LA発！最新ホリスティック美容整形外科の「高気圧酸素療法」とは？

「高気圧酸素療法（ハイパーバリック・オキシジェン・セラピー）」をご存知ですか？　美容業界だけでなくスポーツ業界でも人気で、2002年にデヴィッド・ベッカムがFIFAワールドカップ出場前に骨折の治療に使って回復したことが話題になり、一時期は「ベッカムカプセル」とも呼ばれていました。なんと、この療法を美容整形に取り入れた画期的な美容クリニックが、LA（ロサンゼルス）郊外にあるのです。

CBDの記事で、エステティシャンのケイナさんを取材するために訪れた「アニュー・ビューテ（Anew Beaute）」というクリニック。私はこの療法のエアーカプセルを初めて目にしました。2017年にオープンした同エステサロンの一室に、潜水艦のようなエアーカプセルが鎮座していたのです！興味津々で写真を撮りまくっていたところ、クリニックのトーマス・リン医師が「やってみたら？」と誘ってくださり、その場でレポートすることを決めました！今回は、最新美容整形技術といえる「高気圧酸素療法」についてご紹介しましょう。

「高気圧酸素療法」はなぜ体に良いの？

「高気圧酸素療法」は、全身が入るカプセルの内部を通常の大気圧よりも高気圧にし、その中で高濃度酸素を吸入するセラピーです。人が呼吸するとき、大半の酸素は血液の赤血球中のヘモグロビン（タンパク質の一種）と結合することによって、体中に運ばれます。でもそれとは別に、血漿（血球以外の血液の液体成分）やリンパ液などの体液に溶け込むことができる分子の小さな酸素も存在し、高気圧酸素療法で気圧を高めることによって、この酸素が血液と体液に溶け込む量が増加します。すると、ヘモグロビンと結合した酸素が届かない毛細血管にも酸素が通りやすくなり、体のすみずみにまで酸素が行きわたるのです。この仕組みによって、高気圧酸素療法は傷の回復を促進し、健康と美容を向上させます。

ここで酸素不足による体の状態と逆に高気圧酸素療法で得られる主な効果について確認してみましょう。

美容整形に「高気圧酸素療法」を取り入れた理由とは？

すこやかさこそ、真の美しさ

「酸素カプセルと組み合わせた美容施術をやっている医師は、アメリカでは私だけだと思う」とリン医師。実際にカプセルを体験する前に、なぜこの組み合わせを思いついたのか、お話を伺いました。

台湾生まれのリン医師は、10歳の時に両親とアメリカに移住し、UCリバーサイド大学、UCLAメディカルスクールを経て、医師になりました。「私は患者の体の内側の健康を最適化することと組み合わせた美容整形クリニックをつくりたかったのです。私は小児科で内科の医師でしたが、長年の間に、“統合医療”という伝統的な西洋医療とは別のメソッドに移行して行きました。統合医療は、ホルモン、免疫、神経は、体全体のすこやかな状態に深く関与しています。私は体全体を最高に良い状態＝健康な状態にしたい。それが、体内から湧き上がる“すこやかさ”の輝き、つまりは“美しさ”につながるからです」。

たった一人のためにスタートした高気圧酸素療法

リン医師がこうしたホリスティックな治療を行いたいと考えるようになったきっかけは、息子さんが患っている自閉症でした。そして、息子さんのために医療用の酸素カプセルを購入し、自宅で使い始めたのです。「息子の自閉症に関して、私は従来の治療法だけでなく、より良い治療をしたいと思い続けてきました。自閉症は脳と深く関わりがありますが、脳に影響を及ぼしているのは腸と免疫力です。全てはつながっているのです。ですから、腸を改善すれば、脳も改善され、それが肌の改善にもつながり、全てが改善される。私たちは、体の全ての器官が相互に作用することで成り立っています。だからこそ私は、全ての器官を最善の状態にしようと試みているのです」。

実際に、高気圧酸素療法で自閉症の症状が改善されたという研究結果が発表されています。リン医師は、息子さんがまだ小さいときには酸素カプセルに一緒に入っていたそうです。「彼が大きくなってからは使わなくなりましたが、確かに効果はありました。そこから進展して、今は自分の患者を酸素カプセルで治療しているのです」。

細胞の修復力をアップさせる高気圧酸素

「アニュー・ビューテ（Anew Beaute）」では、酸素カプセル治療代は、脂肪移植などの治療代に最初から含まれています。「私たちの血液の40％は、ヘモグロビンでできています。このヘモグロビンが、酸素を体に運んでいます。でもその他の60％には、酸素が含まれません。しかし、高気圧酸素療法では、体に高気圧がかかることによって、血漿にも空気が溶け込みます。そして、血漿はより深い組織まで浸透し、血管の周囲の細胞にまで届くのです。それによって、細胞の修復力が向上します。これは、例えば、私がお腹周りの脂肪をお尻に移植した後の傷の回復に役立ちます。お尻の肉をちゃんとくっつけたいですからね。もちろん、施術を行うことで死んでしまう組織もありますが、血管が多ければ多いほど、より多くの細胞が生き残ることが可能になります。顔に脂肪を移植するときも同じです」。

体全体のすこやかさが表出した状態が「若々しさ」

「若さって、一体何だと思いますか？」と、リン医師。「若さというのは、体全体のすこやかさが外に表れている状態のことを指します。だから私は、体を内側から最善の状態にするものを利用して、若さを取り戻したいのです。そのために“高気圧酸素治療”や“赤外線サウナ”をエステのメニューと合わせて提供しているのです。例えば、私がコラーゲン注入をしたとき、免疫力を最大限に利用して体全体のシステムをより良くする高気圧酸素治療を行えば、コラーゲン注入だけで得られる若さや美しさ、すこやかさ以上の成果を手にすることが可能になるのです」。リン医師は「ボトックス」「フィラー」「レーザー」「豊胸」「豊尻」といった体の外側の表面的な美容整形施術に加え、酸素カプセルで内側からも治療をすることで、美容整形施術単体で行う以上の「結果」を提供しているのです。

“ホリスティック”とは“全体”を意味する

「“ホリスティック”というのは“全体”を意味します。そのため、私たちは体全体を治療しているのです。東洋医学に近いので、日本の方たちには受け入れやすいのではないでしょうか？西洋医学では、目の専門の眼科医、肺のスペシャリスト、糖尿病治療に特化した医者など、一つの器官や症状でしか患者を診療していません。専門分野にフォーカスし過ぎて、体全体を捉えて見る目を持たないのです。でも東洋医学では、体の“気”つまり体のエネルギーの流れが滞ることによって、病が発生すると考えます。ですから、その流れを促進するために、指圧や針などその他の治療を行いますよね。私は“体全体を癒す”ことをしたいのです。西洋医学は、東洋医学の経験を持ってはいません。また東洋医学は西洋医学が提供できる科学的な手術は行うことができません。ですから、その両方を陰陽として、内側からも外側からも治療したい。ボトックス、フィラー、レーザー、PRP、全ては外側からの治療ですが、これらを内側からのトリートメントと合わせることで“全体”をより良くすることができるからです」。

まるで良いことづくめの高気圧酸素療法に副作用がないかどうか念のため調べたところ、副作用はありませんでした。ただ、注意する点が二つ。まず、高濃度酸素は助燃性があるので、火事の危険性があります。カプセルに入る際に、マッチ、ライターなどを持ち込まないようにすることが必要です。また、酸素中毒になる危険性もあるので、医師がいる場所での使用が望ましいとのことです。

酸素カプセルの中は予想以上に快適。その効果は？

リン医師の話を伺い、酸素カプセルへの期待が一気に高まった私。いよいよ、体験です。クリニックのカプセルは、大気圧の1.5倍の気圧で100%の酸素を吸入します。ちなみに、私たちが普段呼吸する空気の中に含まれている酸素は21％。約５倍の酸素を吸い込むことになります。所要時間は、たっぷり１時間。

丸い扉を開けると成人が二人並んで入れる程の幅があります。中に入って寝転んでみたところ、天井には潜水艦のような窓が3つあるため、閉塞感はほとんど感じません。

入ってから数分間は、気圧がどんどん上がっていくので飛行機に乗った時のように耳が詰まり、何度も唾を飲み込みました。その後は不快感がなくなり、自然な状態に。10分ほど経過すると頭がスッキリとした感じになり、なんだか楽しい気分になってきました。

１時間後、カプセルから出たときには気分が高揚していました。体も軽くなった感じ。「頭がクリアになって、すごく気分が良いです！」とリン医師に告げると、満足気な笑顔を返してくれました。酸素バーで酸素吸引をした直後も、頭が冴えわたって活力が出てきたのを覚えていますが、酸素バーの何倍もの効果を実感しました。そして約１時間かけて帰宅した後も、気分が良いままでした。この取材はロサンゼルスでロックダウンが始まる直前に行ったのですが、そのときに抱えていた不安感も払拭されたように思います。怪我はしていなかったので傷の治りの早さは分かりかねましたが、ストレスの軽減にも効果的ではないかと感じました。

東洋医学と西洋医学の良いとこどり

私は今回の取材で、酸素カプセルの驚きの効果を実体験することができました。けれど、それ以上に心に残ったのは、リン医師が息子さんを助けたいという思いで使い始めた酸素カプセルが、現在のホリスティック治療をミックスしたエステ開業に至ったという物語でした。美容整形というと、どうしても表面的な美だけを追い求めているようなイメージを持ってしまいますが、リン医師は我が子を思いやるのと同じレベルで患者さんの体全体を思いやり、その上でアンチエイジングの施術を提供しています。

今年の４月、彼はオレンジ郡の高級エリアであるニューポート・ビーチに2つ目のクリニックを開設。今後、リン医師のような考えを持つ美容整形外科医やエステサロンなどが増えていくといいなと感じました。酸素カプセルは日本でも導入しているクリニックもあり、他にカイロプラクティックやスパなどさまざまな場所で体験できるので、機会があったら一度試してみることをおすすめします。酸素はやはり健康と美容にとって大切であること、そして体と心の健康はつながっていることを全身で実感できると思いますよ。