進化した新世代バービー人形に学ぶ「自分らしい美しさ」
Instagram/@barbie
今年1月、世界中で根強い人気のバービー人形を販売しているマテル社が、「小柄」、「長身」、「グラマー」の3体型の発売を始めました。
これまでのバービーは、スーパーモデルのような非現実的な体型のみ。
そのためバービー体型に恵まれた女性は「バービーみたいね!」と誉められることもよくありました。
でも逆に、それはバービーとは異なる世の中の大半の女の子たちにいい影響を与えないのではないかと、マテル社が人々に批判される理由にもなっていました。
そこでマテル社はついに2016年、現実の女性たちを反映した3種類の体型を加えた計4体型に、7色の肌の色、22色の目の色、24種類のヘアスタイルという豊富なバリエーションを揃えた新世代バービーを生み出したのです。
これらの様々なバービーをアメリカの少女たちに見せてどんな反応をするかという映像が「Boing Boing」というウェブサイトで公開されているのですが、少女達は「どれもそれぞれに違うところが好き」、「全員が同じ見た目じゃないから、前よりつながりを感じられると思うわ」などと、とても好意的な反応を見せてくれています。
バービーに代表される欧米文化の美の基準は、アメリカ人だけでなく私達日本人の意識にも大きな影響を与えています。
ロサンゼルスで生活するようになるまで、私はそれを当たり前のこととして捉えていたのですが、日本のTVや雑誌、ウェブサイトの広告では、日本人以上に西洋人のモデルや女優をたくさん起用しています。
他の国を見てみるとそんなことをしているのは世界で日本だけのように思うのですが、日本にいる時は、なかなかそのことに気づけませんでした。
子供の頃からそうしたモデルや女優を見続けていると、
「金髪碧眼でスレンダーなバービー人形のような人こそが“美しい人”で、だから彼女達はTVや雑誌に出ているのだ」
といった思いが、知らず知らずのうちに頭に浸透してしまいます。
子供の頃の私は一重で頬がぽっちゃりの伝統的な日本人形のような顔だったので、リカちゃん人形ですら、はるか遠い存在に感じていました。
日本人形っぽいという意味で大人たちが「お人形さんみたいね」と誉めてくれる度に、「本当は誉められていないんだ」とまで思っていました。バービーやリカちゃんは可愛くて人気だけれど、日本人形似の私は可愛くないはずだと自分を卑下していたのです。
私が子供の頃にバービーがこれだけバラエティーに富んだ人形を発売してくれていたら、そんな風に感じることはなかったかもしれません。
私は洋楽ライター兼通訳の仕事もしているのですが、7年ほど前にこんな出来事がありました。
プッシー・キャット・ドールズという5人組のガールズ・グループのメンバーに「日本のファンがあなたたちのルックスに憧れているので、メイクのポイントを教えていただけますか?」という某ファッション雑誌の質問をした時のこと。
5人のメンバーの中で唯一黒人のメロディが、即座にこう言ったのです。「あなたたちと私たちの顔って全然違うし、私たちのメイク法を教えるのは変じゃない?」。
他のメンバーは「そんなバカ正直に返事しちゃだめよ」とばかりに慌てて彼女を遮って、「私の好きなアイメイクは」などと次々に答えてくれたのですが、私はメロディの発言にはっとしました。本当にその通りだと思ったのです。
顔の作りは勿論、皮膚の色も日本人とは明らかに違う彼女たちにメイクのアドバイスを求めるのは本来おかしな行為だったのですが「有名人やモデルのメイクを真似れば可愛くなれる」という思考が子供の頃から染みついてしまっていた私は、そのおかしさに気づきませんでした。
それは日本人形がバービーにメイクのアドバイスを聞くのと同じくらい、おかしなことだったのです。
もともと顔がまったく違うのだから、突然お化粧でバービーになろうとしたところで上手く化けられるはずがありません。
顔が違うことを棚に上げて、メイクをしたのにバービー顔になれない自分が嫌になって、自分を責めるのがオチですよね。
一重でまつげが少ない自分の顔に長年不満を抱いていた私は、この出来事を機に、「みんなが誉める美しさ」ではなく「自分らしい美しさ」を追求しようと思うようになりました。
憧れの誰々がやっているからではなく、私が一番美しく見える方法は何だろう、私に一番合うメイクやヘアは何だろう、それを真っ先に自問するようになってからは、地毛の黒髪でパーマもかけないナチュラルヘアを維持しています。
もしあなたが子供の頃バービーが好きで、バービーと違う自分の体型や顔を嫌っていた時期があったとしたら、
新世代バービーの中であなたのお気に入りの一体を見つけてみてください。買わなくてもいいんです、見るだけで。
「あなたらしい美しさ」のお手本になるようなバービーが、きっといるはず。
そして、あなたの「自分らしい美しさ」は、たとえ金髪のバービー人形があなたに憧れて真似をしようとしたとしても、天地がひっくり返っても手に入れられないものだということを忘れないでください。
あなたの美しさは、世界中のどこを探しても、あなただけしか持っていないものなのです。
参考
http://www.barbie.com/en-us
http://boingboing.net/2016/01/29/young-girls-react-to-seeing-th.html
http://time.com/4197499/barbies-new-body-photos-of-curvy-tall-and-petite/