ヴィーガン、グルテンフリーも続々登場!日本に上陸する“LAのヘルシーライフ”
数年前であれば、日本ではあまり見られなかった“ヴィーガン”や“グルテンフリー”といった選択肢。しかし最近は、LA(ロサンゼルス)の有名店の日本上陸や世界的な健康志向者の増加も相まって、日本でも食の選択肢が増えつつあります。さらにいえば、ライフスタイルそのものが、LAのようなヘルスコンシャスの高い暮らしに変化しつつあるようです。
今、日本の女性たちがLAの食生活、そしてライフスタイルに魅かれる理由はどこにあるのでしょうか?日本で味わえる“LAスタイル”をご紹介しながら、世界でも注目されるLAのヘルシーライフのヒミツを探っていきましょう。
復習!ヴィーガンって何?グルテンフリーって何?
カリフォルニアでは健康志向の女性が急激に増加していることもあり、過去のビーグレンイッシュの記事内でも何度か言及している「ヴィーガン」や「グルテンフリー」という言葉。ご存知の方も多いと思いますが、簡単に再度ご紹介しておきます。
ヴィーガンとは
まず、ベジタリアンといえば菜食主義者。つまり肉や魚など動物性の食材を口にしない食生活を送る人のこと指します。それに対してヴィーガンは完全菜食主義者と呼ばれ、肉や魚などはもちろん、卵、チーズ、バター類、はちみつ、ゼラチンなどの食材も一切口にしない食生活を大切にする人を指します。
ここで重要なのが、ヴィーガンは単に食生活における考え方だけではなく、生活のあらゆる場面で動物愛護の精神がベースにある場合もあるということです。菜食主義を徹底する思想の根底には、「人間は動物から何かを搾取することなく生きていくべき」という考え方があるのです。そのため、卵や乳製品であっても、決して口にしない食生活を貫いている人がいるわけです。健康志向から生まれることも多いベジタリアンの場合は、あくまで食の選択。しかしヴィーガンは、革製品など動物性素材の製品も使わないなど、食生活を超えた生き方の選択である場合もあります。もちろん、シンプルに健康を第一目的とするヴィーガンの方も存在し、ストイックさや考え方には幅がありますが、ヴィーガンはまさしくライフスタイルの多様性の象徴ともいえるでしょう。
グルテンフリー
グルテンフリーについては、文字通り“グルテン”(小麦・大麦・ライ麦など、穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種)を摂らない食生活を意味します。具体的には、パン、パスタ、うどんに始まり、餃子やビールなども当てはまってきます。場合によっては、味噌や醤油などにもグルテンが含まれていることもあり、日本人の私たちは普段からよく摂取している食材たちがリストインします。日本人が口にすることが多い主食類で唯一食べられるのが、お米ということになりますね。グルテンフリーを実践する人は、アレルギーが理由の場合もありますが、健康・美容面での効果を期待する方が多いようです。グルテンを含む食材は消化しにくいとされることもあり、グルテンを食べないことで腸内環境を改善でき、さまざまなメリットが享受できるからです。アメリカではミランダ・カーが実践しているなど、ハリウッドセレブに広く支持されている食生活でもあります。
カリフォルニア、特にLAでは当然の選択肢になってきたヴィーガンやグルテンフリーですが、日本でも最近大きな変革期を迎えているようです。
有名店の日本上陸で増加する“選択肢”
3年ほど前であれば、よくアメリカ人の友人にも「日本にはベジタリアンやヴィーガンのオプションがほとんどないわね」といわれたものですが、ヴィーガンやグルテンフリーなどLAのような食の選択肢が、日本でも増えつつあるのです。いわゆるヘルスコンシャスと呼ばれる健康意識の高い人たちの増加が理由の一つに挙げられますが、その幅の広がりを後押しするのが、LAの有名店の日本上陸だといえます。
ここでは、日本に上陸したLAのお店で注目を浴びている店舗をご紹介してみましょう。
1 アルフレッドティールームジャパン(Alfred Tea Room Japan)
2017年の日本初上陸からSNSでも常に話題の「アルフレッドティールームジャパン(Alfred Tea Room Japan)」。LAではメルローズに店舗を構え、ミレニアルピンクのフォトジェニックなデザインも流行に敏感なインフルエンサーやLAガールたちに人気です。特に最近カリフォルニアでは、ヘルシーブームの中で“お茶”への関心が非常に高まっており、LA店でも抹茶を筆頭に、日本茶、台湾茶、紅茶などのこだわりのティーセレクションや厳選材料がカジュアルに楽しめるとあって、高く評価されています。
日本でも、Alfred Tea Roomのシンボルとも言えるミレニアルピンクの外観とともに、LA店舗で人気のメニューが提供されている他、オリジナルのティーメニューも作られているそうです。
日本初上陸を記念して日本店舗オリジナルで発売されているメニューの一つが、ヴィーガン&グルテンフリーのデザート。鎌倉にある日本で初めてのヴィーガンスイーツ専門店「ハルカフェ229(hal cafe 229)」のオーナーパティシエなどの経験を持つ岡田春生氏によるスコーンやケーキのラインナップは、LA発のティールームだからこそ生まれた発想ですね。
そしてもう一つ日本でも大切にされているのが、LAのAlfred Tea Roomが描く女性像。店内に掲げられた“tea,yes. you,maybe.”(お茶は好き。あなたのことは、多分ね)というメッセージとミレニアルピンクを基調するデザインには、フェミニンでありながら自分の意志で生き方を選択する自由でアクティブな女性像が描かれているそう。強さもありながら、カジュアルに楽しく生きるLAの女性たちの姿がそのまま表現されたような言葉ですね。日本に上陸したのは、LAガールの心を射止めたミレニアルピンクだけじゃなく、ヴィーガンやグルテンフリーなどのフードカルチャー、そして女性としての在り方そのものでもあったわけです。
2 ブルージャムカフェ(Blu Jam Café)
今年1月に麻布十番に2店舗をオープンしたばかりの「ブルージャムカフェ(Blu Jam Café)」。LAでは朝食・ブランチ専門店として、6店舗を構えています。LAの全店舗には冷凍庫がなく、すべて新鮮なローカル野菜(その多くがオーガニック)で、ボリュームたっぷりの朝食やブランチメニューを届けています。また人工添加物の使用も一切なく、ヴィーガンやグルテンフリーのメニューも豊富にあることから、ヘルシーフードにこだわるLAの食通たちにもリピーターが多いことでその名が知られています。
日本の店舗でも、日本人のお客さんに合わせたローカライズは一切せず、LAのBlu Jam Caféをそのまま運んできたかのようなお店を再現しているそう。そのため日本人以外のスタッフも多く、英語が飛び交う店内には、食だけじゃない“異文化”を楽しみにしているお客さんも多いようですね。
ここ数年LAのヘルシー志向者の間でも人気の“オールデイブレックファスト”(一日2食で、ブランチしっかり夜は少なめという食生活)を支えているのが、ボリューミーなブランチメニュー。Blu Jam Caféでは、ヴィーガンメニューであっても、きちんとお腹にたまるブランチが提供されているそう。日本の店舗でも、ヴィーガンメキシカンのランチュロスがおすすめ。ヴィーガンとメキシカンのミックスは、まさにカリフォルニアの食文化の体現といえますね。
3 ザ・カウンター(The Counter)
サンタモニカ発のカスタムバーガー「ザ・カウンター(The Counter)」も日本に上陸したお店の一つです。こちらのバーガーショップは、100万通りの組み合わせが楽しめるとして、今ではカリフォルニアだけではなく、アメリカ全土に30店舗以上展開しています。他では味わえない世界でたった一つの自分だけのハンバーガーがカスタムできるシステムは、移民やさまざまな文化が混じり合うカリフォルニアだからこそのアイデアですね。
ここで注目したいのが、ヘルシーなヴィーガンオプション。野菜だけのパテやサラダの選択肢もあり、ハンバーガーショップであっても、幅広いニーズに対応してくれるのが魅力です。肉好きとヴィーガンが同じテーブルを囲み、ハンバーガーショップで食事をするという光景はまさにカリフォルニア発。食べ物の趣味が似た者同士だけが集まらない、類じゃなくても友を呼んでしまうのが、LAスタイルなのですね。
日本独自の“西海岸風”ヘルスコンシャス
LA発の有名店だけではなく、日本のお店で西海岸のヘルシーライフを意識した店舗も次々に登場しているようです。その一つが野菜カフェ、「ミスターファーマー(Mr.Farmer)」です。現在4店舗を展開するMr.Farmerをプロデュースするのは、日本で“畑の伝道師”と呼ばれる渡邉 明氏。彼自身が選んだ自慢の野菜をたっぷり使用し、素材そのものの味と力を最大限に活かしたサラダやサンドイッチなどのメニューがバラエティー豊かに揃います。また、ヴィーガンやグルテンフリーのメニュー、そして“飲むサラダ”と呼ばれるコールドプレスジュースなども人気を集めているよう。LAのヘルスコンシャスなカフェを思わせる、野菜が主役のおしゃれなカフェが登場しています。
緑が多くナチュラルでゆったりした店内は、まさに最近のLAのカフェにも多い洗練された空間です。お店でも“西海岸”スタイルを公言しており、空間そして食事ともにLAのヘルシーライフやカフェトレンドを意識したカフェといえますね。
色鮮やかなヴィーガン/グルテンフリーのカレーライスは、むしろ日本でしか味わえないようなお野菜の甘みがぎっしり詰まっていそうですね。
店舗の一つには、ファーマーズマーケットを開催するお店も。食材一つ一つにこだわってこその、本当の意味でのヘルシーメニュー!
写真だけ見ると、「LAかしら?」とも思ってしまうような夜のヨガイベント。健康志向の野菜カフェがヨガイベントを実施するという、ライフスタイルを丸ごとお客様に提案するような取り組み方も、LAマインドそのもの。「ヘルシーなライフスタイルは食事だけでなく運動やヨガ、そして健全な精神状態があって初めて完成する」という考え方が伺えますね。
最新のLAの食文化を体現するお店の日本上陸や、日本独自で展開される西海岸風のカフェなどをご紹介していきましたが、今LAを賑わすヘルシーなライフスタイル、そしてそういった暮らしのベースにある考え方、その正体はいったい何なのでしょうか?LAを中心に、カリフォルニアに巻き起こる“意志のあるヘルスコンシャス”な生き方について、掘り下げてみたいと思います。
LAの多様性と自己肯定のビッグウェーブ
LAはもちろん、カリフォルニア全域の人口は毎年おしなべて増加傾向が継続。不動産や税金の高さはものともせず、自然が多くその自由でスローな気質と天候の良さから国内外問わず多くの人が移住しています。その背景もあり、住む人の生き方、考え方は世界でも例に見ないほどの多様性を包含しています。そんな特異な体質に、セレブカルチャーやトレンドの最先端であることも交錯して、生き方に無限の“選択肢”が提供されているのが現在のLA。「野菜しか食べない」「メキシカンフードが大好物」「動物が大切」……、多様性が必要とするのはオプションの多さであり、LAに次々と新しいトレンドやライフスタイルが生まれるのは、そこにも理由があるようですね。
そして、なんといっても健康志向の女性が多いのは、ハリウッドカルチャーの影響も然りですが、カリフォルニアの多様性の中で個人を大切にするマインドが働いていることも根底にあるのではないでしょうか?つまり、意志を持って自己を肯定する考え方、「私は私」「あなたはあなた」というマインドセットの中に「自分を大切にしてあげる」「ケアしてあげる」=「心身ともにヘルシーであること」という考え方につながっていくとも考えられます。
そして、この考え方は決して、苦しいダイエットや独りでひっそり我慢することではありません。食を楽しみ、友人とのヨガやエクササイズも楽しむもの。そのために、女性たちが行きたくなるような、気分が上がるような、自慢したくなるような、おしゃれで洗練されたカフェやスタジオが存在する必要がある。それこそが、現在のLAのヘルシーライフであり、LAマインドのベースにあるのかなと思うのです。決められた均一の価値観ではなく、自分の意志で自分を大切にするための生き方を決める、健康志向は自分をケアする大切なプロセスの一部なのです。
日本は原点回帰と憧憬のインターセクション
そのようなLA女性のライフスタイルが日本で浸透しつつあることにも、きっと理に適った所以があるのだと思います。トレンドだといってしまえば簡単ですが、もう少し深いところで、この流れを紐解けるような気がします。
ヘルシーなライフスタイルの根底にある、健康な食生活の日本における浸透スピードの速さは、日本の場合は、そもそも、健康な食生活であったからだといえるでしょう。最近日本で人気を集めているシンプルなサラダやローフードのプレートを見ていると、昔祖母の家で出された野菜たちがふと頭に思い浮かぶのです。朝、裏の畑で採れたみずみずしいキュウリやトマト、カブやニンジンたち。特別な調理をすることもなく、ほんの少しの塩で食べる採れたての野菜は、今考えれば何よりもご馳走でした。祖母の家で食べると味気のない野菜ですが、サンタモニカで食べれば、贅沢なオーガニック、ヴィーガン、グルテンフリーのベジプレートです。それを日本の代官山で“LAのヘルスコンシャス”と呼びながら食べ直しているような気分にさえなってきます。元来、素材の味を存分に生かした料理は、日本人の得意分野で日本人の大好物なのです。それを 「ハンバーガーだ!」「パスタだ!」と欧米化の流れの中で浮気していただけで、もともとの初恋の原点は、その素朴で何の変哲もない野菜たちにあるのです。好きにならないはずがありませんし、浸透しないはずがありません。そう考えると、LAのような多様性から生まれた選択肢とは、また異なり、そもそもの原点回帰であったことがその浸透率の高さの理由の一つだと思えてなりません。
新鮮な野菜を私の祖母の家で提供していても、誰も来てはくれないですよね。青山や表参道の洗練された“西海岸風”のカフェで食べることで、女性たちは素材以上に美味しく感じ、高揚感に浸りながら幸せだと感じるのです。自分へのご褒美だと心が躍るのです。一度は浮気してしまった欧米への憧れは、やっぱり存在するもの。「LAの女性たちがこれで美しくなっている」「日本のモデルがLAのお店でこれを食べていた」、そのような情報を含めて、人はご飯を食べているのだともいえます。日本人の持つ無意識の原点回帰と、意識が高い故の憧憬、その交差点の上に“LAのヘルシーライフ”が立っているのだと個人的には感じています。
上陸したのは新しい店ではなく、新しいライフスタイル
次々に上陸し、話題に上がるLA発の人気店。日本の女性たちは、世界でもトップクラスのアンテナの感度を持つので、すぐにトレンドとなり注目されるのはうなずけます。しかしご紹介したMr.Farmersのように、日本独自のお店の中にもヴィーガンやグルテンフリーが浸透してきているということは、日本に初上陸したLAのお店から新しいライフスタイルや食に対する考え方がエデュケーションされつつある証拠ではないでしょうか?異文化を持つ国から新しい食文化が上陸すると、自ずとライフスタイルも新しく提案されることになります。食べることは、生きることですから。特に、昨今のフードカルチャーの賑わいを考慮すると、LAのお店が浸透・定着する頃には、日本もLAのヘルスコンシャスなライフスタイルで染まっているのかもしれません。