赤ワインは敵?味方?歯を白くする食べ物はコレ!
スキンケアと同じくらいオーラル(デンタル)ケアが大切にされているアメリカ。「ホワイトニング」という表現は、肌ではなく、歯に対して使用されることがほとんどです。アメリカ人が持つ歯の白さや歯並びなど、口元に対する美意識の高さには驚かされることも多いです。子どもの頃から歯並びを矯正することは健康管理の一環。日本では可愛らしいとされる八重歯は整えられてしまうことが多く、オーラルケアへの意識の相違が伺えます。アメリカの女性向けのファッション誌などでも、ホワイトニングに適した食べ物が特集されるなど、白く美しい歯は日常的なビューティーケア。今回は、そんなデンタル先進国アメリカの女性たちが意識する、食べ物による歯のホワイトニングケアをご紹介します!
赤ワインは結局、敵なの?味方なの?
「赤ワインは歯の黄ばみの原因になる」と 一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?確かに、赤ワインに含まれる「ポリフェノール」が歯のステイン(着色汚れ)の原因になるといわれています。しかし、最近の研究によると、赤ワインに含まれるポリフェノールが虫歯の予防には適しているらしいと報告されたのです。
通常は、口内にあるバクテリア(細菌)が糖分などによって歯垢を形成します。その歯垢が長時間放置されることによって、歯垢内でバクテリアが増殖し、酸を発生させます。その酸が歯を溶かすことで、虫歯や歯周病になるわけです。ところが、ポリフェノールに含まれる成分がバクテリアを除去し、歯垢の形成を遅らせる働きがあることが明らかになってきました。もちろん、「ステインの原因になり得る」という事実は変わりません。しかし、歯全体の健康という観点から考えると、メリットもあるということ。赤ワインと虫歯の関係については、まだまだ研究の余地があるとされています。しかし、以前から「ワインは美しい歯の大敵!」と悪者扱いされてきた赤ワインだけに、大きな変化だといえるでしょう。
では、赤ワインの他にどのような食べ物が歯のステインの原因となるのでしょうか?
そもそも歯の黄ばみはどうやってできるの?
パッと花が咲いたような美しい笑顔には、真っ白な歯がよく似合いますよね。透明感のある白い肌に誰もが魅了されるのと同じように、歯の白さも笑顔をより美しく見せ、誰もが魅力と感じるもの。しかし、白い歯の大敵となる食べ物は思った以上に多く存在します。そもそも歯の黄ばみはどのようにしてできるのでしょうか?
歯の表面には「エナメル質」というコーティングがあり、さらにそのエナメル質を守るために、唾液から分泌されたタンパク質の「ペリクル」という膜で覆われています。ペリクルは歯の表面を保護したり、歯からカルシウムやミネラルが流出するのを防いだりする働きがあります。また、歯の再石灰化を促すため、強度を保つことにも役立っているそうです。しかし、一方で、ペリクルには汚れの原因を吸着する作用もあり、ステインとして歯の黄ばみにつながってしまうのです。しかも、着色汚れは、ペリクルの内側に定着してしまうため、歯の黄ばみが普通の歯磨きでなかなか除去できないのです。またステイン以外にも、加齢などの原因によってエナメル質が剥がれることにより、もともと歯が持っている象牙質が表面に現れた結果、黄ばんで見えるということも考えられます。
ステインの原因となる食べ物
加齢によるエナメル質の劣化は避けられないものの、日常的に歯の着色汚れの原因となってしまう食べ物を把握しておくことはできます。主に食物由来の色素成分や渋味成分、ビタミンなどを多く含む食材、飲料は、着色汚れの原因になるといわれており、具体的には以下のようなものが挙げられます。
色の濃い調味料や食材
醤油、味噌、ソースなど色が濃い調味料は、唾液に色が付きやすく、その唾液の色が歯に着色するといわれています。またパセリやモロヘイヤ、ほうれん草などの緑黄色野菜も色素成分が非常に濃く、デンタルケアを怠ることで、ステインの原因になることがあります。
ポリフェノールを含む食材
前述した赤ワインに代表されるポリフェノールを多く含む食材や飲料は、歯の着色汚れに最もつながりやすいため、クリニックなどでホワイトニングケアをした直後は特に避けた方がいいでしょう。またポリフェノールにはさまざまな種類があり、一見すると色素成分が入っていないような食材もありますので、くわしく知っておきたいところですね。
ポリフェノールの主な種類
・アントシアニン
赤ワイン、ブドウ、ブルー
ベリー、紫イモなど青、赤、紫系の食べ物に多く含まれている
・カカオポリフェノール
チョコレートやココアなど食材の色自体が非常に濃い色素成分
・イソフラボン
豆腐、豆乳、納豆などに多く含まれるイソフラボンも実はポリフェノールの一種。白っぽく色素が薄いように見えますが、ポリフェノールという色素成分が持つ性質上、食品の色はなくても歯の黄ばみにはつながります
・タンニン、カテキン
コーヒー、ウーロン茶、紅茶、緑茶、ほうじ茶などの飲料に含まれるタンニンやカテキンもポリフェノールの一種で、いわゆる「渋み」という成分に当たります。「コーヒーやお茶用の食器に茶渋がついてなかなか落ちない!」という経験をされる方も多いと思いますが、歯への着色汚れも同様に、放置しておくとステインが定着する可能性があります。
ビタミンを多く含む食品
ビタミンB2やビタミンCは黄色の蛍光色を持つ成分です。日本でよく知られる栄養ドリンクが鮮やかな黄色をしているのはそのため。レモンなどの柑橘系のフルーツは、ビタミンが豊富に含まれているだけでなく強い酸性を持つため、摂り過ぎるとエナメル質を壊してしまうこともあります。バルサミコ酢などを使ったドレッシングも酸性であるだけでなく、ポリフェノールを多く含むため着色汚れの原因となりやすいのです。
その他、色の濃い料理
食材自体の色の濃さも重要ですが、出来上がった料理の色の濃さも比例してステインに影響を与えます。カレー、トマトソース、キムチなどがその例。それぞれ色素成分が入っていたり、酸性が強かったりと歯の黄ばみにつながる要素を持ち合わせています。
黄ばみを作る食材を避けるより、白くする食材を
歯の黄ばみの原因になりやすい食品や飲料を見ていくと、「あら」と気づかれた方も多いのではないでしょうか。そうです、そのほとんどが体の健康にとっては欠かせない優秀な食品ばかりなのです。
特に色素成分の代表とも言えるポリフェノールは、非常に強い抗酸化作用を持つ、エイジングケアには欠くことのできない成分。ビタミン群やイソフラボンなども健康面、美容面で必須の成分であり、避けては通れない栄養素です。ステインの原因になるからという理由で、体の健康にとって大切な食材を制限するのではなく、オーラルケアやホワイトニングケアに力を入れたり、歯を白く保つ食材を取り入れることに目線を変えることの方がより建設的。
もちろん、クリニックで特別なホワイトニングケアやホームケアを行った場合は、エナメル質を覆うペリクルを汚れとともに取り除くことが多いので、歯が非常に敏感になっています。表面のコーティングが一枚剥がれ、エナメル質がむき出しになっている状態ですので、その際には上記のような着色汚れの誘因となる食品や飲料は一時的に避けるのが望ましいでしょう。それ以外の日常的な食生活では、いつものデンタルケアにプラスして、歯を白くする食材を積極的に取り入れていきたいですね。
歯を白くする食材
食べ物の摂取で歯を白くするといっても、直接的に白くなるわけではありません。口に入れて咀嚼することによって、着色を防いだり、汚れを落としたり、エナメル質を守る形で、歯を白くキレイに見せることができるのです。
以下の食材を日常的に食べることで、ステインの少ない美しい歯を目指しましょう!
リンゴ酸の食べ物
リンゴ、イチゴ、ナシなどのリンゴ酸を多く含む食材は、着色汚れの除去や色素沈着の予防に非常に効果的です。特にイチゴは昔から「歯のホワイトニングにイチゴ」と真っ先にリストに上がるほど、アメリカでは定番の食材。つぶして5分ほど歯につけておいたり、歯ブラシにつけたりするといいと紹介されるなど、評価の高さが伺えます。ただし、果糖や酸も含まれるため、摂取量や口にした後の歯磨きなども十分に注意したいところですね。
ブロッコリー
通常は柔らかく茹でて食べることが多いですが、少し歯ごたえがある程度、もしくは生で食べることをおすすめします。凹凸のあるブロッコリーを噛むことによって、天然の歯ブラシの役割をし、表面の着色汚れを取り除いてくれます。また鉄分を多く含むことから、酸に弱いエナメル質に、バリアのような膜を生成する働きもあり、エナメル質への色素沈着を防いで有害なバクテリアから歯を守ってくれるのです。
パパインを含む食材
パパインは酵素の一種で、パパイヤ、キウイ、パイナップルなどに含まれます。パパイン酵素には、歯の汚れを吸着するペリクルの生成源であるタンパク質を分解する働きがあります。その結果、歯の黄ばみを防いでくれます。
タマネギ
タマネギに含まれるアリシン(硫黄化合物の一種)には、口腔バクテリアの殺菌作用があることから、歯垢や黄ばみの予防が期待できます。ただし、生での摂取において最も効果を発揮するため、サラダなどで摂り入れるのがいいですね。
チーズ、ヨーグルト、牛乳
カルシウム、リンが豊富な乳製品は、エナメル質の劣化を防ぎ、歯の再石灰化に作用するといわれています。そのため、歯の黄ばみだけでなく、歯そのものを強くし虫歯予防にも効果を発揮します。
ニンジン
丈夫なエナメル質を形成するのに必要なビタミンAを多く含む野菜です。また歯ごたえのある繊維質であることから、咀嚼することによって研磨剤のような役割をし、歯の表面に付着した着色汚れを自然に剥がしてくれます。同様の理由で、セロリやゴボウなども歯垢や汚れの除去に効果的といわれています。
悪いものをマイナスではなく、いいものをプラス
今回ご紹介した歯の黄ばみの原因となる食材のように、「ある面ではマイナスでも、違う面ではそれ以上にメリットがある」というジレンマは、健康と食習慣の関係ではよくある話です。つまり、よほどのジャンクフードや加工食品を除けば、ほとんどの野菜や食材には、大なり小なり摂取に値する栄養が備わっているということ。マイナスに焦点を当て、摂取しないという制限で食生活を縛るよりも、食べ物のメリットを存分に享受できるようなプラスに焦点を当てた食生活の方が、今の時代をより豊かに過ごしていけるように思えます。
歯の黄ばみを気にして、大好きな赤ワインと完全に決別してしまうのではなく、ニンジンサラダやチーズと一緒に適量をたしなむ、そして寝る前の正しいオーラルケアを習慣づけ、定期的なホワイトニングケアも積極的に行う。そんなわずかなライフスタイルの変化で、真っ白な美しい笑顔を手にすることができるのではないでしょうか?
出典
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jafc.7b05466
https://www.wellandgood.com/good-advice/wine-fights-cavity-causing-bacteria/
https://www.cosmopolitan.com/uk/body/health/g13810121/foods-that-make-your-teeth-yellow/
http://www.instyle.com/news/foods-whiten-teeth-naturally
https://www.aarp.org/health/conditions-treatments/info-05-2011/5-foods-that-whiten-teeth-naturally.html
https://www.redbookmag.com/body/advice/g667/teeth-whitening-foods/?slide=3