LAでも絶賛拡散中!世界に広がるフェアトレードって何?
日本でもよく知られているアメリカの人気ヘルシー系スーパーの「ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)」「エラワン(EREWHON)」。さまざまな商品が所狭しと陳列され、見ているだけでも楽しいもの。商品についたオーガニックやグルテンフリーのマークも頻繁に見かけますが、最近になって急増してきたラベルがあります。それが、生産者との公正な取引を意味する「フェアトレード」の認証ラベル。今回の記事では、ここ数年で耳にはする機会が増えたけれど、詳しく知らないフェアトレードについて、世界で展開する仕組みとアメリカの現状、そしてLA(ロサンゼルス)でのムーブメントなど、幅広くご紹介していきます!
目次
・フェアトレードとは?
・世界のフェアトレードの仕組み
・フェアトレードの問題点と世界の動き
・アメリカ独自のフェアトレード
・LA(ロサンゼルス)に広がるムーブメント
・消費者にできる最低限の“フェアネス”
フェアトレードとは?
そもそもフェアトレードとは、生産者側の持続可能な生活改善と経済的自立を目指し、発展途上国の作物や原料、製品を「正当な価格で継続的に取引すること」で、このような「公正な貿易のしくみ」そのものを指しています。最近特に注目度が著しく上昇していることもあり、ここ数年のムーブメントのように捉えられがちですが、その歴史は意外と古いもの。
アメリカやヨーロッパなどで始まったフェアトレード運動は、少しずつ規模を拡大しながら約60年に渡って続けられています。当時の先進国の飛躍的な経済成長により、大量生産・大量消費のベースが築かれ、現在私たちは多くの安価な商品を簡単に手に入れることができますよね。しかし、原材料はほとんど変化していないのに、商品価格だけがどんどん低下している背景には、技術的な進歩以外にも、生産プロセスのどこかで押し進められているコスト削減があります。それが例えば、アフリカや中南米などの発展途上国のカカオやコーヒー、バナナ農園で、不適正な賃金率で働く人々からの搾取の上に成り立っている場合もあるのです。貧困が理由で満足のいく教育を受けられない子どもたちの過酷な労働力の上に、製品が生産されている可能性も十分に考えられるわけです。
実際に、2013年にバングラデシュで起きた縫製工場倒壊は、劣悪な労働環境や低賃金労働の下で働かなければならない現状を、世界が知るきっかけとなった象徴的な事故でした。1100人以上の死者、2500人以上の負傷者を出す大惨事となったこの工場で縫製されていたのは、ほとんどが欧米や日本のアパレルメーカーの製品。先進国で大量に消費される廉価な衣料品や製品の裏に潜む「不公正な労働」を少しでも減らすための仕組みやシステムが、「フェアトレード」というわけです。
さらに、フェアトレードの延長にある「エシカル消費」も世界で広がりつつムーブメントの一つ。「エシカル」とは「倫理的な、道徳的な」という意味を持ち、生産者や労働者の人権、社会全体、そして地球環境に対して道徳的であろうという解釈から、それらに配慮した製品を購入する動きのことをいいます。その対象の一つとして、フェアトレードの製品やエコフレンドリーな商品があるわけです。先述したバングラデシュの事故なども踏まえて、「エシカルファッション」というカテゴリー限定の言葉も誕生しています。具体的には、フェアトレードのオーガニックコットンやリサイクル原料の使用、毛皮や皮革をしないヴィーガンファッションも、その一部です。特にエマ・ワトソン(上記画像)やジェシカ・アルバなどの海外セレブも、フェアトレードやエシカルファッションを推奨しており、自らも率先してエシカル消費を実践しています。さまざまな広がりを見せるフェアトレードですが、具体的にどのようなシステムで行われているのでしょうか?
世界のフェアトレードの仕組み
現在フェアトレードの形態として、大まかに分類して下記の3種類があります。順を追って説明していきましょう。
【フェアトレードの形態3種】
①国際フェアトレードラベル機構(通称:FLO)
②世界フェアトレード機構(通称:WFTO)
③その他のフェアトレード
①国際フェアトレードラベル機構(通称:FLO)
フェアトレードそのものは、各国それぞれにある団体や組織によって発展してきましたが、より多くの生産者や農家がフェアトレードに参加し、世界でも広く認知されるシステムにするために、1997年、ドイツに本部を置く「国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade Labeling Organizations:通称FLO)」が設立されました。FLOはそれまでバラバラに存在していた各国のフェアトレード組織を統合し、国際フェアトレード基準を満たした製品には共通した「フェアトレード認証」ラベルが与えられることにしたのです。国際フェアトレード認証の対象となる品目は、世界の市場で広範囲かつ大規模に取引される作物や製品、及びその加工品として定められ、さらにそれぞれの品目区分に対して、地域ごとの生産者に保証すべき「フェアトレード最低取引価格」などの規定も組み込まれました。明確かつ具体的な基準が設定され、世界で共通したラベルがあることにより、フェアトレード商品が一目で識別できる認証制度は、フェアトレード運動にとって大きな変革になったといえます。
以下が現在定められているフェアトレード認証産品です。
【フェアトレード認証産品】
コーヒー、茶、カカオ、バナナ、砂糖(サトウキビ糖)、スパイス・ハーブ・ハーブティー、フルーツ、野菜(豆類、じゃがいも等を含む)、ドライフルーツ・野菜、ハチミツ、ナッツ、オイルシード・油脂果実、穀物(キヌア・米・雑穀)、ワイン用ブドウ、コットン(綿)、スポーツボール、金(ゴールド・シルバー)、花・植物、木材
上記の原材料や産品から作られ、世界中で売買されているフェアトレード商品の種類は、コーヒー関連商品、チョコレートやココア、オレンジなどのジュースやジャム、オリーブオイル、米、大豆、ワイン、ビール、綿で作られた洋服やバック、ぬいぐるみ、シルバーネックレス、タオル、石けん、口紅やハンドクリーム、バラの花、サッカーボール、木工品や家具など、多岐に渡ります。FLOが定める統一基準により、国を超えて国際市場で大規模に貿易・取引されている製品の公平な取引(=フェアトレード)が可能となっているわけです。しかし実際はフェアトレードに関して、国際的な法律があるわけではないため、FLOに属さず個別に存在しているケースも多々あります。
②世界フェアトレード機構(通称:WFTO)
アメリカに本部を置く国際組織である「世界フェアトレード機構(通称:WFTO)」は、FLOのように原材料や商品一つ一つに対し、フェアトレード認証を行うのではなく、事業活動全体がフェアトレード基準を満たしている会社や団体のみが加盟しています。フェアトレードの商品も生産しているが、そうでない商品も製造している企業や団体は、WFTOに加盟することはできません。つまり、WFTOの加盟団体が作る商品は全てがフェアトレード商品というわけです。
日本では、表参道に店舗を構える「ピープル・ツリー」がこのWFTOに加盟しており、100%フェアトレードの店として話題を集めています。
アフリカやアジア、中南米などの生産者から買い付けを行い、フェアトレードで取引されたコットンを使ったアパレルやチョコレートなどが人気。特にチョコレートは、オーガニックとのダブル認証で、オリジナルフレーバーも発売するなど、健康意識の高い現代の女性たちのニーズも的確に反映させています。店頭だけでなく、カタログ販売やオンラインショップも充実しているため、今後の認知度の上昇にも期待ができそうですね。
③その他のフェアトレード
FLOでもWFTOでもなく、フェアトレード認証ラベルもついていないけれど、商品に「フェアトレードをしています」という標記がある場合は、3つ目の種類である「その他のフェアトレード」に属し、個別の企業や団体レベルから実践できます。それぞれがオリジナルのフェアトレード基準を設定し、生産者や農家と直接取引したり、地元コミュニティを支援したりすることで、フェアトレード運動をサポートしているのです。そういった企業独自のフェアトレード基準は、FLOやWFTOよりも厳しい基準を設定している企業や団体もあるほど。日本ではFLOの日本支部として、フェアトレードジャパンが存在しますが、3つ目の形態も多く存在しているのが特徴です。FLOやWFTOが組織される以前から、生産者や農家と直接取引しているケースも多いからです。直接取引することで、生産者や農家に還元される割合も自ずと増えることも、メリットの一つでしょう。
フェアトレードの問題点と世界の動き
上記にも関連して、FLOのフェアトレード認証制度について時折議題に上がるのが、認証されるための費用を生産者が一部払うシステムになっている点です。フェアトレード運動が拡大し、売上が増加するなかで、認証制度の信用度を担保するために、監査システムを導入する必要に迫られました。それを行うのが、FLOから独立したFLO-CERT(フェアトレード認証株式会社)という企業であり、現地へ直接渡航、監査し、認証の可否を決定します。そのため、認証費用を生産者と輸入・販売業者が負担しなければならないのです。その点を疑問に感じる団体や企業も多く、少しでも多くの金額が生産者に割り当てられることを目的として、直接取引・販売する動きも見られます。
日本でも発売され、話題になったアイルランド出身のコナー・ウッドマンの著書『フェアトレードのおかしな真実』にも、その点などが指摘されています。認証会社が仲介されることにより、結果的にコーヒー農家などが実際に手にする価格は、フェアトレード基準の最低価格を下回る事態も生じていると、本の中で綴っているのです。こういったフェアトレードの“穴”を回避するために、農家と直接取引する企業の一つとして、イギリスの「エシカル・アディクションズ」が著書の中で紹介されていました。
彼らは、フェアトレード基準の最低価格を超える値段でコーヒーを買い取ることを明言しています。しかし商品には、「フェアトレードをしています」とは記載できても、フェアトレードの認証ラベルを貼ることはできません。ラベルを貼るためには、認証団体の一つであるイギリスのフェアトレード財団(Fairetrade Foundation)に、コーヒー価格の2.4%を生産者とともに払わなければならないからです。仲介なく直接取引することにより、生産者や農家に還元される割合を少しでも多く確保することができるわけです。ただし一方では、フェアトレード認証のラベルによって、世界中の消費者に「フェアトレード」を広く認識・広報されている事実もあり、ラベルのPR効果が圧倒的である点も著者は述べています。
実際に、今や世界的ブランドとなった日本発の「無印良品」もFLO認証のフェアトレードラベル付きの商品を取り扱うブランドの一つ。フェアトレードの紅茶やコーヒー、そして寝具などを店頭で取り扱うだけではなく、有楽町店などの大型店舗ではフェアトレードの企画展を開催したり、母の日用にフェアトレードの花を使ったブーケを販売したりするなど、さまざまな形で認知を広げる活動をしています。「タリーズ」などのコーヒーチェーンでもフェアトレードのコーヒーが飲めるそうで、大衆へのプロモーションが可能となるのも、フェアトレードラベルによる日常的なアプローチが効果的であるからなのです。
このような世界の動きの中で、先述した3種類のフェアトレード形態にも実質的には属さず、独自の路線を進んでいるのが、実はアメリカのフェアトレードなのです。
アメリカ独自のフェアトレード
フェアトレードUSA
現在アメリカのフェアトレードは、2011年末にFLOを脱退し、独自の認証団体となった「フェアトレードUSA(Fair Trade USA)」により、多くの商品が展開されています。そのため、世界のほとんどの先進国で採用されている認証ラベルとは、別の認証ラベルを設けているのです。下記のインスタグラム画像がフェアトレードUSAの認証ラベルです。
一般的に、FLOと同じ国際フェアトレード基準を規定にしている国や認証団体は、「Fairetrade(フェアトレード)」と一語の単語にしていますが、それ以外は「Fair Trade(フェア・トレード)」と二語で表記することが暗黙のルールになっているよう。日本語の場合は、どの場合でも「フェアトレード」と記載の違いを明確に表すことは少ないので分かりにくいですが、アメリカの商品のラベルははっきりと違いが分かります。
アメリカに混在するフェアトレードのラベル
例えば、上記のようにホールフーズに陳列されているチョコレートの中には、FLO認証する「Fairtrade」商品もあれば、下の画像のようにフェアトレードUSAから認証された「Fair Trade」のチョコレートもあります。
フェアトレードUSAがFLOから脱退した後、FLOのアメリカでの活動もスムーズに展開するために、「フェアトレードアメリカ(Fairtrade America)」も設立されたため、それぞれの認証機関によってラベルが違ってくるのです。またベルギーチョコレートなど、ヨーロッパから輸入されたような商品は、輸出元の国でFLO認証ラベルが貼られた後、アメリカに入荷するというケースも考えられるでしょう。
市場に出回る商品数や成り立ち、そしてSNSのフォロワー数も10倍以上の差が開いていることから鑑みても、フェアトレードUSAがアメリカのフェアトレード業界を牽引しているといえそうです。
フェアトレードUSAの設立の目的
フェアトレードUSAがFLOを脱退した経緯としては、FLOで定められているような対象品目に限定せずフェアトレードを広げるべきだという考え方が背景にあったようです。さらに、FLOで認証の対象となるのは小規模で経営される農家など、事業サイズの規定があることも、アメリカが脱退を決定した理由の一つといわれています。フェアトレードUSAは、フェアトレード基準を満たすのであれば、品目や事業形態に限定されずに、より多くの生産者が、より適正な価格で取引されることを最大目的として、活動を展開していくとを目指しています。
漁業にも広がるフェアトレードUSA
フェアトレードは従来、農家の作物にフォーカスした認証制度としてスタートしていますが、フェアトレードUSAでは漁業事業者の生活改善や所得向上も対象とした認証取得を推奨してきているのです。すでに9つの水産物サプライチェーンで、フェアトレード認証が取得されています。
【フェアトレードUSA認証済み水産業品目】
・インドネシアのキハダ
・メキシコの青エビ
・モルディブのカツオ
・アラスカのサケ
・ニュージーランドのホタテ貝
以上の品目がアメリカ小売大手の「セーフウェイ」「ホールフーズマーケット」「ハイヴィー」など20社で販売されているようです。
ファッション業界に旋風を巻き起こすフェアトレードUSA
2019年に入り、アメリカの人気アパレルブランド「J CREW(ジェイクル―)」とその姉妹ブランドの「Madewell(メイドウェル)」から、ブランドにとって初めてのフェアトレードデニムラインが登場し、話題を集めています。
LA(ロサンゼルス)に広がるムーブメント
アメリカ全土で飛躍的に広がりつつあるフェアトレード運動ですが、LA(ロサンゼルス)も例外ではありません。「フェアトレードLA(Fair Trade LA)」という独自の団体も存在しており、フェアトレードに関するイベントやキャンペーンを推進するなど、さまざまな活動を意欲的に実施しています。
またフェアトレードの商品のみを販売したり、フェアトレード商品を推奨している店舗も多く、LAやLA近郊で人気を集めるフェアトレードショップを以下でご紹介していきましょう。
Ten Thousand Villeges(テン・サウザンド・ヴィレッジズ)
世界のフェアトレードの先駆けともいえるのがアメリカ全土に店舗を持つ「Ten Thousand Villeges(テン・サウザンド・ヴィレッジズ)」です。パサデナ店も60年以上の歴史を持ち、技術者や職人と公正な価格での直接取引を継続的に行ってきました。店で取り扱う全ての商品がフェアトレード商品であり、先述したフェアトレード団体に認証される「世界フェアトレード機構(World Fair Trade Organization)通称:WFTO」に属しています。
生産者の技術と作品への想いが溢れるような商品が多く、大量生産の商品よりは少々高くとも、適正価格を払いたいと消費者側が思えるような仕組みこそが、フェアトレードの真髄なのだと感じさせてくれますね。
The Little Market(ザ・リトル・マーケット)
「The Little Market(ザ・リトル・マーケット)」で取り扱う商品もまたフェアトレードの商品です。オーナーが女性二人であることから、特に女性の生産者や職人との直接取引を大切にしており、貧困に苦しむ女性や以前ホームレスだった女性、家庭内暴力から立ち直った女性などの自立支援を目的にしています。昨年設立から5周年を迎え、これまでに26カ国、60以上の職人団体と取引してきたそう。
実はこの店、個人的にも大好きで何度も訪れたことがあります。フェアトレードや女性のサポートなど、大義のある企業理念を知らずとも、迷わず購入したくなるような素敵な商品が多く、店の雰囲気も非常にモダンです。
何十年も歴史のあるパイオニア的なお店から、現代を象徴する新しいお店まで、LAやLA近郊のフェアトレードも、これからますます発展していきそうな予感ですね。
消費者にできる最低限の“フェアネス”
実際のところ、フェアトレードの商品は少々割高です。個人や家庭、それぞれの経済状況もあるので、毎回フェアトレードの商品を購入することは難しい場合がほとんどかもしれません。そうとはいえ、このような運動やシステムを知らないままでいることとは違うような気がしています。フェアトレードの知識や情報を少しでも学ぶことで、普通の商品との価格差異がそれほどないケースでは、選択肢の一つとして頭に浮かび、購入に繋がることがあるかもしれません。今「買える・買えない」ではなく、世界の一員として、フェアトレードの存在をきちんと知ること、それがまず消費者にできる最低限の“フェアネス(公正)”ではないでしょうか。
出典
https://www.fairtradecertified.org/
https://www.fairtrade.net/
https://www.asc-aqua.org/news/latest-news/fair-trade-usa-and-the-aquaculture-stewardship-council-partner-to-pilot-agriculture-production-standard-in-certified-farms/
https://blog.carousell.com/the-green-carpet-15-celebrities-who-rock-sustainable-fashion/