知らなかった!「ミトコンドリア」の老化防止&ダイエット効果とその増やし方
アンチエイジング効果もあると注目されている「ミトコンドリア」。名前は知っていても、その働きについてはよく分からないという方が多いのではないでしょうか。
ミトコンドリアは私たちの体をつくる全ての細胞の中にあり、細胞の代謝を司る働きがあります。ミトコンドリアを増やせば、「細胞の老化を遅らせることができる」老化防止効果と「脂肪やブドウ糖の代謝が促進され太りにくくなる」といったダイエット効果まで期待できます。
ミトコンドリアとは?
ミトコンドリアといえば、中学校の生物の教科書にあった、細胞の中にあるミドリ虫のような形状をしたものを思い浮かべますが、実は、私たちが生きるためにとても重要な役割を担っています。
ミトコンドリアは、私たちの体を形成する全ての細胞内にある小器官の一つ。一つの細胞には数個から数千個ものミトコンドリアが存在すると考えられています。細胞内で酸素と栄養素を原料にして、細胞が活動するために必要なエネルギー源となる「ATP(アデノシン三リン酸)」を生成しています。細胞はこのエネルギーを使って新しい細胞をつくったり、傷ついた細胞を修復したりしています。
ミトコンドリアがつくる大切な成分「ATP」と「代謝水」
ミトコンドリアがつくる重要な成分にはATPと代謝水の主に2つがあります。
「ATP」は、別名「アデノシン三リン酸」と呼ばれる物質で、人間の体の全細胞にとって重要なエネルギー源のことです。体重1kgに1兆個の細胞があるといわれているので例えば体重70kgの人の場合、体全体の細胞数は70兆個。ATPは日々これだけ多くの細胞を動かして 傷ついた細胞を修復したり、新しい細胞を生成したりしているのです。
「代謝水」とは、ミトコンドリアがATPを生産する過程で作られる水分のこと。成人一人、1日当たり約500mlつくられます。実は、よく耳にする「基礎代謝」という言葉は、代謝水をつくり出すミトコンドリアの能力のこと。基礎代謝が向上すると、より多くの代謝水が体内でつくり出され、肌を適度にうるおしてくれるのです。
ミトコンドリアの機能が衰えるとどうなるの?
体の老化の原因の一つは、ミトコンドリアの機能が衰えるということ。機能が衰えると、ATPや代謝水が十分につくり出されなくなり、エネルギー不足のため、新しい細胞を生成したり、傷ついた細胞を修復したりすることができなくなります。もちろん、肌をうるおす状態へ導くこともできません。ミトコンドリアと老化には深い関係があるのがお分かりいただけるでしょう。
老化に関わるミトコンドリアと活性酸素
細胞を元気に保つには、体を活発に動かすためのエネルギーを生み出すミトコンドリアの働きが極めて重要なのですが、ミトコンドリアは加齢とともに減少し、機能が衰えてしまいます。その主な原因は、活性酸素によってミトコンドリアDNAがダメージを受けるからだと考えられています。
活性酸素が細胞の老化の原因になることはよく知られています。加齢だけでなく、ストレス、睡眠不足、過食、過剰な薬物、喫煙、運動不足などさまざまな要因によって活性酸素は発生します。一方で、私たちの体には活性酸素を消去するシステムが備わっているのですが、活性酸素が増え過ぎると、消去し切れなくなり、細胞にダメージを与えてしまいます。
実は、ミトコンドリアはエネルギーを生産する際に活性酸素を発生します。皮肉なことに、それがミトコンドリア自身のDNAにもダメージを与えてしまうようです。
最近の研究では、ミトコンドリアの働きが低下すると、エネルギーを生産する際に出る活性酸素の量がより多くなるといわれています。逆に、ミトコンドリアの働きが良いと発生する活性酸素が少なくなり、より多くエネルギーを生産することができます。その結果、代謝が上がり老化を遅らせることができるのです。
代謝の低下は年齢ではなく、ミトコンドリアの減少!?
20代の頃と比べて「疲れやすくなった」「気力がなくなった」「太りやすくなった」と感じてはいませんか?このような体調の変化は、代謝の低下が原因と考えられます。一般的に、加齢により代謝が低下するといわれますが、最近では「加齢」が原因というよりも、「ミトコンドリアの減少」が関係していると考えられています。
私たちの体に必要な「生体エネルギー」を生み出しているミトコンドリアは、放っておくと40代前半から減少し、機能も衰えます。ミトコンドリアの数が少なくなったり衰えたりすると、エネルギーがうまく作れず不足してしまいます。また、エネルギーに変換されずに余ってしまった酸素は活性酸素になってしまい、余分な栄養素(脂肪やブドウ糖)は中性脂肪として蓄えられてしまうのです。
このような結果、代謝が遅くなり、太りやすくなったり、体が疲れやすくなったり、めまいや貧血、動悸・息切れ、無気力・集中力の低下、うつ、 肌荒れなど、さまざまな体の不調が表れます。
ミトコンドリアの不足は、時に重病をも引き起こす!
ミトコンドリアの数の減少や機能不全によって引き起こさせるのは、上記に挙げた体の不調だけではありません。ミトコンドリアは体の細胞の一つ一つに存在しているため、体のどこに異常が生じるかによって、症状もさまざまです。また、ミトコンドリアの機能不全は深刻な病気と関わっています。
こうした体のさまざまな部位に症状をきたすミトコンドリアの機能不全ですが、日常生活で、特に多くのエネルギーを必要とする脳や筋肉などには、深刻な症状が出てきます。次に、その症状を大きく3つに分けて紹介します。
ミトコンドリアの機能不全による深刻な3大症状
3大症状その1
急激な意識障害や運動麻痺など脳卒中に似たようなMELAS(Mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like episodes)と呼ばれる症状。
・・・けいれんや頭痛、嘔吐などが起きます。
3大症状その2
体がふらついたり、自分の意思とは関係なく筋肉が動いたりするMERRF(Myoclonic epilepsy with ragged-red fibers)と呼ばれる症状。
・・・てんかんによく似た発作が出ます。
3大症状その3
目の周りの筋肉が麻痺して眼球を動かせなくなってしまうCPEO(Chronic Progressive External Ophthalmoplegia)と呼ばれる症状。
・・・別名、慢性進行性外眼筋麻痺症候群とも言われ、徐々に視野が狭くなり、失明の可能性もある「網膜色素変性症」を引き起こしてしまうこともあります。
このようにミトコンドリアの機能不全は、場合によっては重病を引き起こす原因にもなってしまうのです。
ミトコンドリアを増やす方法
老化や時に重病発症にも関係しているミトコンドリア。加齢を止めることはできませんが、嬉しいことに、ミトコンドリアは年齢に関係なく増やすことができるといわれています。ミトコンドリアを増やすことができれば、体内でエネルギーをつくる能力を上げ、活性酸素も抑えることができます。結果、細胞の老化を防ぐことができるのです。
方法1:定期的に運動をする
カナダ・マックマスター大学のマーク・ターノポルスキー博士が実施したマウスを使った実験によると、週に3回の45分間の運動を5ヶ月間続けたマウスは、運動をしていないマウスよりもミトコンドリアの数が多く、ダメージも少なかったそうです。また、運動をしていないマウスは、白髪や抜け毛が目立ち、体が衰え、死んでしまう一方で、運動を続けたマウスは、筋肉や脳の質量をほぼ維持し、毛も濃くしっかり生えていたそうです。
この他にも、電車の待ち時間に片足立ちをしてみたり、階段を1段飛ばしで上ったり、スクワットをしたり、日常的に少しでも多く体を動かすようにすることが大切です。
方法2:普段から背筋を伸ばして姿勢を正しく保つ
「有酸素運動は少しハードルが高い」という方には、椅子に座っている時に背筋をピンと張るだけでも効果的です。1分以上意識して、背筋を伸ばした正しい姿勢を保つだけでも、ミトコンドリアを増やすことができます。これはミトコンドリアが特に背筋の筋肉や太ももの筋肉など姿勢を保つために必要な筋肉に多く存在しているためです。
方法3:食事方法や摂取する食べ物に気をつける
食べ過ぎは、ミトコンドリアの機能を弱めてしまいます。逆に腹八分目にすると、ミトコンドリアの量が増えて機能がアップするそうです。
他に下記のような方法でもミトコンドリアの機能が高まり、アンチエイジングにつながります。
●抗酸化物質を積極的に摂ること
●良質なたんぱく質を摂ること
●血糖値を安定に保つこと
●ミネラルやビタミンを十分に摂ること
●悪玉コレステロールを増やす飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控えること
●良質なオイルを適度に摂ること
●食材はなるべく新鮮で無農薬・オーガニックの食材を選ぶこと
最近ミトコンドリアを元気にする成分として注目されている「PPQ(ピロロキノリンキノン)」を多く含む納豆、豆腐、緑茶や「レスベラトロール」を多く含む赤ワイン、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、マルベリー、クランベリーを摂取するのもよさそうです。
方法4:「タウリン」を多く含む魚介類を摂取する
腹八分目による空腹感がミトコンドリアを元気にするといわれていますが、痩せ過ぎてスタミナ不足に陥ってしまってはいけません。ミトコンドリアを増やし、その働きを助ける栄養素をしっかり摂ることが大切です。
例えばイカやタコ、貝類などに多く含まれる「タウリン」には、ミトコンドリアを増やす効果があります。ただ、多くの魚介類は茹でるとタウリンを失ってしまうため、お刺身やサラダなど生の状態で食べるのがいいでしょう。新鮮な生の魚介類が手に入りにくい場合は、スルメなどがおすすめです。タウリンはミトコンドリアを増やすだけでなく、コレステロールや血圧、血糖を下げ、糖尿病を予防する効果も期待できます。
ミトコンドリアを増やして健康的に過ごそう
年齢を重ねると、病気にかかりやすくなったり、体型が崩れ始めたり、さまざまな症状が現れます。でも、人間の全細胞にあるミトコンドリアの数を増やし、その活動を活性化させることで、若々しく健康的な日常を送れることはもうお分かりいただけたことでしょう。
「運動」と「腹八分目」は昔から一般的に健康の秘訣といわれています。食事のメニューに気を配り、日常生活の中で軽い運動をするだけでも、ミトコンドリアを増やすことができるのです。細胞の老化を可能な限り遅らせて、健康的で美しい体を維持したいものですね。
参考
Mitochondria and the mysteries of anti-aging science
http://www.truthinaging.com/beauty-360/mitochondria-and-the-mysteries-of-anti-aging-science
Can Exercise Keep You Young?
http://well.blogs.nytimes.com/2011/03/02/can-exercise-keep-you-young/
Dr. Perricone’s 7 Secrets to Beauty, Health, and Longevity: The Miracle of Cellular Rejuvenation