疲れた「肝臓」が肌のくすみや抜け毛の原因?いざ、夏こそ「肝活」!
胃や腸は調子が悪いとすぐに分かります。ところが肝臓はというと…。「沈黙の臓器」といわれるくらい不調が分かりにくいのが「肝臓」です。日常生活では、アルコールを飲み過ぎたときに、ちょっと意識するくらいではないでしょうか?でも、もとを正せば、肝臓は代謝と解毒を司る臓器。元気な肝臓は、健康面はもちろん、美容面でも良いこと尽くしです。知っているようで知らない、私たちの大切な臓器、肝臓について改めて確認してみましょう。
目次
肝臓は人体で一番大きな臓器
別名「化学工場」。役割は大きく分けると3つ
肝臓が元気だと、美容的にも良いこと尽くし
健康診断の結果で分かること
夏の肝臓は疲れがち
夏こそ「肝活」!
疲れやすい肝臓をいたわるのは今!
肝臓は人体で一番大きな臓器
痛くなったり詰まったり、胃や腸は調子の良し悪しが分かりやすい臓器です。ところが肝臓は真逆。疲れたくらいでは分からず、病気が進行して、初めて症状が出ます。日常生活では見過ごしがちですが、心臓や肺のようにほとんどが肋骨で守られていることからも、とても大切な臓器であることがわかります。
「肝心なことは〜」とか「そこがキモ」など、よく耳にする言葉からも、その重要性を察することができます。ちなみに重さは、1000g〜1500g(体重の約1/50)ほど。胸の下、お腹の右上に横たわる人体最大の臓器です。
別名「化学工場」。役割は大きく分けると3つ
肝臓には多くの機能が備わっていて、全ての臓器の下支えをしています。その機能のほとんどは、物質の化学的な変化によって行われています。よく知られているのが、アルコールを無害な物質に変えて、体外へ排出すること。でも、それはほんの一部の働きなのです。
実際は、私たちが生きるために必要な500種類以上の化学処理を行っています。そしてその役割を見ていくと、全身の栄養を司るのが肝臓なら、毒素が全身に回らないようにするのも、やはり肝臓だということが分かるのです。
【役割1】 栄養素を体内で使いやすい形にする「代謝」
多くの食べ物はそのままでは体に吸収されません。鶏の手羽先を食べてコラーゲンを摂取したからと、都合よくそのまま肌がコラーゲンたっぷりにとはなりませんよね。口から入った栄養は胃や腸で消化・吸収された後、全て、一旦肝臓に集められます。肝臓はそれを体が吸収しやすい物質につくり変え、血液に送ります。これが肝臓での「代謝」といわれるもの。すぐ必要でない分は、肝臓で貯蔵されます。
【役割2】 アルコールや添加物など有害なものを処理する 「解毒」
全身から集められた毒素の無毒化も肝臓が行います。毒素とはアルコール、薬の成分、有害物質、体内の老廃物など。
有害物質には、肌の老化など美容面でもトラブルの原因になる活性酸素も含まれます。肝臓が機能しないと、毒素が体内を巡ってしまったり、停滞したままになってしまったりするので、さまざまなトラブルを引き起こすのです。
【役割3】 脂質の消化・吸収を助ける「胆汁の分泌」
肝臓は胆汁をつくり、胆管を通じて腸の中に分泌します。胆汁は、脂肪の消化吸収を助ける消化液です。
そのほか、タンバクやビタミンの合成を行ったり、血液を貯蔵したり。生命維持を左右するほどの役割を担う肝臓。頑丈な臓器とはいわれますが、酷使は禁物です。
肝臓が元気だと、美容面でも良いこと尽くし
肝臓の主な働きが分かったところで、この項目では、元気な肝臓がもたらす美容効果を見ていきましょう。
美肌効果
肝臓の「代謝」と「解毒」は肌のターンオーバーにも影響を与えます。肝臓が疲労して機能が低下すれば、当然ターンオーバーは乱れがち。古い角質が溜まることでくすみの原因となります。角質層が厚い肌は光を反射しづらく、肌の透明感も失われます。
肝臓は活性酸素の処理も行っています。機能が低下すれば活性酸素とともに老廃物も増え、新陳代謝もダウン。また、肝臓はヘパリンという物質を生成しています。ヘパリンには保湿、血行促進、抗炎症作用があり、美容成分として「ヘパリン類似物質」を配合している美容液やクリームは少なくありません。
美髪効果
肝臓は髪とも密接な関係があります。肝臓には摂取したタンパク質を髪に必要な血漿タンパク質に変換するという大きな働きがあるからです。また、肝臓では毛母細胞を活発にする成長因子(IGF-1)も分泌されています。肝臓の不調が薄毛や抜け毛の原因になることは、大いに考えられるのです。
自律神経が整う
自律神経をコントロールしている「セロトニン」と「メラトニン」。「幸せホルモン」「安眠ホルモン」などとも呼ばれる脳内ホルモンですが、元となる物質「トリプトファン」は肝臓でつくられています。肝機能のアップ=幸せホルモンの増産なのです。
基礎代謝をUP
私たちは何もしなくてもカロリーを消費(基礎代謝)しています。成人女性の基礎代謝は一日1000〜1300kcal。これは一日の消費カロリーの約70%を占めます。内訳を見てみると、最も数値が高いのが肝臓であることが分かります。筋肉を増やすと基礎代謝が上がって痩せやすくなるといわれますが、肝臓を疲れさせないこともダイエットの助けになります。
【一日の基礎代謝の内訳】
免疫力UP
肝臓には体中の血液が集まるため、ウイルスに感染した細胞や老化した細胞も集まります。適切に処理できないと病気の原因に。実際、肝臓の機能が低下していると、風邪にかかりやすいそうです。元気な肝臓は免疫力アップの鍵というわけです。
健康診断の結果で分かること
このように確認していくと、自分の肝臓のことが気になってきますが、肝機能の状態は、一般的な血液検査から判断できます。AST(GOT)、ALT(GPT)はアミノ酸の代謝に関わる酵素。細胞が傷つくと血液中に漏れ出すため、血液検査の数値に表れます。「γ-GTP」は解毒に関わる酵素で、肝臓にダメージが蓄積すると血液中に流れ出る量が増えます。ぜひ、最新の健康診断結果を見直してみてくださいね。
夏の肝臓は疲れがち
健康診断の結果はどうでしたか?まったく問題ないという方も多いと思いますが、まだまだ続くこの暑さ。この時期は肝臓にとっても負のスパイラルが待ち受けています。胃腸の疲れや、暑さや湿気が原因による食欲低下で、あっさりしたものや冷たいものを食べがちだからです。
しかし素麺で済ませてしまうような食事は、肝臓がエネルギーを生み出すために必要な栄養(ビタミン、ミネラル、たんぱく質)を取ることができません。逆に「夏バテ予防」と高たんぱく・高脂肪食に走るのも危険です。過剰な栄養の処理は肝臓に負担を与えてしまいます。もちろん、ビールの飲み過ぎは解毒のオーバーワークに。
そこで最後にご紹介したいのが、夏バテからも体を守る「肝活」です。
夏こそ「肝活」!
「肝活」。造語の二文字ですが、肝臓をケアして美容と健康をはかる活動のこと。寝ても取れない疲れ、だるくて仕事がはかどらない…。肝臓からのSOSかもしれません。特に体が疲れがちな夏こそ、肝臓に意識を向けてケアする「肝活」が必要です!
【活動1】 4つの「ない」を心がける
1. 毒素を貯めない
解毒が追い付かなくなると、体内は有害物質だらけのゴミ屋敷状態になってしまいます。解毒できないほどアルコールを摂取しないこと。添加物の多い加工食品はなるべく控えること。薬やサプリメントには、有用成分が「合成物」「抽出物」で配合されています。長期の服用や過剰摂取は肝臓疲労の原因に。
2. 食べ過ぎない
カロリーオーバーでエネルギーとして使われなかった中性脂肪は、肝臓や皮下脂肪に蓄えられ、積み重なると脂肪肝になってしまいます。お菓子の食べ過ぎも肝臓疲労の原因です。砂糖は、肝臓の負担になります。
3. 夜更かししない
夜は臓器のお休み時間。深夜まで起きて活動していると、脳を働かせるために血糖値をある程度高くしておかなければなりません。肝臓は血糖値の調整にも関与しています。夜更かしは肝臓に超過勤務を強いているようなものです。遅い時間の食事も肝臓を深夜に働かせることになります。
4. ストレスをためない
ストレスで交感神経と副交感神経のバランスがくずれると、肝臓の働きが低下してしまいます。それがまたストレスを招いて、さまざまな不調に繋がってしまうのです。
【活動2】 肝臓にやさしい食生活を
食べたものが毒素も含めて大集合する肝臓。暴飲暴食はもちろん、しょっちゅう口に何かを運んでいたり、夜遅くまで食べたり飲んだりしていては、休む間がありません。
1. バランスの良い食事
肝臓がエネルギーを生み出すには、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが必要です。たんぱく質の最低目安は一日あたり体重の1%~1.2%。50kgの人は50g〜60gです。マグロなどの魚、赤身肉、卵、大豆製品、乳製品から取りましょう。牡蠣やイカ、タコなどに含まれる「タウリン」は肝臓機能のアップが期待できる栄養素です。
ビタミンやミネラルもできるだけ食品から。栄養価の高いブロッコリーやブロッコリースプラウトは、体内の解毒酵素や抗酸化酵素の生成を促す話題のフィトケミカル「スルフォラファン」が豊富です。不足をサプリメントで補う場合は、加工していない食材を丸ごと食べる「ホールフード」発想の製品を選ぶのが理想です。
お酒は「休肝日」をつくりながら、適量をゆっくり頂きましょう。適量の目安はワイン2杯(250ml)、ビール中瓶(500ml)、日本酒1合(180ml)。
若い世代を中心に広がっている“あえて飲まない”あるいは“好きな時に少しだけ楽しむ”という「ソーバーキュリアス」は、肝臓にとってはとてもよい傾向です。
また、飲酒前の「ウコン」の摂取は理にかなっています。ウコンに含まれる成分「クルクミン」が肝臓の働きを高め、胆汁を分泌しやすくし、アルコールの代謝分解を促すからです。ただし普段から摂取する必要はありません。お酒を飲む直前だけで十分です。
2. 飲みたいお茶3選
肝臓にとってやさしい飲料があります。それは「茶」、それも特に肝臓をいたわるために古くから親しまれてきた種類のお茶です。普段、飲んでいる飲料から下記のお茶に切り替えることで肝臓ケアができるので、手軽に始められます。
ウーロン茶 | 脂肪の吸収を抑える効果が認められ、脂肪肝にもいいとされています。 |
ミルクシスルティー | 別名「マリアアザミティー」。ヨーロッパでは古くから肝臓のケアのために親しまれてきたハーブティーです。 |
ペパーミントティー | 肝臓や胆のうの働きを高める効果が期待できます。 |
【活動3】 さすって肝臓に血液を集める
肝臓は肋骨で守られているので全体を触ることはできませんが、一部はみぞおち近くにあって、皮膚の上からでも存在を確認することができます。
そこで取り入れたいのが、その部分のマッサージ。マッサージといっても、簡単!ぜひ、試してみてください。ただしやり過ぎには注意が必要です。ペースは二日に1度ほど。カイロで温めるのも効率的です。
【さする&なでるだけの簡単肝臓マッサージ】
①手の平で20秒ほど左右にさする
②右側の肋骨の内側に指を入れるようにしてその箇所をなでる
疲れやすい肝臓をいたわるのは今!
いかがでしたか?スタミナ切れだけでなく、肌や髪のコンディションにも少なからず影響する肝臓の働き。夏のダメージをミニマムに抑えるためにも、肝臓に意識を向けたいものです。今回は触れていませんでしたが、実は冷房による冷えも肝臓には打撃を与えます。肝臓にはたくさんの血液が集中していて、冷えによる血液の滞りは結果的に全身に影響を及ぼすからです。夏は、暴飲暴食、休暇による生活習慣の乱れ、冷房による冷えと肝臓にとっては過酷な季節。だからこそ、今すぐに、肝臓をいたわってあげましょう。レッツ「肝活」!