実はカボチャではない?秋の定番「パンプキンスパイス」、驚きの健康・美容効果
日本にもアメリカにも、食べると四季の訪れを感じる食べ物やフレーバーがあります。ここ数年のアメリカでは、“パンプキンスパイス”が初秋を運んでくれています。よく耳にするのは大手コーヒーチェーンのパンプキンスパイスラテですが、その人気も相まって、実にさまざまな商品に“パンプキンスパイス”が使われているのです。食べ物だけに限らず、キャンドルやコスメなどにもその特徴的な香りが採用されているのも興味深いところ。さらに、今年になって特にその意外な健康・美容効果について特集されるなど、ヘルシー路線でも新たな道を開拓しつつあります。今回は、そんな“アメリカの秋の味”について、健康メリットからレシピまでご紹介していきます!
パンプキンスパイスにカボチャは入ってない?
“パンプキンスパイス”という言葉だけ聞くと、文字通りのパンプキン味のスパイス?と思われがちですが、最近の解釈でお答えすると、実際はパンプキンですらありません。もともとは、パンプキンパイを焼くときに使う数種類のスパイスを総称して、「パンプキンスパイス」や「パンプキンパイスパイス」と呼ばれていました。しかし、カボチャが入っていなくとも、スパイスの独特の香りだけで、パンプキンパイを連想させることから、それらのスパイスの組み合わせを“パンプキンスパイス”と呼ぶようになったそうです。もちろん、本来のパンプキンパイやカボチャが含まれるレシピに使われることも多いのですが、スパイスのみを使用することも増えているのが最近の傾向。具体的にパンプキンスパイスとは、「シナモン」「ジンジャー」「グローブ」「ナツメグ」「オールスパイス」の5種類のブレンドのことを指します。アメリカに住む人々にとって、秋の到来を意味するこのパンプキンスパイスに、どのような健康・美容効果があるのでしょうか?
スパイスの黄金時代に突入
特にここ数年は、アメリカで“パンプキンスパイス”という名前から最も連想されやすいのが、先述したコーヒーチェーンのホイップやクリームたっぷりのパンプキンスパイスラテ。そのため、“パンプキンスパイスはヘルシー”というイメージは持たれていないのが実情。しかしパンプキンスパイスそのものを紐解けば、単純なスパイスの組み合わせであり、不健康な要素は見当たりません。むしろ、昨今の健康志向の流れのなかで、スパイスが欠かせない存在となっている背景から鑑みても、パンプキンスパイスは、最近のヘルシートレンドのメインストリームにもなり得る存在なのです。
アメリカで人気のターメリック、そして日本でもハマる人が多いパクチー(コリアンダー)も実はスパイスの一種。また、多種多様なスパイスをブレンドしたカレーを一日3食口にしているスパイス大国のインドは、世界的にも美人が多いことで有名です。「インド人女性の美の秘密はスパイスにあり」といわれるほど、スパイスは美容面でも恩恵を受けることができるのだとか。実際に、インド人女性は洗髪の頻度は高くないものの、スパイスを煎じたお湯で頭皮をキレイにし、髪に潤いを持たせる習慣を古くから続けていたそうです。食以外に、生活の必需品としてスパイスを利用していることからも、その底知れないパワーが伺えます。
食に関していえば、他のスーパーフードとは異なり、スパイスはあくまで調味料。料理を変えることで、飽きることなく毎日の料理に取り入れやすいことも大きな魅力の一つです。漢方薬としての役割を持ち合わせるスパイスも多く、今年に入ってパンプキンスパイスの健康効果が見直され、さらに人気が出ているのには、理にかなっているのです。
パンプキンスパイスの健康・美容効果は?
ここでは、パンプキンスパイスを構成する5つのスパイス「シナモン」「ジンジャー」「グローブ」「ナツメグ」「オールスパイス」の健康・美容効果についてご紹介していきます。
シナモン
スイーツやパン、ドリンクにもよく使われ、独特の香りが特徴的なスパイスの代表格。甘さと辛さの両方を持つその風味に注目されることが多いですが、実は体や肌にとってもいいこと尽くしなのです。腹痛、下痢を和らげ、発汗作用と解熱効果もあるとされています。また毛細血管を刺激することで、血液循環を改善してくれるそう。それにより、冷え性やむくみを解消してくれるともいわれています。さらには、毛細血管そのものの老化を防ぎ、血管の修復にも効果的とされています。毛細血管が老化したり、血管がダメージを受けていると、栄養が隅々まで行き届かなくなり、シミやしわ、くまの原因になることがあります。血管を若々しくキープし、血流が改善することで肌の代謝もアップし、シミやたるみなどへの美容効果も期待できるようです。また、肥大した脂肪細胞を小さくし、コレステロールを下げながら、血糖値を安定させるなどの効能もあるため、ダイエットにもおすすめのスパイス。魅力的な香りを持ちながら、美容にもダイエットにも優れた効果を発揮するとなれば、世界中の女性に愛されているのもうなずけますね。
ジンジャー
ジンジャー(生姜)の健康効果は日本でも古くから知られていますが、再度ご紹介しておきましょう。ジンジャーと聞くと、“体を温める”という効能がイメージされやすいですが、生のジンジャーと過熱したジンジャーでは、含まれる成分が異なるため、効果・効能にもわずかな違いが生まれます。
生のジンジャーには、ジンゲロールという成分が含まれ、これがあの特徴的な辛味の元になっています。血管を拡張し、体の末端まで血流を送る働きをしています。冷えによる肩こり、むくみ、肌のくすみなど、女性特有の悩みにも効果を発揮してくれるとあって、摂取を心がけている方も多いですよね。また整腸作用や殺菌効果、免疫力の強化などの薬効もあります。しかし、ジンゲロールには血流改善の働きはあっても、発熱・発汗の直接的な効果はありません。
ジンゲロールを過熱すると、ジンゲロンやショウガオールという成分に変化します。ジンゲロンには、優れた発汗作用があり、体を温めながら血流を促進してくれます。脂肪分解の効果もあるため、ダイエットにも最適と考えられています。また同様に、ショウガオールも、体を深部から温める作用があり、冷え性には生姜湯がいいといわれる理由がここにあるわけです。また生理痛の元凶とされるプロスタグランジンというホルモンの働きを抑制する作用もあり、PMSや生理痛に苦しむ女性の大きな味方になってくれるでしょう。
生姜はスーパーなどでも簡単に手に入れることができますが、他のスパイスと同じように、パウダーなどで応用しても効果は変わりません。
ナツメグ
ペッパー、シナモン、グローブとともに、世界四大スパイスに挙げられるナツメグは、独特の甘い芳香が特徴。加熱することで、その甘い香りが引き立つため、食材の臭み消しとして肉料理や魚料理に使われることも多いです。抗炎症作用、吐き気止め、消化促進、食欲増進などの作用があるとされているため、日本や中国では古くから健胃薬として利用されることも多かったそう。またインドでは、腸内機能を正常化し、便通を改善してくれるとされ、美肌に効果的であると考えられています。一方でナツメグが持つ毒性により、摂取量次第では、強力な精神錯乱を引き起こし、痙攣や嘔吐、動悸、全身の痛み、脱水症状などの副作用を引き起こす可能性があります。5g以上で副作用、生のナツメグ2個分以上で致死量になることがありますので、子どもの手の届かない場所に保管しておきましょう。しかし一般的な料理のスパイス程度の量ではまったく問題ないとされていますので、用量を把握して効果的に使いたいですね。
クローブ
非常に強い甘さを持つクローブは、インドのチャイティーには欠かせないスパイス。主成分であるオイゲノールには、殺菌・防腐・抗酸化作用があり、肉の腐敗を予防する目的で、肉料理に使われることも多いです。その甘い香りは、ゴキブリなどの虫も嫌がる成分のため、防虫効果も期待できます。精油にもオイゲノールが含まれているので、クローブの精油を含んだ綿をキッチンやクローゼットに忍ばせておくと、虫よけとしても活躍してくれるそう。また弱めではありますが、鎮痛や麻酔の効果もあり、古くは歯の痛みや切り傷、関節炎の症状を軽減させる目的で使用されることもあったようです。特にアメリカでは「お口周りのトラブルにはクローブ!」といわれており、歯の鎮痛の他に、殺菌作用や口臭予防としての用途も広く知られています。
オールスパイス
肉、魚、煮込み料理、洋菓子など幅広く使えるスパイス界のなんでも屋さん。スパイスをミックスしてできているような名前ですが、れっきとした単品の果実から得られるスパイスで、「百味胡椒」「ピメント」といった別名もあります。シナモン、ナツメグ、クローブを混ぜたような深みのある香りが特徴。この3つはパンプキンスパイスで使われるスパイスでもあるため、他のスパイスを邪魔せず、上手にまとめる役割をしてくれています。逆に他の料理では、ナツメグの代わりとしてハンバーグに使ったり、シナモンの代わりとしてお菓子に使ったり、クローブの代わりとしてビーフシチューに使ったり…と応用範囲が広い万能スパイスなのです。
健康効果としては、クローブと同様に、高い抗酸化作用を持ちます。体の酸化(=老化)を遅らせ、若々しい細胞を維持する手助けをしてくれます。体はもちろん、肌のエイジングケアにも一役買ってくれるというわけです。若い細胞の維持の他に、ダメージを受けた細胞の修復や免疫力向上などの働きもあり、動脈硬化やがん予防にも効果的といわれています。最近のリサーチでは、オールスパイスに含まれる成分には、体内で糖を作るアミラーゼやグルコシアーゼの生成を抑制する働きがあり、糖尿病予防の効果を示唆する研究結果も出ているようです。
上記のように一つ一つのスパイスに優れた健康・美容効果があり、ブレンドすることで相乗効果も期待できます。パンプキンスパイスを上手くレシピに活用して、健康・美容効果たっぷりのヘルシーなスイーツやお料理を手軽に味わうことができるのです。
パンプキンスパイスの作り方
パンプキンスパイスの作り方は至って簡単。5つのスパイスをミックスするだけ。市販でもパンプキンスパイスやパンプキンパイスパイスの名前で購入することができますが、すでにスパイスを揃えている方は自分で混ぜ合わせてもOKです。以下の用量を参考にしてみてください。
パンプキンスパイス<材料>
- シナモンパウダー・・・1/4カップ
- ジンジャーパウダー・・・大さじ2/3
- ナツメグパウダー ・・・ 大さじ2/3
- クローブパウダー ・・ 大さじ1/2
- オールスパイスパウダー・・・大さじ1/2
スパイスのブレンドだけなのでとても簡単ですが、他のスパイスを常備していない方でも簡単に市販のパンプキンスパイスが入手できます。
種類豊富にスパイスを取り揃える「シンプリーオーガニック(Simply Organic)」や、手頃な価格で質の良い商品が購入できる「トレーダージョーズ(Trader Joe’s)」のパンプキンパイスパイスなど、特にアメリカでは選択肢には困りません。もちろん、日本でもAmazonや楽天などで購入可能です。
ただ加えるだけの簡単レシピ
パンプキンスパイスを使った料理の優秀な点は、基本的にはパウダーを入れるだけという手軽さ。秋のフードとしてはカボチャが入っていれば完璧ですが、それがなくてもアメリカでは十分に“秋らしい”食べ物として多くの人がその季節感を楽しんでいるのです。ここでは、簡単に作れるパンプキンスパイスのレシピをご紹介していきます。
家でも簡単!秋の定番パンプキンスパイスラテ
最もシンプルな方法は、いつものラテにパンプキンスパイスのパウダーを一振り。これだけで、秋の香りが漂うパンプキンスパイスラテの完成です。もう少しこだわりたい派の方は、以下のレシピを参考にしてみてください。
ホームメイドパンプキンスパイスラテ<材料>
- 裏ごししたカボチャ・・・大さじ2
- パンプキンスパイス・・・小さじ1/2
- ブラックペッパー・・・1つまみ
- メープルシロップ・・・大さじ2
- バニラエッセンス・・・大さじ2
- 牛乳・・・480ml
- コーヒー・・・240ml
<作り方>
コーヒー以外の材料を小鍋に入れて、沸騰するギリギリまで温める。
最後にコーヒーを加えて出来上がり!
※お好みでホイップクリームを添えるとよりスイーツ感覚に。
秋の香りで目を覚ます!パンプキンスパイスの朝食
アメリカの朝食として人気のオートミールも、パンプキンスパイスで秋仕様に衣替えが可能。カボチャも入れるとさらに美味しいですが、スパイスだけでも秋の香りを楽しめます。
パンプキンスパイスオートミール<材料>
- オーツ・・・1カップ
- フラックスミール・・・大さじ2
- 水またはアーモンドミルク・・・1/2カップ
- シナモンパウダー・・・大さじ1/2
- パンプキンスパイス・・・大さじ1/2
※カボチャを加える場合は、裏ごしカボチャ(カボチャピューレ)を1/2カップ加えると、甘味もボリュームも一気にアップ!
※トッピングはお好みに合わせて選んでみてください。
バナナ、ブルーベリー、パンプキンシード、ドライフルーツなど。
その他に、朝の定番メニューのスムージーにパンプキンスパイスを一振りするのも人気レシピ。この時期は、パンプキンやパンプキンスパイスのパンケーキミックスも発売されるので、忙しい朝に最適です。仕上げとして、いつものシロップにパンプキンスパイスをミックスしたり、生クリームの上から一振りしたりするだけでも、風味が格段に良くなります。
秋太りも怖くない!パンプキンスパイスのスイーツ
美味しいモノが増える食欲の秋。好きなものを我慢せずに、同時にダイエットも成功したいのが女性の本音。パンプキンスパイスには、前述したようなダイエット効果の高いスパイスが含まれている上に、独特の甘さが心も胃も満たしてくれます。ここでは、スイーツとの相性抜群のパンプキンスパイスを使った本格的な「パンプキンスパイスドーナツ」のレシピをご紹介します。こちらはケトジェニックダイエットにもおすすめです。
パンプキンスパイスドーナツ<材料>
- アーモンド粉・・・1カップ
- 大きめの卵・・・2個
- 溶かしバター・・・大さじ3
- パンプキンスパイス・・・大さじ2
- エリスリトール(天然甘味料)・・・大さじ2
- バニラエッセンス・・・小さじ1
- シナモン・・・小さじ1/4
- ベーキングソーダ・・・小さじ1/4
- 塩・・・1つまみ
<作り方>
事前にオーブンを175℃程度に温めておく。
全ての材料をボールに入れて、柔らかくなめらかになるまでしっかり混ぜる。
ドーナツの型に流し入れる。
①のオーブンで12分から15分間焼く。
爪楊枝を刺して引き上げ、生地がついていなければ出来上がり!
その他に、パーティーや自宅で映画を見る際に食べたくなるポップコーンにも、パンプキンスパイスはぴったりです。バターやキャラメルよりも、糖分・カロリーともに低く抑えらます。市販のパンプキンスパイスを使うのもいいですが、「ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)」から発売されたばかりのパンプキンスパイスラテ風味のポップコーンも気になるところですね。
こんなものまで?溢れるパンプキンスパイス商品
アメリカでは秋になると街中がパンプキンのオレンジデコレーションで彩られますが、店頭はパンプキン商品で溢れます。パンプキンスパイスも然り、「そこまでパンプキンスパイスにしますか!」という商品まで登場するのです。アメリカの人たちは逆にそれを面白がってもいるため、最近のSNSでは“#pumpkinspice everything”というハッシュタグで、さまざまな商品を紹介し合っているほど。ジャンル問わず展開するパンプキンスパイス商品の一部を紹介していきます。
こちらも確かに朝の定番!
先述のオートミールやパンケーキの他にもアメリカの朝の定番といえば、シリアル。有名なメーカーのほとんどが、パンプキンスパイスフレーバーを発売しています。程よい甘さと大人が食べても飽きのこない独特のスパイス感が人気の秘密だそう。
他にもパンプキンスパイスベーグルなども登場しており、パンケーキやシリアル、オートミールとともに、1週間、毎日の朝食を全てパンプキンスパイスのメニューで始めることもできそうです。
ラテの次はパンプキンスパイスマティーニ!
コーヒーがあれば、アルコールももちろんあります。ここでもパンプキンスパイスが大活躍しているよう。中身のお酒はもちろん、グラスのエッジにも、そしてお酒の表面にも仕上げとして、パンプキンスパイスがトッピングされています。パウダーであることも、その用途を無限に広げているのです。
美容界にもパンプキンスパイスの香り!
もはや食べ物・飲み物だけにとどまりません!パンプキンスパイスに含まれるスパイスには、美容効果が高いものも多いので、スキンケアやコスメとの相性も抜群のようです。
日本でも人気の「ジョンマスターオーガニクス」からは、パンプキンスパイスのリップバームが到着。オリジナルのリップバームは個人的にも使用しているほど優秀ですが、こちら新フレーバーの使い心地も気になるところです。
ボディバターもパンプキンスパイスが登場しています。こちらはバニラチャイとのミックスという変化球。体からパンプキンスパイスが香れば、ダイエット効果もあるかもしれませんね。
季節を全身で感じるヘルスコンシャスな生き方
通年温暖な気候のカリフォルニアはアメリカの他の州や日本とは違い、四季の移り変わりを天候や景色から感じにくい場所といえます。だからこそ、カリフォルニアの人たちはレストランで使われる食材やフレーバー、また店頭に並ぶ商品によって、新しい季節の到来を味わい、喜びとしているのでしょう。野菜やフルーツ、シーフードなどは旬であれば、味はもちろん、栄養価もベストな状態で体に取り入れることができます。スパイスのように年中楽しめるものであっても、シーズンごとのフレーバーは、季節感とともに、その国独自のカルチャーまで反映します。日本の春には、市場に桜関連の商品が増えるのと同じく、アメリカの秋にはパンプキンスパイス商品が溢れるのです。季節の移り変わりに応じで旬のモノを楽しむことは、その瞬間を大切に生きるということ。そのように365日を積み重ねていくことこそ、“ヘルスコンシャスなライフスタイル”だと個人的には感じています。さて、今年のパンプキンスパイスはどんな商品を買おうかな?
出典
https://www.foodnetwork.com/healthyeats/recipes/2016/10/health-benefits-of-pumpkin-spice
https://www.littlethings.com/pumpkin-spice-benefits/
https://www.bustle.com/p/6-surprising-health-benefits-of-pumpkin-spice-apart-from-how-delicious-it-is-10233516
https://www.cheatsheet.com/health-fitness/pumpkin-spice-health-benefits.html/