今さら聞けない!「オリーブオイル」の選択基準 美容&健康のための “品質” とは?
今やオリーブオイルは日本人の食生活にも欠かせない存在です。なかでも最高品質とされるのが「エクストラバージンオリーブオイル」ですが、日本の規格では“エクストラ”でも、国際規格では“エクストラ”から外れてしまうものもあります。今回は、今さら聞けない、最新情報を含めたオリーブオイルの選択基準についてご紹介します。
目次
オリーブオイルとは?
エクストラバージンの世界基準は酸度0.8%以下
上質なオリーブオイルの選び方
オリーブオイルはオレイン酸の宝庫
脳はアブラを欲している
味や風味を決める微量成分にも健康に良い成分が
継続が効果を高めるポイント
オリーブオイルとは?
オリーブオイルは、オリーブの実から採れる油です。“果実”であることが、菜種油やひまわり油のような種由来の油(シードオイル)との違いですが、品質については国際基準というものがあります。これを決めているのが「IOC(International Olive Council)」です。オリーブ業界における唯一の国際機関で、世界のオリーブ生産国の多くはこのIOCの規格に則ってオリーブオイルの分類を行なっています。ところが日本は、このIOCに加盟しておらず、「JAS(日本農林規格)」で分類しています。そもそも世界と日本では分類基準が違うというわけです。
エクストラバージンの世界基準は酸度0.8%以下
IOCはオリーブオイルの品質分類に関して、9種類もの分類をしています。化学的な処理は一切せず、オリーブの果実を搾ってろ過しただけの最高品質の「エキストラバージンオリーブオイル」を名乗るには、2つの厳しい基準をクリアしなければなりません。
【エキストラバージンオリーブオイルの世界基準】
1. 「化学分析」の結果、酸度が0.8%以下、酸価1.6以下であること
2. 専門のオリーブオイル鑑定士が実施する官能検査に合格すること
酸度はオイルの鮮度を示す数値、酸価は油の変質の指標の一つ。簡単に説明すると酸価は数値が高いほど劣化しているということになるのですが、日本のJAS規格は酸度ではなく、酸価2.0以下であればすべてエクストラバージンオリーブオイルとしています。それ以外はピュアオイル。2種類の分類しかなく、それも非常に甘いのが実情です。「日本の市場には本物以外のエクストラバージンオリーブオイルが多く出回っている」といわれてしまう理由がここにあります。
上質なオリーブオイルの選び方
本物以外=偽物とするのは乱暴ですが、他のオイルや化学物質を添加して酸度0.8%以下になるよう加工されているものもあるようです。このような商品は論外ですが、上質なエクストラバージンオリーブオイルは飲めるほどさらっとしています。飲まずとも舐めて確かめることで、エキストラバージンオリーブオイルにも良し悪しがあることがわかってきます。美味しくて高品質のものを選ぶ際のポイントをご紹介します。
1. 酸度
品質の良いオリーブオイルのパッケージやラベルには大概「酸度」が書かれています。オリーブオイルの酸度は、どれだけ新鮮で高品質かを表す数値でもあります。酸度が低いほど酸化・劣化しにくく、0.1%の違いでも風味にも違いが出ます。せっかくなら酸度0.8%以下の世界規格で選びたいものです。
また、日本でも「JOAマーク」と品質を保証するマークがついているものがあります。これは日本オリーブ協会が国際規格をクリアしていると認めた証です。
2. 搾油などの製法
オリーブは収穫した瞬間から酸化と発酵が始まるため、いかに早く搾油するかが風味の分かれ道になります。なかには3~4時間といった商品もありますが、通常は収穫後24時間以内に搾油されるのが一般的です。
ただし、時間が全てではありません。オリーブオイルの品質を決めるのは、なんといっても果実。日本の小豆島産の中には選果にこだわり、一粒ずつ手摘みして、少しでも傷みがある実を取り除いて搾油することで、36時間以内の搾油で酸度を保っているブランドもあります。傷のない果実は収穫から1時間後も4日後も酸度は基本変わらないそうです。また、香りを維持するためには、熱を加えないコールドプレス製法であることも1つのポイントです。
3. 産地や品種
オリーブは世界に1000種以上あるといわれています。オリーブオイルの産地としてはスペインやイタリア、ギリシャが有名ですが、国の気候や土壌、オリーブの品種や収穫期によって風味・味・色は異なります。フルーティーなもの、スパイシーなもの、青々しさを感じるものなど味もさまざまで、シェアは少ないですけれど、国内では香川県小豆島産のオリーブオイルも要チェック。国際オリーブコンテストで賞を受賞しているものもあり、品質や風味が高く評価されています。ちなみに日本でオリーブの栽培が始まったのは1908年(明治41年)。国の発案で香川、鹿児島、三重の3県で試験栽培が行われ、そのうち小豆島に植えたオリーブだけが順調に育って搾油に成功したというストーリーがあります。
4. 品評会の結果
ボトルやパッケージのラベルやシールは、私たちにとって選ぶ上で大切な情報源ですが、日本オリーブオイルソムリエ協会主催の「OLIVE JAPAN」という品評会の結果もひとつの参考になります。生産者側ではなく「オリーブオイルソムリエ」という、消費者側の立場で開催されている世界でも希少なコンテストだからです。
5. 価格と遮光性
オリーブの実の選果にこだわるほど、オリーブの木1本から搾油できる量は限られてしまいます。「エクストラバージンオリーブオイルなのに、安かったから」はおすすめできない選択です。また、蛍光灯の光でも酸化してしまうので、遮光性の高い容器が使われているものを選びましょう。ホームユースなら量の多いものではなく、少ないものを購入して早めに使い切るのが理想です。
上記はさまざまな製品のランキングを紹介しているサイト『ザ・ストラテジスト(the Strategist)』2022のベストエクストラバージンオイルで売り上げ1位として選ばれた「カリフォルニア・オリーブ・ランチ」の製品。日本ではオンラインサイトで購入可能です。
オリーブオイルはオレイン酸の宝庫
オリーブオイルの健康・美容効果は今や誰もが知っている常識になりましたが、上質なオリーブオイルがもたらす健康効果は絶大です。油の種類を分析しながら見ていきましょう。
油の主成分は「脂肪酸」。脂肪酸には乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれている「飽和脂肪酸」と、植物油に多く含まれている「不飽和脂肪酸」があります。
不飽和脂肪酸はさらに「多価不飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」「オメガ6系、3系、9系」と分類することができます。
オリーブオイルがオメガ9系といわれるのは、オレイン酸が55〜83%も含まれているからです。オメガ9系は体内でも生成されますが、それだけではどうしても足りません。体内では生成できないオメガ3系、6系同様に食事からの摂取が必要です。しかもオリーブオイルにはオメガ3系や6系のリノール酸やリノレン酸も含まれています。
上の図を見ての通り、オレイン酸は不飽和脂肪酸の中の一価不飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸は酸化しやすいのですが、オレイン酸は安定性があり、オレイン酸には悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールは減少させない働きがあります。その他、血糖値の急上昇を防ぐ、皮膚を柔らかくする、乾燥による小じわを改善する、大腸で潤滑油のような働きをして便秘を防ぐなどの効果も期待できます。抗炎作用もあるので、喉が痛いときにうがいに使う人もいます。
脳はアブラを欲している
油を摂取することは懸念することではなく、摂取することで血管がしなやかになり、老化予防や美肌につながります。その代表の油がオリーブオイルです。
やみくもに油を避ける方がいる昨今ですが、脂肪は三大栄養素の一つ。本来は体内で不足してはならないものです。特に脳は脂質を必要としています。脳は水分を取り除くと60%が脂質でできているからです。とはいえ脂質には種類があり、何をどう摂取するかで益にも毒にもなります。その点でも悪玉コレステロールを減らし、血管をしなやかに保つ働きが期待できるオリーブオイルは選ぶべき油なのです
味や風味を決める微量成分にも健康に良い成分が
ひとくちにオリーブオイルといっても味や風味は、品種や収穫時期、収穫した地域によってさまざまです。これを決めているのが微量成分。この微量成分にも美容と康に良いとされる4つの成分が入っています。
1.オレウロペインとオレオカンタール
オリーブオイルの苦味や辛味はこの2つの抗酸化成分によるものですが、オレウロペインは特に抗酸化力に優れ、血中コレステロールの酸化を防いで動脈硬化など予防にもつながると言われています。
2.トコフェロール
若返りのビタミン・老化抑制ビタミンとして美容成分としても利用される、ビタミンEです。
3.クロロフィル
オリーブオイルの緑色を構成する成分です。抗酸化作用があります。
4. β-シトステロール
コレステロールの吸収を阻害する作用があるとされる植物ステロール類。特定保健用食品の有効成分としても利用されています。
継続が効果を高めるポイント
継続は力なりです。脂質の摂取目標量は食事から得られるエネルギーの20~30%が望ましいとされているので、一日大さじ2杯くらいがちょうど良い量です。
料理に使うのが一般的ですが、オリーブオイルは出汁のようなもの。単にかけるだけでもコクと風味が増します。冬なら、肉まんやおでんにかけるのもおすすめ!冷えたお弁当もオリーブオイルを垂らすと、がぜん美味しくなります。納豆や味噌汁は発酵食品なので、オリーブオイルと一緒に摂取することで、便秘解消効果がより高まります。
もちろん、良質なエクストラバージンオイルはそのまま飲んでも問題ありません。「そのまま飲むのは…」という方は、水やお茶に入れると飲みやすくなります。トマトに含まれるリコピンにはオリーブオイルと同様に血糖値の上昇を抑える働きがあるので、トマトジュースに混ぜるとよりヘルシーに。ただし、体に良いからといって摂り過ぎには気をつけてください。毎日の食生活に美味しく、楽しく取り入れて美しさとすこやかさの格上げしましょう!