脱嗜好品! ポイントは「効果」の入浴剤選び
秋も深まり、湯船に浸かる心地よさが身に沁みる季節です。でも、その湯船に入浴剤は入れているでしょうか?入浴剤は好き嫌いの好みが分かれるものですが、入浴の効果を高めるのが入浴剤の役割。上手に使えば健康維持に役立つことに間違いありません。嗜好品にしておくのはもったいない入浴剤について成分を中心にご紹介します。
目次
日本の入浴剤は明治30年に登場!
「さら湯」が体に良くない理由
さら湯を体に良いお風呂に変える入浴剤
寒い季節のおすすめは「からだ温め系」3種の入浴剤
ボディケアを兼ねる「ビューティ系」2種の入浴剤
夏の定番。さっぱり仕上げの「クール系」入浴剤
正しく理解していますか?ウソ?ホント?入浴剤
入浴剤効果をMAX得るために守りたいこと
日本の入浴剤は明治30年に登場!
国内だけで2000種を超える商品が流通しているといわれる入浴剤。そのルーツは古来の薬湯や温泉にあります。旬の果物や植物を湯船に浮かべる季節湯は、入浴剤の元祖のようなもの。すでに平安時代に空海が薬湯として用いたのが始まりといわれているのです。
そして近代。明治30年(1987)に「バスクリン」の原点となった入浴剤が登場しました。それは女性用の生薬「中将湯」をつくる過程で出る残渣(ざんさ)を使ったものでした。商品名は「浴剤中将湯」。これが銭湯で大ヒット(当時はほとんどの家にお風呂がない時代です)。しかし「温まり過ぎて、夏は汗が引かなくて困る」という声が上がり、爽やかな香りや体がスーッとする成分の研究が進められていったのだそうです。
「さら湯」が体に良くない理由
「温まり過ぎて困る」とまで話題になった「浴剤中将湯」。その声からも保温効果の高さが伝わってきますが、昔から「さら湯は体に良くない」といわれてきました。
「一番風呂は馬鹿が入る」という諺もあります。さら湯とは沸かしたての一番風呂のことですが、これは迷信ではありません。良くないとされる理由は、水道水を沸かしたお湯には、ミネラルなどがほとんど含まれていないから。タンパク質やミネラルを含む私たちの体液に対して、さら湯は濃度が低過ぎるためです。
「飲むわけではないし、ミネラルが入っていなくても問題ないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。確かにお湯に浸かるだけですが、浸かるだけでもお湯と体との間には「浸透圧」が起こります。
「浸透圧」とは、お互いの濃度を均衡させようと薄いほうから濃いほうへと水分が移動する現象のこと。簡単に説明すると、濃度の薄いお湯が濃度の濃い角質に“積極的”に移動している状態です。すると次に起こるのが、天然保湿因子や細胞間脂質の流出。さら湯によって広がった細胞間から、大切な成分が出ていってしまうのです。
また、水道水には肌の乾燥を招く塩素が含まれています。肌が弱い人やアトピー体質の人は、塩素が刺激になることもあるのです。
さら湯を体に良いお風呂に変える入浴剤
お湯は新鮮で気持ちいいけれど、体にはベストといえない一番風呂。二番風呂、三番風呂はどうかというと、先に入った人のミネラル分や汚れや皮脂が溶け込んだ分、浸透圧は和らぎます。塩素も皮脂などの有機物に触れると作用が弱まるので、二番風呂、三番風呂の頃にはすっかり和らいだ状態です。
とはいえ、家族の都合上最初に入ることもあれば、一人暮らしなら一番風呂が必然です。そこで頼りになるのが入浴剤です。さら湯に人為的にミネラルなどの成分を溶かすことで、濃度を濃くできるからです。入浴剤は有機物なので、入れるだけで塩素も除去できます。入浴剤は科学的にも有効なアイテムだということが分かります。
寒い季節のおすすめは「からだ温め系」3種の入浴剤
ここからは入浴剤の種類と効果についてお伝えします。入浴剤はお湯に溶けてしまえば、全て同じというわけではありません。基本は6分類。成分まで覚える必要はありませんが、体のコンディションや目的に合ったものを選び、色や香りはその日の気分で決めるのがおすすめです。まずは入浴の温熱効果をさらに高める温め系から紹介していきましょう。
無機塩類系
温泉由来の成分に多く含まれる成分(塩類)が皮膚表面のタンパク質と結びついて、からだに保護膜を作ります。保護膜による保温効果でお風呂から出たあともポカポカ感が長く続きます。温泉地の名前がついた入浴剤は多くが無機塩類系です。
【主な成分】
硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウムなど。硫酸ナトリウムは皮下組織を活性や修復作用があり、あせも、ひびなどの予防にも効果があります。硫酸マグネシウムは別名「アンチエイジングミネラル」とも呼ばれています。
炭酸ガス系
血管を広げる効果があります。血行が良くなるので、全身の新陳代謝も活発に。ちなみに体に入った炭酸ガスは最終的に肺から呼吸によって外に出ていきます。
【入浴における炭酸ガスと血流量の関係】
【主な成分】
炭酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩に、コハク酸・フマル酸・リンゴ酸などの有機酸類を配合して、炭酸ガスを発生させます。
生薬系
生薬に含まれている成分の働きと独特な香りの働きから成り立ち、薬用植物系とも言われます。生薬をそのまま刻んだもの、生薬のエキスを取り出して他の成分と組み合せたものなどがあります。生薬の香りによって好みが分かれやすい入浴剤です。
【主な生薬】
トウキ、トウガラシ、ウイキョウ、センキュウ、チンピ、ショウキョウは、お茶の水女子大学と日本浴用剤工業会の共同研究によって血行促進効果が認められています。
ボディケアを兼ねる「ビューティ系」2種
次に紹介するのはボディケアの一助になるビューティ系の入浴剤です。
スキンケア系
スキンケアを謳うものは乳液を配合した物が多く見られます。保温より保湿を重視したタイプです。湯船に浸かって柔らかくなった肌は、角層の内部まで保湿成分が浸透しやすい状態です。背中などカバーしづらいところも、湯船に浸かるだけで全身まんべんなく保湿できるのも魅力です。入浴後はさらにボディクリームなどを使うのが理想ですが、なかなかそこまでできないという人にとってもスキンケア系はおすすめです。
【さら湯とスキンケア系入浴剤を入れた場合】
【主な成分】
セラミド、米胚芽油、エステル油、スクワラン、ホホバ油、ミネラルオイル、植物エキス、米発酵エキスなど。
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酵素系
ごわつきやざらつきが気になる人は、たまに酵素系を選ぶのもありです。酵素にはたんぱく質や脂質を分解する働きがあります。お湯に浸かるだけでも清浄効果はありますが、酵素を配合した入浴剤を使うことで無理な刺激を与えることなく、なめらかな湯上りが期待できます。
【主な成分】
パパイン、パンクレアチン、蛋白質分解酵素などを配合したもので、無機塩類と組み合わせて使うことがほとんどです。
夏の定番。さっぱり仕上げの「クール系」入浴剤
クール系
無機塩類系や炭酸ガス系にメントールなどの清涼成分をつけたものです。体はしっかり温まっているのに、ひんやり感をもたらしてくれます。炭酸水素ナトリウム(重曹)やミョウバンが入ったタイプは、入浴後の肌をさっぱりさせる働きがあります。
【主な成分】
炭酸水素ナトリウム、 硫酸アルミニウムカリウムなどにメントールを配合。
正しく理解していますか?ウソ?ホント?入浴剤
お湯に溶かすだけで入浴効果を高めてくれる入浴剤ですが、案外、誤解もされています。たとえば…、以下のように思ってはいませんでしたか?
「炭酸系は泡が消えたら効果がない」
泡がシュワーっと溶け出しているときが、最も効果がありそうに見えますが、そんなことはまったくありません。完全に溶け切った状態の方が、炭酸ガスがお湯に均一に溶け込んでいるため効果的です。泡が消えても効果は2~3時間続きます。泡が体にまつわりつく、まつわりつかないということも効果には関係がありません。
「炭酸系はお湯の温度が高いほうが発砲する」
これは事実。確かに湯温が高いほうが炭酸の発泡力は上がります。ただし、溶存する炭酸がなくなるのも早くなります。
「クール系はからだを冷やす」
しっかりからだを温めながら、湯上がり感をメントールなどでさっぱりさせているのがクール系。決してからだを冷やすことはありません。
「2倍入れれば効果も倍増」
効果アップを狙って、大量に入浴剤を溶かすのは、使い方としては間違いです。肌に過度な負担を与えないように適量が設けられているからです。ただしオリンピック選手のサポート用に開発された入浴剤もあります。通常のきき湯の3倍の炭酸ガスを含有していますが、これは3倍量、5倍量で実験した結果、3倍が最も効果を発揮することを証明した結果から生まれたそうです。
「上がる時にはシャワーで流す」
入浴剤によっては流すことを指示しているものもありますが、無機塩類系やスキンケア系などはせっかくの効果が半減です。
「入浴剤入りの残り湯を使った洗濯はよく落ちない」
注意書きに従うのが前提ですが、洗剤の洗浄力には影響がないものがほとんどです。ただし入浴剤は注意書きに残り湯と柔軟剤の併用を避けるように表示されています。着色の可能性があるからです。すすぎは必ず水道水で。その後で柔軟剤を使用するようにしましょう。
入浴剤効果をMAX得るために守りたいこと
最後に入浴剤の効果を最大限得るために守っておきたいことをまとめてみました。ぜひ、ポイントを踏まえて入浴材を活用してください。
1. お湯は熱めよりぬるめ
体が冷えていると「熱いお湯に入りたい」と思いがち。でも熱め(41℃~)の場合、直後の温まり感は強くても、実際には交感神経が優位になるため血管が収縮して、血流が抑えられてしまいます。副交感神経を優位にして血流を促すのは38〜40℃のぬるめです。
2. 長く入り過ぎない
音楽を聴いたり、動画を見たり、本を読んだりする方もいるお風呂時間。ながら入浴はつい長風呂になりがちですが、お湯に浸かる時間に比例して心臓や肺への負担が大きくなります。肩まで浸かりたいのが冬の入浴。長くても20分くらいにとどめましょう。入浴剤を使えば短時間でも効率的に十分温まります。
3. しっかり拭く
湯冷めは血管が広がったまま放熱した結果、体温が奪われてしまうことで起こります。防ぐにはまず、しっかりと体を拭くこと。残った水気が体を冷やすからです。濡れた髪の毛も水滴のかたまりのようなもの。できるだけ早く乾かしましょう。またボディクリームは保湿だけでなく、体からの放熱を防ぐのにも役立ちます。ぜひ、お気に入りのボディクリームも合わせて揃えてください。
種類も香りも目的や気分に合わせて選んでみよう!
今回は成分にフィーチャーして入浴剤についてご紹介しました。入浴剤を入れた湯船に浸かることは、誰もが簡単に得られる体と心のメンテナンスタイム。温泉に行かずとも温泉気分を味わうこともできます。もちろんスパ気分も!同じ目的を持つ種類の入浴剤でも、色や香りにバリエーションがあるのは、どんな色や香りでリラックスするかは、その日の気分や人それぞれだからです。色や香りも含めて、ご自分にあった入浴スタイルをぜひ、探してみてくださいね。