝えしていきましょう。
人間は吸って吐いてを一日2万回
吸って、吐いて、吸って、吐いて。私たちは寝ている間も休むことなく息をしています。その数は1分あたり平均12〜16回。1時間にすると720〜960回、一日にすると17,280〜23,040回もしていることになります。これだけの回数を口でするか、鼻でするかは大きな違い。無防備な口呼吸に対し、鼻呼吸はとても優れた防御システムを持つ呼吸法だからです。
話をする時、歌う時、笑う時、運動をする時、鼻が詰まってしまった時など、一時的には「口呼吸」になりますが、哺乳類は「鼻呼吸」が本来あるべき姿です。にもかかわらず、続くマスク生活で増える口呼吸。ノーマスクの時まで、口呼吸が習慣化してしまっている人もいるようです。
本来の呼吸は口ではなく、鼻でするもの
では、具体的に鼻呼吸にはどんな防御システムが備わっているかを見ていきましょう。まず口と鼻、両方から空気を吸ってみてください。口からは空気がそのまま気管に入るのに対して、鼻の場合は回り道をして気管に入る感覚がわかると思います。この回り道は「鼻腔」と呼ばれるトンネル。ノドまで続く防御システムを備えた鼻の内部です。
鼻腔はまるで空気清浄機
ここからは上のイラストを見ながら確認してください。吸った空気はまず鼻毛に当たります。ビジュアル的には厄介な存在ですが、鼻毛は吸った空気に含まれた花粉やホコリなどをブロックするフィルターです。さらに奥では鼻腔粘膜と粘膜の上にびっしり生えた線毛が待機。ここでは鼻毛でキャッチしきれなかった小さな異物(ウイルスや細菌、化学物質など)が絡め取られます。鼻の中には空気清浄機のような機能が備わっているというわけです。キャッチされたホコリや細菌は鼻糞や鼻水に混ざって外に出ます。
温度調節や加湿機能も
また鼻呼吸の場合は、冷たく乾いた空気を吸い込んでも、加湿された温かい空気を肺に入れることができます。副鼻腔(鼻腔を取り囲むようにある空気のほら穴)に温度調節や加湿機能が備わっているからです。このためノドにも肺にも負担のない空気を送りこむことができます。さらにノドにも免疫組織があるので、すり抜けてきた細菌やウイルスは再びチェックを受けることに。こうした働きのおかげで、鼻から入る空気は、口から入る空気よりも感染症に罹るリスクが少ないといわれています。
脳もすっきり
鼻から吸って鼻から吐く、もしくは鼻から吸って口から吐く。どちらの方法でも深呼吸をすると頭がすっきりします。これは鼻呼吸には車のエンジンのラジエーター(冷却器)のように、脳の加熱を防ぐ効果があるからです。難しい内容は割愛しますが、これは鼻の奥と脳の底部が接しているから。温まる前の空気で血管を冷やすことができるのです。風邪や花粉症で鼻が詰まると、頭がぼーっとしたり、集中力が低下したりするのは、口呼吸だと吸った空気で脳を冷やすことができないからです。
防御機能を備えていない口呼吸
一方、口には鼻のような機能がありません。細菌やホコリはほとんど取り除かれないまま肺に送られてしまいます。ノドの免疫組織も外気とほぼ同じ温度の空気が当たることになります。夏はともかく冬は10℃以下の冷気が当たることも。ノドの免疫組織も冷やされてしまいますから、本来の力が発揮できません。
一見、口呼吸をしても何の支障もないと考えがちですが、感染症のリスクだけでなく、アレルギー性疾患や気管支ぜんそく、ドライマウスや歯周病など、精神性疾患など、口呼吸はさまざまな病気のリスクを高めることがわかっています。呼吸とはまったく関係ないような腰痛も実は口呼吸が原因のこともあります。口呼吸で横隔膜の動きが悪くなると、腹筋や背筋にかかる負担が大きくなってしまい腰痛に繋がるのです。
また、口呼吸を続けていると必要以上に二酸化炭素を排出してしまいます。「呼吸=酸素を吸って二酸化炭素を吐くこと」ですが、まるっきり二酸化炭素がいらないわけではありません。体内を弱アルカリ性に保つ重要な役割を担っています。
【口呼吸チェック】
□唇が乾燥しやすい
□朝起きたときに喉がヒリヒリ、イガイガすることがある
□ちょくちょく水を飲まないと口が渇く
□いびきをかく
□歯ぎしり
→口が開きがちだと起こる症状です。
□舌を上あごに当てて「コン・コン・コン」と音を出せない
→舌の筋肉が衰えて、口が開きやすくなっている可能性。
□食べるときにクチャクチャと音が立ってしまう
→口で呼吸をしながら食べている証拠です。ちなみに新生児は口呼吸をしません。正しい鼻呼吸だけをマスターして生まれてきます。鼻呼吸をしながら、上手にミルクを飲むことからもわかりますよね。
□口を閉じるとあごに「梅干し」ができる
→口を閉じたときにあごの筋肉に無理な力がかかっている証拠。本来は口を閉じる時に無理な力がかかることはないので、無意識に口呼吸をしている可能性。
口呼吸は美容的にもNG行為。老化を加速
ここまで分かると、もう鼻呼吸がしたくなりませんか?さらに、鼻呼吸を決意したくなる話を一つ。
口呼吸ばかりしていると、口の周りの筋肉が常に緩んだ状態になるため、ひいては皮膚のゆるみにも繋がってしまうということ。リップラインがぼやけたり、ほうれい線が深くなったり。その他、口呼吸は舌の筋肉をも衰えさせ、二重あごやいびきの原因にもなってきます。
もともと筋力は加齢で衰えていくものですが、そのスピードが早まる可能性があるのが昨今の状況です。コロナ禍で人と話す機会が減り、表情をつくる機会も減っています、しかもマスク着用。「マスクで隠れるから」の油断はキケンなのです。
舌の正しい位置とは?
口を閉じた時、あなたの舌は上あごにぴったりとくっついていますか。くっついている場合は、舌の筋力は正常な状態です。舌先が歯の裏についている、もしくはどこにもつかずに宙ぶらりんの場合は、筋力が低下しています。舌は約200gの筋肉のかたまりなので、筋力が衰えると支えきれず、垂れ下がってしまうのです。結果下あごが下がり、口も開きやすくなってしまいます。
今こそ「口呼吸」から「鼻呼吸」へ
「鼻呼吸」を意識することで、病気や肌老化のリスクを抑えられること、理解していただけたでしょうか。加えて習慣にしたいのが、口の周りと舌の筋トレ。舌や口周りの筋肉を鍛えると、鼻呼吸が自然にできるようになります。まずは1ヶ月。「口呼吸が減った」と感じられるはずです。顔のむくみやほうれい線、二重あごなどの解消にも役立ちます。
1. あいうべ体操
以上を10回、一日に3セット。声は出しても出さなくてもどちらでもOKです。
2. ワイパー筋トレ
上の歯10回、下の歯10回をワンセット。1日3セットが理想です。マスクをしたままでもできます。顔がちょっと疲れたり、舌の付け根が痛くなったりするのは筋肉に効いている証拠です。
3. サージカルテープ
強制的に唇を閉じることで鼻呼吸を促す方法です。サージカルテープはかぶれにくい絆創膏。ドラッグストアで手に入ります。寝る前に貼れば、睡眠中も自然と鼻呼吸に。いびきの予防にもなります。寝ている間にはがしてしまっていても構いません。まずは貼って寝ること。だんだん慣れてきます。
4. 意識してよく噛む
人間は食べものを噛む時、舌を上下左右に動かして食べものを混ぜたり飲み込んだりしています。噛めば噛むほど、この舌の動きによって自然と舌の筋力が鍛えられます。やわらかいものばかり食べずに、十分に咀嚼が必要なものをメニューに加えましょう。
一生役立つ鼻呼吸
コロナウィルスの蔓延が収束して、マスクの着用する必要のない生活に戻ることは誰もが願うところですが、まずは、現時点でできること「鼻呼吸」に意識を向けてみましょう。呼吸は一生のもの。今、体で覚えておけば、今後も末長く役立ちます。呼吸を意識するとともに、普段何気なく開いてしまっている口を閉じることも心がけていきましょう。深くゆっくりとした鼻呼吸は、自律神経を整えて、心の安定にもつながります。おだやかな気持ちはすこやかさと美しさをさらに際立たせるもの。ストレスフルなマスク生活の今だからこそ、鼻呼吸を身につけるときなのです。