ネイティブ・アメリカン伝承の「魔法の水」ウィッチ・ヘーゼル・ウォーター
アメリカの薬局やオーガニックスーパーの棚で「消毒用アルコール」や「薬」の隣に必ずといっていいほどおいてある「ウィッチ・ヘーゼル・ウォーター」。
無色透明で、一見まるでリキュールのように見えるこの液体は一体なんなのでしょう……?そのデザインとまるで魔女(ウィッチ)が使う魔法の薬のような不思議な名前に惹かれ購入しました。
「アストリンジェント(収れん剤)」と書かれていたため、お肌を引き締めるものかと思っていましたがアメリカ人の友人に見せると「子供の頃、お腹の具合が悪い時に、おばあちゃんに飲まされたわ」と懐かしそうな表情。
スキンケア製品かと思ったら、胃腸薬だったのでしょうか?今回はこの不思議な液体についてご紹介したいと思います。
ウィッチ・ヘーゼルの木
ウィッチ・ヘーゼルは北アメリカに生息する低木の名前です。(別名アメリカマンサク、ハマメリス)。
南カリフォルニアでウィッチ・ヘーゼルの木を見かけることはなかなかありませんが、現在もアメリカの東海岸、特に「ニューイングランド」と呼ばれる、イギリスから初めての入植者がはいってきたエリアには広く生えています。
「ウィッチ・ヘーゼルといえば、祖母がいつも薬棚に入れていた透明な液体のボトルのことだった。それが、裏庭に生えていた木の名前でもあると知った時は驚きだった」薬草やハーブ専門の写真家として30年間以上活動しているスティーブン・フォスター氏は、ウィッチ・ヘーゼルの思い出についてこう語っています。
ネイティブ・アメリカンたちは、ウィッチ・ヘーゼルの樹皮を煎じてとったエキスを、出血、腫れ、傷あと、炎症などさまざまなケアに使ってきました。
ウィッチヘーゼルのエキスには「タンニン」という成分が多く含まれており、血管を引き締めて炎症などを抑えてくれるのです。消化器や呼吸器など体内の炎症にも効くと信じられており、ネイティブ・アメリカンは飲用しても使っていました。
その後、アメリカ大陸に移り住んできた入植者たちも、ネイティブ・アメリカンが大切に使っていたこの植物の効果に気づき、ウィッチ・ヘーゼルは家庭療法の一つとしてアメリカの生活の一部に根付いてきたのです。
友人「お腹の具合が悪い時に飲んでいた」という記憶が気になって、OC(オレンジカウンティー)の薬局で何人かに聞いてみたのですが、現在売られているウィッチ・ヘーゼル・ウォーターは外用がほとんどとのこと。実際に使ってみると、肌の汚れがとれ、さっぱりした気分になりました。今の季節これだけでは保湿力は物足りませんが、拭き取り化粧水として取り入れるのはよさそうです。
歴史と伝統のウィッチ・ヘーゼル・ウォーター・メーカー
【セイヤーズ】
レトロなボトルが印象的。セイヤーズは、なんと1847年にヘンリー・セイヤー医師が創業した製薬メーカーです。他社メーカーが蒸留法で取り出したエキスなのに対して、セイヤーズのウィッチ・ヘーゼルはよりオリジナルの成分を残すことのできる独自の抽出法を使っています。開発したセイヤーさんは実年齢より10歳も若く見えたという言い伝えが残っています。
【ハンフリーズ】
凝ったボトルデザインが楽しい「ハンフリーズ」も1854年からと長い歴史を誇るブランド。純粋なウィッチヘーゼルエキスの独特な香りが楽しめます。
【ディッキンソン】
デザインは現代的ですが、ディッキンソンも1800年代からウィッチ・ヘーゼル製品を作り続けています。成分などの比率は「門外不出の秘密」として守りつづけているそうです。
ウィッチ・ヘーゼルは、北米の風土に根付いた民間療法なので、これまで名前を聞くことが少なかったのかもしれません。しかし最近では、海外雑貨の店などでウィッチ・ヘーゼル製品を見かけることも増えてきたようです。
アメリカが「発見」されるより更に昔、ネイティブ・アメリカンによって使われ続けてきた伝統のエキス。素朴な香りは、古き良きアメリカと歴史の重みを感じるものでした。
参考
http://www.ctgenweb.org/county/comiddlesex/Essex/MALCARNE/DONMDICKINSON.HTML
http://www.thayers.com
http://www.dickinsonbrands.com