健康と美肌は、腸から!プロバイオティクスは、今日から!【理論編】
アメリカのヘルシーフード業界でも聞かない日はない「プロバイオティクス」。また腸内の健康を促進するスーパーフードやダイエットは、例外なく話題に上ります。プロバイオティクスや腸内環境の正常化は、女性のヘルシーなライフスタイルをつくる重要なキーワードとなっています。今回は、腸から健康と美肌を導く情報を前・後編の2回にわたってご紹介しましょう。前編は、知っているようで知らないプロバイオティクスの基本の「キ」から、腸による体や肌への影響についてお知らせする【理論編】。続いて後編では、効果的にプロバイオティクスを摂取する方法をお届けします。まずは前編の【理論編】です。
プロバイオティクスって何?
トレンドワード「プロバイオティクス」
冒頭で言及したように、今やアメリカのヘルシートレンドを牽引している 「プロバイオティクス」や「腸内健康」という言葉。実際にグーグル(Google)のトレンド分析では、「best foods for gut health(腸内健康にいい食べ物)」などの検索が2012〜2017年で350%増になっているのだそう。2017年では400億ドルだったプロバイオティクス市場も、2024年には650億ドルまで成長し続けると予測されています。それだけ、健康を意識する人にとって欠かせないトピックであることが分かります。
しかし実際のところ、プロバイオティクスの正体とは何でしょうか?パッと「ヨーグルト」が頭に浮かんだ方、情報のアップデートが必要です。そして、腸内環境の悪化とは何を意味するのでしょう?こちらも、すぐに「便秘」と思った方、腸と体の関係はそれほどシンプルではありません。何となくの知識で理解していることも多いプロバイティクスについて、もう少し掘り下げて探っていきましょう。
生きた微生物
「プロバイオティクス」という言葉には、「体に有益な作用をもたらす生きた微生物」という定義があり、よく知られている乳酸菌やビフィズス菌なども、プロバイオティクスの一部に当たります。一般的に、人間の腸には400~500個種類以上、100兆個もの多種多様な腸内細菌が生息しているといわれています。種類ごとにまとまって住んでいることから、全体の様子が花畑のように見えるため、腸内状態を「腸内フローラ」と呼称することもあります。しかし、腸の中には、体にとって有益な作用をもたらす良い細菌(プロバイオティクス)が存在すれば、悪い働きを持つ細菌もいます。それらの性質の違いを持って、日本語では「善玉菌」や「悪玉菌」といわれているため、プロバイオティクス=善玉菌ということになります。
腸内には善玉菌と悪玉菌以外に、「日和見菌(ひよりみきん)」という細菌も存在し、この3つの細菌により腸内フローラが構成されています。日和見菌は、それ自身には良い作用も悪い作用ももたらす性質はないものの、悪玉菌が増えると有害な働きをすることがあります。つまり、善玉菌が多ければおとなしく、悪玉菌が多いと悪さを開始する菌が日和見菌であり、腸内フローラの約70%を占めているとされています。そのことからも、腸内細菌のバランスを、プロバイオティクス(=善玉菌)が優位な状態でキープすることが重要なのです。
腸内細菌の簡単まとめ
これまで説明してきたプロバイオティクスについてまとめてみましょう。腸内細菌それぞれの相違が理解できるはずです。
【善玉菌(プロバイオティクス)】
「プロバイオティクス」の定義にある「体に有益な作用」として以下が挙げられる。
①免疫機能アップ
②便秘・下痢の改善
③アレルギー症状の抑制
④動脈硬化の予防
⑤抗ガン作用など
細菌例:乳酸菌、ビフィズス菌、腸球菌
【悪玉菌】
体に悪影響を及ぼす腸内細菌。以下の作用が報告されている。
①腸の腐敗と老化を進行
②便秘や下痢の悪化
③腸内に炎症を起こす
④発がん物質の生成など
細菌例:大腸菌、ブドウ球菌、ウェルシュ菌
【日和見菌】
それ自身は良い働きも、悪い働きもたないが、悪玉菌が優位な腸内フローラにおいて、悪玉菌のような性質を持ち始める。腸内細菌の7割を占める。
これらの細菌バランスが崩れることで、腸内環境が悪化するわけですが、実際にどのような悪影響があるのでしょうか。以下の項目で見ていきましょう。
腸内環境が悪化すると起こるコト
人間が摂取する栄養を「消化」「吸収」「排泄」するのが腸の大きな役割のため、腸内環境の悪化は栄養が体全体に行き届かなくなることと同じだと考えられます。つまり、私たちが正常に体を動かし、考えたりできるのは、全身の細胞と血管に栄養が行き渡ってこその結果。その根源となる栄養は、小腸で消化・吸収され、肝臓から血液に乗って全身に届けられます。大腸では、栄養分の余りを腸内細菌と結合して便を作り、体外に排泄しているのです。腸の働きが悪ければ全身に栄養が行き渡らず、反対に排泄されずに腸に溜まった老廃物が全身を巡ってしまうこともあります。
また腸は「第二の脳」と呼ばれるほど神経細胞が集中しており、その数は脳の次に多いとされています。さらに脳と腸の関係も密接で、腸の不調は脳に反映され(精神的ストレスになり)、脳に受けたストレスは腸の不調に直接的に影響されます。実際に、深刻なストレス環境下にさらされると、胃がキリキリしたり、お腹が痛くなったり、下痢になったりなどの不調が聞かれますが、それも全て脳と腸がつながっているからなのです。
では、腸内環境が悪化すると具体的にどのような悪影響があるのか見てみましょう。
①肌荒れ
女性が最も気になる美容に関してですが、腸が荒れると、もれなく肌も荒れます。先述した通り、栄養を消化・吸収するのが腸のため、どれだけヘルシーな食べ物を摂取したつもりでも、腸内環境が乱れていては栄養が効率的に体に届きません。栄養分の吸収機能に支障をきたすと、当然肌にも栄養が巡らなくなってしまうのです。健全な肌細胞が美肌をキープしてくれるわけですから、栄養の運搬は第一に優先しなくてはならない機能なのです。さらに先述した脳と腸の関係と、以前記事内でも紹介したストレスと肌の関係が複合的に交わり、肌荒れを悪化させることも十分に考えられます。
②太りやすくなる、むくみやすくなる
こちらも女性にとっては大敵となる、スタイルへの影響。腸内機能が低下していると、脂肪燃焼に必要なミネラルやビタミンなどの栄養素も吸収できずに、効率良く脂肪を燃焼することができません。また全身の巡りが悪化していることから、代謝もスムーズに行われずに、浮腫みやすい体になってしまいます。
③病気になりやすい
腸内細菌の種類の一つである善玉菌の特徴として免疫機能を挙げましたが、全身にある免疫細胞の約60%は腸に集中しています。体を内外の病気から守っている腸内の環境が悪化することで、免疫細胞にも大きな影響を与えます。免疫力が低下することで、風邪などを始めとする感染症やさまざまな病気にかかりやすくなってしまうのです。
④便秘・下痢
こちらは最も顕著な症状といってもいい、便秘と下痢。一時的な軽い下痢から、慢性的な便秘まで重度はさまざまですが、重症化すると便秘と下痢を継続的に繰り返すケースも。いつもの便秘だと軽く考えずに、腸からのメッセージとして改善に取り組みましょう。
⑤冷え性、肩コリ
腸内の排泄機能が衰えることで、老廃物が蓄積し、全身の循環が悪化していきます。それによって冷え症や肩コリにもつながっていきます。女性が慢性的に悩むことも多い冷え性や肩コリですが、その元凶が腸内に潜んでいるかもしれないのです。
⑥生活習慣病の悪化
善玉菌の作用として動脈硬化の予防がありますが、腸内細菌はインスリンの分泌や尿酸のコントロールにも関連しています。糖尿病や高血圧にも影響することが最近の研究からも分かってきました。
体の重要な役割を担う腸
腸内環境が悪化し、腸の機能が低下することで、健康や肌にとって上記項目のような悪影響を及ぼします。消化・吸収・排泄という体の重要な役割を担うのが腸であるため、コンディションの善し悪しは体全体のシステムに影響してくるというわけです。その腸内環境を整えるのがプロバイオティクスであり、悪影響を及ぼす悪玉菌を減らす作用も持ち合わせています。後編の【実践編】では、プロバイオティクスを効果的に体内に取り入れることができる食品をご紹介していきます。
出典
https://www.health.harvard.edu/vitamins-and-supplements/health-benefits-of-taking-probiotics
https://www.healthline.com/nutrition/probiotics-101
https://www.healthline.com/nutrition/11-super-healthy-probiotic-foods#section5<