「長寿の島」イカリア島で飲まれ続ける「ギリシャコーヒー」の飲み方
ここ最近「ギリシャ」の食べ物が人気を呼んでいます。以前から人気の「地中海ダイエット」にはギリシャ料理が多く含まれますし、ここ数年は、ヨーグルトの水気を切った濃厚でクリーミーな「グリークヨーグルト(ギリシャ風ヨーグルト)」も大人気です。
「Eat like a Greek!(ギリシャ人のような食生活を!)」というスローガンが健康雑誌の見出しを飾る今、新たにこのトレンドに加わりそうな飲み物があります。それは「コーヒー」です。
ギリシャコーヒーと長寿の関係
エーゲ海に浮かぶ「イカリア島」は沖縄などと並び、世界中でも特に長寿の人々が多いことで知られる地域です。イカリア島では、ヨーロッパの地域と比べて90歳以上の人口の比率が10倍も高いのです。また単に寿命が長いだけではなく、健康なまま長生きする人が多いというのもイカリア島の特徴だとか。NYタイムズはイカリア島について「死ぬことを忘れてしまう島」というタイトルの記事を発表したほどです。
そんな“長寿の島”として知られるイカリア島の生活習慣についての研究が今年医学雑誌に発表されました。住民のライフスタイルを調べたところ、「ギリシャコーヒー」を毎日飲む人は、血管の機能が高く、若々しさを保っているということがわかったのです。
健康のためにはコーヒーは控えるべきなどと言われることを考えると、これは意外な結果にも思えます。しかし、アテネ大学医学部のゲラシモス・シアソス博士によれば、ギリシャコーヒーはカフェインが比較的少なく、抗酸化力の高いポリフェノールが多く含まれるのでこれが住民の健康のために役立っている可能性があるということです。
今回の研究でわかったことはあくまで「相関関係」にすぎず、ギリシャコーヒーがイカリア島の長寿の直接的な原因というわけではありません。しかし、「ギリシャコーヒー」をこれまで知らなかった私は、エーゲ海の長寿の島で皆が飲んでいるというコーヒーの味をどうしても味わいたくなってしまいました。
OCで味わうギリシャコーヒー
実は、ビーグレンのあるOCを含む南カリフォルニアは全米で唯一「地中海性気候」に分類されている地域。
遠く離れているOCとギリシャですが、「温暖で過ごしやすい天候」という共通点があったのです。また、移民の国・アメリカには、ギリシャからの移民も多く生活しています。OCにあるギリシャレストラン「クリスタキス・グリーク・クイジーン」を訪れ、ギリシャ移民2世でありオーナーのサラ・ワレスさんにギリシャコーヒーの魅力について語ってもらいました。
「ギリシャコーヒーは “フィルターしていないエスプレッソ”というとイメージしやすいかもしれません。アメリカでは“ギリシャコーヒー”という名前はあまり知られておらず、トルココーヒーと呼ばれることも多いようです。同じコーヒーなのに呼び名が異なるのは、両国の複雑な歴史を反映しているためです。
私にとってギリシャコーヒーは小さい頃から親戚が集まる時に母が振舞っていた思い出の飲み物です。ギリシャの人々はこのコーヒーが本当に好きで、このレストランでも、ギリシャ系の人は食事の締めくくりに必ずと言っていいほどこのコーヒーを飲むのです」
「ギリシャコーヒーは“ブリキ”と呼ばれる銅製の小鍋で作ります。カップは小さいデミタスカップ。ギリシャコーヒーは輸入食料品店などにありますが、手に入らない場合は、ライトローストの豆を細かく挽いた粉を使っても大丈夫。エスプレッソよりも細かく挽いたもので、小さじに山盛り一杯くらいでいいでしょう。ギリシャコーヒーは、砂糖を入れるタイミングに特徴があり、飲む時ではなく作る時に入れるのです。砂糖の量の違いによって、甘くない“スケト”、普通の甘さの“メトリオ”、しっかりとした甘さの“グリコ”の3種類があります」
「水とコーヒーの粉と砂糖をブリキにいれてよくかき混ぜます。 コーヒーに限らず、食べ物は作った人の気持ちが味わう人に伝わると思うので、美味しくなるように心を込めてしっかり混ぜてくださいね。
その後、ブリキを火にかけます。ここが一番の注意が必要なところ。1分もしないうちにコーヒーが沸騰し、周辺から泡立って来ます。この泡が中央に達して完全に煮立つ前に火からおろします。このタイミングがとても大切で、もしも煮立たせすぎたら、もう一度始めからやり直さなければなりません。
ブリキからカップにコーヒーを注ぐ時は、表面に出来た泡を潰さないように丁寧に注いでください。この泡が美味しさの秘密だと言われています。テーブルへ運ぶ時も泡が消えないようにそっと運んでくださいね」
サラさんに教えてもらったやり方で、私もギリシャコーヒー作りに挑戦してみました。作り方は単純ですが、一つ一つの行程にコツがあり、丁寧に気配りしなければなりません。ふと、日本の茶道を思い出しました。出来上がったギリシャコーヒーの味は、濃厚でありながらも、砂糖のおかげで飲みやすい味。粉を濾しとっていないため、少し粉っぽい感触が残っていて素朴な印象を受けました。
「ギリシャには、コーヒーを飲み終わった後にカップに残るコーヒーの粉の模様を見て運勢を読む“コーヒー占い”というものがあり、主に女性たちがこの占いをしています。
母の出身地であるギリシャの村を訪れた時、人々がゆったりとギリシャコーヒーを飲み、友人同士でお互いのカップを覗き込みながら運勢を占いあっている風景が印象的でした。
イカリア島の長寿には、ギリシャコーヒーだけではなく、そんなゆったりとしたライフスタイルも影響しているのかもしれません。
笑顔の素敵なサラさんに見送られてお店を出た後は、まるでギリシャにバケーションに来ているようなのんびりと気分になっていました。
普段コーヒーは機械で作ったものを飲んでいますが、たまには一杯のコーヒーを丁寧に淹れてゆっくりと楽しむ、そんなゆとりを大切にすることがいつまでも若く美しくいるための秘密なのかもしれません。
取材協力
Christakis Greek Cuisine参考
http://christakisgreekcuisine.com/lunch-menu/http://www.huffingtonpost.com/2013/03/21/greek-coffee-longevity-mediterranean-diet_n_2923404.html
http://www.nytimes.com/2012/10/28/magazine/the-island-where-people-forget-to-die.html
<ギリシャ人のような食生活を実践!>
「美肌の強い味方、グリークヨーグルト」では、冒頭でもご紹介した「グリークヨーグルト(ギリシャ風ヨーグルト)」の持つ栄養素や美味しい食べ方をご紹介しています。