美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

徹底したスキンケアを行っているのに、肌の調子が良くならない…ということはありませんか?それはもしかしたら、肌そのものだけでなく、体と心のバランスが崩れていることが原因かもしれません。例えば、ストレスを抱えているときや、体に疲れが溜まっているときなどには、肌トラブルも増えがちです。美肌を養うためには、普段のスキンケアに加えて、健康な体と心を維持することも大切なのです。そこで今回は、そんな心身のバランスを整える「アーユルヴェーダ」についてご紹介します。アーユルヴェーダといえば、単に美容法、マッサージ、リラクゼーションなどを連想する方も多いかもしれませんが、もともとは健康や長寿のために古くから研究されてきた医学の一種です。それでは、詳しく見ていきましょう。

アーユルヴェーダとは

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

アーユルヴェーダは、紀元前に古代インドで誕生した伝統医学です。語源はサンスクリット語の「アーユス(寿命、生命、生気)」と「ヴェーダ(知識、科学)」を合わせた言葉で、若さと健康を保ち、心身ともに活気に満ちた生活を送るための知恵と哲学を説いています。

医学とはいえ、病気になってから治療する対症療法を中心とした西洋医学とは異なります。生活習慣の見直しや体質改善を図ることで、そもそも病気になりにくい健康的な体づくりを理想とする“予防医学”の側面を重視しており、WHO(世界保健機構)で正式に予防医学として承認されているほどです。

具体的には、食事法、薬膳療法、マッサージ、瞑想をはじめとするさまざまな方法で、自己治癒能力を高め、体・心・精神の調和のとれた暮らしを目指します。

アーユルヴェーダで重視される、ドーシャのバランス

アーユルヴェーダの理論では、私たちの体を司るのは「ドーシャ」と呼ばれる自然のエネルギーです。ドーシャは「ヴァータ(風)」「ピッタ(火)」「カパ(水)」という3つの要素から成り、そのバランスによって体質、体調、性格などが左右されると考えられています。

ドーシャ(自然のエネルギー)

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

ヴァータ(風)
【基本性質】「風」のエネルギーを表し、<動・軽・速・乾・冷>の性質を持つ
【体質】体内の循環活動や呼吸、排泄に影響を与える
【性格】機敏、活発、新しいことや変化を好む、創造的、飽きっぽい、気まぐれ

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

ピッタ(火)
【基本性質】「火」のエネルギーを表し、<軽・熱・鋭>の性質を持つ
【体質】熱を生み出し消化活動を促すピッタは、消化や代謝と関わりが深い
【性格】情熱的、チャレンジ精神旺盛、勇敢、リーダー気質、完璧主義、怒りっぽい

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

カパ(水)
【基本性質】「地」のエネルギーを表し、<重・遅・湿・冷・粘>の性質を持つ
【体質】免疫力や体内の結合活動を司り、呼吸器や関節、リンパ組織に影響を与える
【性格】寛容、おっとり、忍耐強い、献身的、おおざっぱ、鈍感、執着心が強い

アーユルヴェーダでは、この3つのドーシャのバランスを均一に保つことを理想とします。
では、あなたのドーシャバランスを見てみましょう。以下の項目で自分に最も当てはまるものにチェックをして、ヴァータ、ピッタ、カパそれぞれの合計を出してください。

  ヴァータ(風) ピッタ(火) カパ(水)
体型 ○やせ気味 ○中肉中背 ○大柄、ずんぐり、太り気味
体重 ○軽い(食事を忘れることもあり痩せやすい) ○平均的(太ったり、痩せたりが容易) ○重い(太りやすく、痩せにくい)
○小さめでよく動く ○鋭い眼差し ○大きくて穏やか
皮膚 ○ドライでカサカサ ○温かく血色がいい(刺激により赤く発疹しやすい) ○厚く湿ってなめらか
○乾燥して傷みやすい、またはくせ毛 ○細くて真っすぐ ○若白髪・薄毛の傾向、オイリー
関節 ○骨ばって目立つ ○柔軟 ○大きくぼってりしている
睡眠 ○浅くて早起き ○寝入りが早く、8時間以内の睡眠でも疲れが取れる ○睡眠は深く長い、朝起きるのが苦手
体温 ○手足が冷たい(暖かい環境が好き) ○季節によらず体が温かい(涼しい場所が好き) ○どのような気温にも適応しやすい(湿気の多い寒い日は苦手)
性格 ○活発で熱中しやすい、変化を好む ○明確な意思を持ち情熱的、他人を好んで説得する ○のん気で寛容的、他人を支持するのを好む
ストレス反応 ○不安性、心配症 ○イライラ、攻撃的 ○衝突を避けて引きこもりがち

 

当てはまる数が一番多かったドーシャが、二番目の倍以上であれば主にその1つのドーシャに体質や性格が支配されているといえます。一番目と二番目の数が近い場合は、2つのドーシャを併せ持ち、3つとも同じような数字であれば、ドーシャのバランスが最も良いとされています。しかし、ほとんどの人は1つ、または2つの偏ったドーシャの影響を受けている場合が多く、3つのバランスが取れている人は稀だといわれています。

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

ドーシャのバランスを整える食事法

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

では、偏ったドーシャのバランスを整えるにはどうしたらいいのでしょうか?自分で実践できることの一つに、食事の見直しが挙げられます。ここでは、3つのドーシャそれぞれに合う食品や調理法、食事法をご紹介します。先ほどのドーシャバランス診断の結果から、自分の体質に合う食事をする、もしくはその時の体調や精神状態を鑑みて、どのドーシャが乱れているかを判断し、食事の内容を検討してみてください。

食事の基本

アーユルヴェーダでは「人の体は食べたものでつくられる」と考えられており、食事はとても重要視されています。化学調味料や添加物、農薬などを避け、出来るだけ有機食材を選びましょう。また、「身土不二(しんどふじ:体と土地には密接な関係があり、その土地でその季節に採られた食材を頂くことが健康に良いという考え)」を実践することも大切です。そして、自分のドーシャに合わせた食事をするのも、アーユルヴェーダならではの食事法。前述のように、アーユルヴェーダの基本的な目的は、ドーシャのバランスを整えることなので、自分が強く影響を受けているドーシャの性質を鎮静するような食品や食事法を取り入れましょう。

ヴァータ(風)体質の方 ―<動・軽・速・乾・冷>を抑える食事―

まるで真冬に吹き荒れるからっ風のように、冷たく乾燥した性質をもつこのドーシャは、不規則な食習慣や、慌ただしく食べること、冷たいものや乾きものを多く摂ることで増大します。温かく、適度に水分や油分を含んだ食事を、決まった時間に落ち着いて頂くことがポイントです。

ヴァータ(風)のOK食材とNG食材

OK NG
温野菜(サツマイモやカボチャなど) 夏野菜
ナッツ類 サラダ カフェイン入り飲料
香辛料全般(シナモン、ショウガなど) 炭酸飲料
炒め物(オリーブオイル、ごま油、ココナッツ油を使用) 砂糖
煮物 穀物類(パン、パスタ、グラノーラ、ライ麦)

 

ヴァータ(風)が過剰な場合に起こる体や心の不調
肌や髪の乾燥、手足の冷え、眠りが浅い、便秘、腎臓や子宮の不調、高血圧、不安になる、集中力が続かない、緊張しやすくなるなど

ピッタ(火)体質の方 ―<軽・熱・鋭>を抑える食事―

体に熱を生み出しやすい肉料理や辛いものはほどほどにし、甘味、苦味、渋味をもつ野菜や果物を積極的に食べるがおすすめ。また、水分をたくさん取り、食べる量を控えめにするのも良い方法です。

ピッタ(火)のOK食材とNG食材

OK NG
夏野菜 辛味野菜
フレッシュジュース 根菜
苦味のある野菜(ゴーヤ、ピーマン、セロリなど) 酸っぱい果物
熟れたトロピカルフルーツ 赤い肉(牛肉、ラムなど)
サラダ 揚げ物
白い肉(鶏肉や七面鳥の白身) カフェイン入り飲料

 

ピッタ(火)が過剰な場合に起こる体や心の不調

多汗、顔が火照ったり赤らむ、目の充血、下痢、胃や消化器系の不調、イライラする、批判的になる、人の欠点が目につくなど

カパ(地)体質の方 ―<重・遅・湿・冷・粘>を抑える食事―

このドーシャの性質を例えるなら、「寒さの残る春先に降った、雨上がりのぬかるんだ大地」。そのため、胃にずっしりと重い食品や、高カロリーのもの、甘いもの、冷たいものは良くありません。また、ダラダラと食べ続けることや間食もNG。軽く消化に良い食事を心がけましょう。

カパ(地)のOK食材とNG食材

OK NG
温野菜 揚げ物
葉野菜 乳製品
山菜 甘いデザート(ケーキ、アイスクリームなど)
香辛料全般(特にショウガ) 甘酸っぱい果物
渋い果物(柿、ザクロ、プルーンなど) 赤い肉(牛肉、ラムなど)
白い肉(鶏肉や七面鳥の白身)
海藻類

 

カパ(地)が過剰な場合に起こる体や心の不調

低血圧、体がむくむ、だるい、体重の増加、鼻炎、執着心が強くなる、引きこもる、うつ状態になるなど

アーユルヴェーダのオイルマッサージ

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オイルマッサージで期待できる効果

食事法のほかに、ドーシャのバランスを整える方法として挙げられるのが、オイルマッサージ。アーユルヴェーダの基本的な考え方として、「過剰なものを“引き算”して体のバランスを整える」というものがあります。前述の食事に関しても、増え過ぎたドーシャを抑える食品や食事法を取ることを推奨しているのは、同様の理由から。オイルマッサージでも、リンパの流れや血液の循環を良くすることで、「アーマ」と呼ばれる体内に溜まった毒素や老廃物の排出を促し、増え過ぎたドーシャを沈静化したり、浄化したりします。このことにより、デトックス、リラックス、美肌、疲労回復や体力増進といった効果が期待できるといわれています。

オイルの選び方

アーユルヴェーダのオイルマッサージでは、良質なオイル選びが欠かせません。なぜなら、オイルは経皮から吸収され、体内に浸透していくからです。不純物の混ざったオイルではなく、天然由来のものを使用しましょう。ここでは自宅でのセルフマッサージに使える基本的なオイルについて、ドーシャの体質別にご紹介します。

<ヴァータ(風)、カパ(地)体質の方:無焙煎のゴマ油>

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【効果】
無焙煎のゴマ油には温める作用が強く、冷えの性質を持つヴァータやカパが過剰な体質の方にはぴったり。特に、乾燥の性質も併せ持つヴァータ体質は、3つのドーシャの中でもオイルケアが最も必要なタイプなので、たっぷり使いましょう。それに対して、湿りや重みの性質も持つカパ体質の方はすでに肌がしっとりして油分が多いので、マッサージの際に使うオイルは少量で構いません。

【ポイント】
無焙煎のゴマ油とは、一般的に使われている茶色い焙煎ゴマ油ではなく、生のゴマを絞って作られる透明のゴマ油のこと。市販されているものをキュアリング(加熱処理)することで、成分を安定させ、皮膚へ浸透しやすくします。

―キュアリングの手順―
無焙煎のゴマ油を鍋に入れて弱火で熱し、90℃になったら火から下ろす(余熱で100℃程度まで温度が上がる)。そのまま20〜30分ほど冷まし、粗熱が取れたら完成。

キュアリングの注意点
*使用する際は、湯煎で40〜50℃ほどに温めます。もしくは、手のひらにとり十分に温めてから使ってください。
*密閉できる瓶に入れて冷暗所に保管し、1ヶ月ほどで使い切るようにしましょう。
*ゴマアレルギーの方は、使用しないでください。

 

<ピッタ(火)体質の方:ココナッツオイルやオリーブオイル>

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【効果】
熱の性質を持つピッタ体質の方には、冷やす作用のあるココナッツオイルやオリーブオイルが適しています。

【ポイント】
ココナッツオイルは25℃以下の気温で固まるので、その際は必要な量を湯煎するか、手のひらで温めてしっかり溶かしてから使ってください。キュアリングは必要ありません。また、ココナッツオイルの凝固しやすい秋〜冬の寒い季節に、冷え性の方が頻繁に使うのは避けましょう。

セルフマッサージをする体の部位と手順

アーユルヴェーダでは、基本的にオイルマッサージを毎日することを推奨しています。しかし、現実的にセルフマッサージを行うとなると、できる範囲も頻度も限られますよね。そこで、アーユルヴェーダにおいて、体の中でも特に重要とされる頭・耳・足のセルフマッサージをご紹介します。無理のない頻度で実践してみてください。

<頭>
インドでは「頭には神が宿る」といわれ、重要な部分とされています。それだけに、額にオイルを垂らす「シロラーダ」、頭皮のパック「シロレーパー」などさまざまなケアがありますが、ここではヘッドマッサージ「シロアビヤンガ」を簡単に実践できる方法をご紹介します。

―手順―
①オイルを脱脂綿にたっぷりつけて、頭のてっぺんで絞ります。
②頭全体にオイルが行き渡るよう、指で円を描くように頭皮をマッサージします。
③脱脂綿に残ったオイルを手に絞り、親指、人差し指、中指でこめかみをくるくるとマッサージします。
④人差し指、中指で、額の中心からこめかみに向かってくるくるとマッサージします。
⑤後頭部と首の境のへこみを親指で押し、その外側も押します。
⑥両手で髪を掴みぎゅっと持ち上げて、力を抜きます。これを数回繰り返します。

<耳>
耳は、足の裏のように反射区(内蔵や各器官に繋がる神経が集中する箇所)やツボが存在する場所。刺激することで、血流やリンパの流れを改善するといわれています。

―手順―
500円玉大のオイルを手に取り、両耳全体になじませます。左耳は右手で、右耳は左手で行うのがポイント。親指と人差し指で耳の内側と外側をつまみ、上下左右に動かします。耳たぶもつまんでマッサージします。

<足>
「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎ、反射区やツボの集まる足の裏など、足は体にとって大切なパーツです。太ももから足の裏まで、まんべんなく擦るようにマッサージします。

―手順―
①立った状態で、足首から太ももまでを、後ろ、前、内側、外側の順にマッサージします。特にふくらはぎは、足首から膝の裏側までを数回なで上げるように刺激します。関節は、円を描くように。
②床に座った状態で、足首から下をマッサージします。足の甲は外から内に向かって、かかとは内側を押すように、足の裏は土ふまずから指先へ流れるように刺激します。

オイルマッサージをするときのポイント
*空腹時に行う。食後であれば、少なくとも2時間以上経ってから!
*オイルがこぼれることがあるので、大きめのタオルを敷いて行う。
*シャワーや入浴の前に行い、15分以上置いてから洗い流す。
*発熱、怪我、皮膚炎、体調不良、生理、妊娠中には行わない。

 

心身のバランスこそ美容と健康の要

美容と健康を育むインドの知恵「アーユルヴェーダ」を生活に取り入れる方法

現代社会において、食生活や生活習慣の乱れ、ストレスなどが美容と健康に悪影響を及ぼすことを理解してはいても、普段のライフスタイルをガラリと変えるのは難しいというもの。しかし、今回ご紹介したようなアーユルヴェーダ的な食事の見直しやマッサージなどを少しずつ日常に取り入れることで、効率的かつ効果的に心身のバランスを整えることができます。数千年に渡って受け継がれているインドの知恵を、ぜひ日々の生活で実践してみてはいかがでしょうか。

<参考>

「日本アーユルヴェーダ学会」
http://ayurvedasociety.com/docments/uebaba01.html

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