本物の肉を超えた!?「ヴィーガン肉」アメリカ最新事情
日本ではまだ一般的ではないものの、LA(ロサンゼルス)ではすでにおなじみとなった「ヴィーガン」(動物性食材一切不使用の食事のこと)。最近では、毎週月曜日に、肉を摂取しない「ミートフリーマンデー」というキャンペーンが全米中に浸透するほど、そのブームが拡大しています。今回は、ヴィーガン流行の追い風となったフェイクミートや大手バーガーチェーン店の最新動向とともに、100%植物性のプラントミートの安全性などについてご紹介します。
今や常識!肉の味を忠実に“再現”した「フェイクミート」
こちらは「ビヨンドミート」という、肉の味そっくりなフェイクミート。2016年、LAのヴィーガンブランド(会社名: サベージ・リバー)が植物性のプラントミートでつくったハンバーガー用のパテを開発し、大ヒットして一躍注目を集めました。
ビヨンドミートは、有名実業家のビル・ゲイツさんやハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオさんなど 多くの海外セレブや日本の大手商社・三井物産も出資するほどの有名ブランド。ホールフーズなどの大手食品スーパーやホテル、レストラン、ファストフードなど50社以上と提携し、多くの人々に知られています。
当ブランドのフェイクミートは大豆、エンドウ豆などを主原料にしたものなのですが、日本に昔からある大豆ミートや精進料理に出てくる“肉もどき”などとは比べものにならないほど、肉本来の味がします。加熱前の見た目や加熱中の肉汁や香りなどが肉そのもの…というより、むしろ肉を超えているという評判が後を絶ちません。
ついに大手チェーン店発!肉不使用のバーガーにサンドウィッチソーセージ
最近ではファミリーレストランの「デニーズ」がLAのビヨンドバーガーを試験的にメニューに取り入れたり、2019年11月上旬には「ダンキンドーナッツ」が全米でヴィーガンソーセージサンドウィッチを販売が開始されるなど、ニュースにも取り上げられるほどに話題を呼びました。
LAではビヨンドミートを使ったビヨンドバーガーの大ファンであるラッパーのスヌープ・ドッグが、ダンキンドーナッツのカウンターでお客に直接バーガーを手渡しするというサプライズなイベントがニュースにもなりました。
ビヨンドバーガーにライバル出現!「インポッシブルバーガー」とは!?
続いて紹介するのは、ビヨンドバーガーの人気に匹敵するフェイクミートバーガーの「インポッシブル・バーガー」(会社名:インポッシブル・フーズ・サンフランシスコ拠点)。
こちらはエンドウ豆から抽出したプラントベースのフェイクミート「インポッシブル・ミート」からなるハンバーガー用のパテを開発。遺伝子操作された酵母菌が生み出す「ヘム」という物質を混ぜているのが特徴で、歯ごたえのある肉の食感が味わえると絶賛されています。
2019年3月には、米国のバーガーキングがインポッシブル・フーズのプラントミートを使用したハンバーガー「インポシブル・ワッパー」を販売し始めました。最初はあえて家畜業が盛んなセントルイス(ミズーリ州)で試験販売を試みたところ、予想外の好評により全国展開を踏み切ったそうです。
植物性チーズを使用!「ヴィーガンチーズバーガー」が人気急上昇
昨今LAで人気を集めているのが、コリアタウンにある「モンティバーガー」。こちらもプラントベースの「インポッシブル・バーガー」を取り入れ、多くのヴィーガンファンを魅了。ヴィーガンチーズがたっぷりかかったチーズバーガーは人気メニューの一つです。
このような「ビヨンド・バーガー」「インポッシブル・バーガー」といった、フェイクミートの2大ブランドに続き、今となってはほかにも肉の味そっくりな植物性のフェイクミート・ブランドが多く出回っています。
しかも、フェイクミートを生産することで環境面では、水の使用量、地球温暖化の可能性が約90%も減少できるそう。実際、健康や美容に関してはどんなメリットがあるのでしょうか?
タンパク質は、動物性に頼らなくても大丈夫!
人間に必須の栄養素「タンパク質」(動物性)が多く含まれる本物の肉。ですが調べてみると、国連の世界保健機関(WHO)は、牛肉などの赤肉を「おそらく発がん性物質がある」というグループ2に分類しています。
これは、肉を加熱する際に PAH(多環芳香族炭化水素)という発がん性物質が発生するためですが、100%植物性のプラントベースのフェイクミートなら、タンパク質を「植物性」に置き換えることができるため、発ガン性物質を摂取しなくて済みます。
もう一つ、人間に必須なのが「IGF-1(インシュリン様成長因子)」という物質。これも、肉や動物食品を摂取した際に増加するものですが、フェイクミートならこの物質の増加を抑え、糖尿病や心疾患の心配を軽減することができるのです。
発ガン性物質の心配なし!プラントミートの健康メリットについて
かつてはプラントミートの繋ぎ部分に使用されている成分には「発ガン性物質が含まれている」と懸念されていましたが、近年販売されている100%植物性のプラントミートは、こんにゃく粉などの植物成分が繋ぎ部分に使用されているので、安全性に問題はないといわれています。
牛肉などの動物性の肉は、食用に育てられた家畜に投与されている人口肥料から流出する物質まで、発ガン性物質があるかないかを考慮する必要がありますが、植物性の場合は、その心配も無用。
人間に必須の栄養素を植物性に置き換えて、より健康的な食事とともに日々を過ごしていきたいですよね。
ダイエットや美肌効果まで!知られざる植物性フェイクミートの底力
前述の通り健康メリットの高い植物性のプラントミートですが、最近ではそれを使った「プラントベース・ダイエット」が流行っています。この食事療法は、植物性のフェイクミートを中心に、魚、貝類、乳製品、卵などの動物性食材を一切摂取しないというのがルール。
基本的には植物性の食材(野菜、種子類、豆類、果物、海藻など)がメインで、さらに野菜なら皮ごと、穀物なら玄米や全粒粉など、食材を丸ごと頂くことを「ホールフーズ・プラントベース」と呼びます。
食物繊維が豊富なだけに消化がよいので便秘も解消。また主原料のソイプロテインも取れるので、ビタミンEなどの美肌を導く成分も摂取できます。
動物性食材を全く摂取せず、革製品を身につけない、動物実験を行っている化粧品などを身につけないという「エシカルヴィーガン」とは違うため、まずは少しの期間、プラントベースミートを中心に、「プラントベース・ダイエット」に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。
地球温暖化対策にもつながる!海外セレブも推奨の「ビーフレス」な食生活
前述の「エシカル」(倫理的)な視点と同じく、環境保護の観点からもヴィーガンの貢献度は高いもの。2100年には地球の人口が109億人まで増えると予想される中、俳優のレオナルド・ディカプリオさんは「動物性の肉の代換えとなるヴィーガンの肉からタンパク質を取ることは、温暖化対策対策の一助となります」と、植物性プラントミートの活用を推奨しています。
これは、牛肉1kgを生産するのに約11kgの穀物が必要なためで、ますます増え続ける人間が家畜動物を殺生して肉を口にすればするほど、環境問題に負担がかかってしまうのはもう想像がつきますよね。
「地球のために一人一人が出来ることからはじめることが大切だよね」とモデルのローラさんも発言していますし、まずは週に1回、いま全米で拡大中の「ミートフリーマンデー」に挑戦してみると良いかもしれません。
魚もどきの「フェイクフィッシュ」が次なるブームの火付け役!?
フェイクミートブームの次なるブームとして、実は今、フェイクフィッシュにも注目が集まっています。
2019年7月、先ほどご紹介した「インポッシブル・バーガー」のインポッシブル・フーズ(サンフランシスコ拠点)は 、ヴィーガン用のフェイクフィッシュを発表しました。
魚の食感を出すために「ヘム」というプロテインを使用し、本物の白身の魚より美味しいと多くの人から好評を得ています。ヘムは、大豆植物の根の部分から採取できるタンパク質のため、鉄分不足によって陥る血行不良の防止が可能。顔色が冴えず、メイクのノリを悪くしてしまう 「黄ぐすみ」の解消も期待できそうですね。
さらに最近では、フェイクフィッシュを使った寿司屋まで登場!NY(ニューヨーク)にある「オーシャン・ハッガー・フーズ(Ocean Hugger Foods)」では、ローマントマトから出来た美味のフェイクツナ(名前はahimi)を刺身用として寿司屋に卸しています。現在は、NYと LAのホールフーズでもこのahimiを扱ったツナロールが実施販売されています。
他にもエッグプラントから出来たうなぎ(愛称: unami)も開発。フェイクフィッシュを使った、ユニークな寿司ネタで多くの人々を魅了しています。
美容効果も美味しさも両立。ヴィーガン食材の底力、ここにあり!
ご紹介したように、プラントベースの「フェイクミート」が多くの人に親しまれ、マクドナルド、バーガーキング、ダンキンドーナツなども、大手ファストフードチェーン店が相次いでヴィーガン向けメニューを打ち出すようになったのは、やはり、従来のものより旨みや質感などがより本物に近づいたことが大きな理由でしょう。
でも、そこに隠された本当のメリットは、美容や肌への利点、健康効果も兼ね備えているということ。植物性の肉なので消化も良くダイエットにも効果的ですし、女性が陥りがちな鉄分不足による貧血の予防まで出来てしまいます。
多くの人たちも「試してみたい」「また食べてみたい」と人気を集めている、植物性(プラントベース)のフェイクミートやフェイクフィッシュ。日本でのブーム到来も、そう遠くはないかもしれません。
出典
https://newyorkpicks.com/life-tips/beauty-and-health/plant-based-meat20190623/
https://oceanhuggerfoods.com/
https://www.dokujo.com/lifestyle/201409291023.html
https://macaro-ni.jp/37114
https://ethic