「ゆらぎ肌」と「敏感肌」は同じ?解決! 春のゆらぎ肌
パステルカラーの装いの増える春、この時期は体調だけでなく、肌のコンディションも崩しがちです。ニキビや乾燥などに代表される肌トラブルが起こりやすい春の肌状態「ゆらぎ肌」。雑誌など、さまざまなメディアでも特集が頻繁に組まれています。もちろん、夏でも秋でも冬でも、肌の「ゆらぎ」は起こりますが、原因が山積なのは「春」だからです。本来は過ごしやすい季節を肌の不調に悩まされることなく満喫するためにも、「ゆらぎ肌」とはどのようなものなのか。「敏感肌」との違いを理解しながら、原因や対策法を見ていきましょう。
目次
肌が一番ゆらぎやすい季節。それは「春」
健常な肌でもなり得る「ゆらぎ肌」
一時的な「ゆらぎ肌」とは異なる慢性的な「敏感肌」
一時的だからと放置はNG
「ゆらぎ肌」はこれで解決!スキンケア3つの「徹底」
「ゆらぎ肌」はこれで解決!生活習慣3つの「改善」
肌が一番ゆらぎやすい季節。それは「春」
「暖かくなった」とはいえ、一日の気温差が大きく、寒さが戻る日もある春先。激しい寒暖差は自律神経のバランスの乱れにもつながります。それによって起こるのが不眠や冷え、肩凝り、イライラ、気分の落ち込みなどの症状。まとめて「寒暖差疲労」などと呼ばれたりしますが、自律神経の乱れは美容にもダメージを与えます。血行不良の影響で肌がくすんだり、皮膚への栄養供給が滞って肌荒れや乾燥が起こったり。さらにこの時期は紫外線や花粉などの外的刺激も加わります。ただでさえ乾燥した冬の外気によってバリア機能が低下しているところに、追い打ちがかかるのが、春の肌環境というわけです。ここで、「ゆらぎ」につながる春の肌環境について確認してみましょう。
「ゆらぎ」につながる春の5大肌環境
1 急激な気温差や気圧差
気温の寒暖差はもちろん、気圧の変動も自律神経の乱れを起こします。なかでも低気圧と高気圧の入れ替わりが激しいのが春先。体も肌も天気に振り回されっぱなし。それがこの季節です。
2 環境の変化によるストレス
自律神経はストレスとも密接な関係があります。新年度に入って新たな生活が始まる人は、人間関係も含めて環境の変化からストレスが溜まりがちです。神経が高ぶって睡眠の質が落ちると、成長ホルモンの分泌もダウン。ターンオーバーの遅れにつながります。
3 紫外線
11~2月には落ち着いていた紫外線量が3~5月にかけて急上昇。4月のUV-B量は残暑の厳しい9月とほぼ同じです。春は、思っている以上に紫外線にさらされる時期なのです。
4 花粉
日本では約60種類の花粉が花粉症の原因として報告されていますが、飛散が増えるのはやはり春。地域差があるものの、スギは2月~3月、ヒノキは4月がピークといわれています。肌トラブルが出やすいのは、まぶた、頬、首。かゆみ、腫れ、ピリピリ、ヒリヒリなどを伴うのが特徴の一つです。
5 黄砂、PM2.5など大気汚染物質
春になると東アジアの砂漠地帯から飛来する黄砂やPM2.5も、肌に負担をかける原因の一つ。これらの大気汚染物質の粒子は毛穴 (一般的に約100μm) よりも小さく、黄砂は0.1~1.0μm、PM2.5は2.5μm程度。肌に付着するばかりか、容易に毛穴の奥へ入り込んでしまう大きさです。
健常な肌でもなり得る「ゆらぎ肌」
こうして春先の肌環境を整理してみると、「ゆらいでしまうのも無理はない」と思えてきませんか?もちろん、どんなときでも肌は常に微細に揺れ動いてはいます。イメージとしてシーソーのように揺れ動きながらバランスを保っていますが、「ゆらぎ肌」は均衡が保てないほど揺れが大きく不安定になってしまった「状態」です。
具体的には、冬から春への季節の変わり目に起こる気温や環境の変化についていけず、著しくバリア機能が低下し、一時的にトラブルを起こしてしまった肌状態のこと。例えば、いつもの化粧品に刺激を感じたり、メイクののりが悪くなったり、乾燥がひどくなったり、ニキビや吹き出物が出来たり、かゆみや赤みが出たり。敏感肌と混同されがちですが、バリア機能を高めるケアをすれば改善できる一時的な状態が「ゆらぎ肌」です。
一時的な「ゆらぎ肌」とは異なる慢性的な「敏感肌」
「ゆらぎ肌」。一見、肌タイプのような表現ですが、異なります。肌タイプはあくまでも「普通肌」「脂性肌」「乾燥肌」「混合肌(脂性乾燥肌)」の4種類。
「敏感肌のことを“ゆらぎ肌”とも呼ぶ」と思われている方も多いのですが、ゆらぎ肌=敏感肌ではありません。一時的にバリア機能が低下している「ゆらぎ肌」に対して、慢性的に低下しているのが「敏感肌」なのです。先天性の人もいて、他の肌タイプが反応しないような刺激に対して慢性的に反応してしまうのが「敏感肌」です。つまり、普通肌の人でも脂性肌の人でもなり得るのが「ゆらぎ肌」。ここは正しく理解しておきたいポイントです。
「ゆらぎ肌」は一時的だからと放置はNG
慢性的な「敏感肌」に対して、一時的な「ゆらぎ肌」。だからといって「ゆらぎ肌」は一時的に我慢すればいいというものではありません。放置すると肌力が衰え、慢性的な敏感肌に傾き兼ねないからです。お手入れを怠って深刻な肌トラブルを誘発することもあります。
例えば、ゆらぎが原因で出来てしまったニキビが跡になったり色素沈着を起こしたりなど。乾燥によってエイジングを助長してしまうことも十分考えられます。肌に負担をかけずに、でもしっかりケアをしてバリア機能を回復させる必要があります。ただし、この時注意したいのが、やみくもに「敏感肌用」「低アレルギー性」と表示された製品を使えば良いわけではないということです。
「敏感肌用コスメ」も合わない人は合わない
米国皮膚科学会(AAD)は「スキンケア製品のラベル表示に記載されている用語をそのまま信じてはいけない。米食品医薬品局(FDA)に規制されているわけではなく、製品が肌を刺激しない、あるいはアレルギー反応を引き起こさない保証があるわけではない。また『天然100%』という言葉についても注意が必要。天然成分が肌に良いとは限らない」と皮膚科専門医のラージニー・カタ(Rajani Katta)氏の助言を紹介しています。
「ゆらぎ肌」はこれで解決!スキンケア3つの「徹底」
使っていたスキンケア製品に刺激を感じたり、いきなり肌に合わなくなったりといったことが「ゆらぎ肌」には起こります。とりあえず敏感肌用に変えてみる。ありがちな行為ですがご紹介したように、「敏感肌用」だから、肌を刺激しない、アレルギー反応を引き起こさない保証があるわけではありません。大切なことは肌の状態に合わせたお手入れを行うこと。わからない時は、信頼のおけるスキンケアのプロ(スキンケアコンサルタント)に相談をしてみましょう。その上で守りたいのが3つの「徹底」です。
1 毛穴からクレンジングの「徹底」
落とすケアが完璧にできてこその、与えるケア効果。「ゆらぎ肌」の要因の一つである黄砂やPM2.5などの大気汚染物質は、親油性(より油っぽい)の物質が多いため、クレンジング製品を使うことが有効な手段になります。クレンジング剤を選ぶポイントは、油性のメイク汚れも親油性の大気汚染物質などの汚れも、水性の花粉も同時に落とせるかどうか。特に毛穴の奥に入り込んでしまうナノレベルの大気汚染物質は体内で活性酸素を発生させ、酸化ストレスによる炎症やバリア機能の低下を引き起こします。一方で、洗顔は限りなく肌にやさしくあるべきが大人の肌の鉄則です。洗浄力の強い泡洗顔は、汚れだけでなく必要な皮脂まで落としてしまいがち。そのためクレイにより、汚れや余分な皮脂を吸着して落とす、泡立たない「吸着洗顔」はおすすめです。
2 保湿の「徹底」
化粧水で肌をうるおわせ、ゲルやクリームで保護することは保湿の基本です。選ぶ製品によっては、ターンオーバーの過程で天然保湿成分や細胞間脂質を自らつくり出す肌の機能に着目し、うるおいを育む力を高めることも可能な時代です。そしてバリア機能を正常に保つためには、「こすらない」「叩かない」「すり込まない」こと。化粧水も美容液もクリームも、ハンドプレスをするだけで角層に十分浸透するのです。
3 紫外線対策の「徹底」
夏には欠かさない紫外線対策も、日差しが柔らかい春は手薄になりがちです。しかし、ぽかぽか陽気のなかでぐんぐん上がっているのが紫外線量。通年でUVカット入りのファンデーションや日焼け止めをつけることを心がけましょう。ただし、長時間肌に塗り続けることが肌への刺激となってしまうこともあります。家に帰ったら、まずクレンジング。バスタイムまで放置せずに、肌に付着した汚れや花粉を洗い流しましょう。
「ゆらぎ肌」はこれで解決!生活習慣3つの「改善」
1 食習慣の「改善」
気温の寒暖差や気圧の変化が自律神経を乱し肌にダメージを与える春先。改善で最も意識したいのは血流を良くすることです。血流が良くなると、自律神経のバランスが整うからです。同時に免疫機能の働きも良くなるため、肌のバリア機能もUP。そこで心がけたいのは、やはりバランスの取れた食生活なのです。
タンパク質は動物性と植物性のダブルで
筋肉をはじめ、皮膚や臓器といった体を構成するものの大部分はたんぱく質からできています。タンパク質には肉や魚などから取ることができる動物性タンパク質と大豆や小麦に含まれる植物性タンパク質がありますが、ダブルで摂取するのが理想です。動物性タンパク質は必須アミノ酸を含み、植物性タンパク質は低脂肪で低カロリーだからです。
抗酸化を意識
肌の炎症やバリア機能の低下を招く活性酸素の発生を体内で抑え、紫外線による肌ダメージを助けるのが抗酸化物質。それを多く含む食材を摂ることで、体の中からもゆらぎ肌に働きかけることができます。ビタミンA、C、E、ファイトケミカル(※)が豊富で抗酸化作用が高い、春野菜や果物をご紹介しておきます。
【抗酸化作用が高い春野菜や果物】
<野菜>
春キャベツ、新タマネギ、菜の花、タケノコ、山菜類(ワラビ、山ウド)など
<果物>
柑橘類(デコポン、ポンカン)、イチゴ、キウイなど
※植物が、紫外線や外敵となる昆虫などから身を守るために自らつくり出す化学成分。
高GI食品をできるだけ避ける
GIは食後の血糖値の急上昇を示す指標のこと。糖質量の多い食品は長い目で見ると肌の糖化にもつながります。100%カットすることはできませんが、「ベシーファースト」「セカンドミール効果」を意識してみてはいかがでしょうか。ベシーファーストとは、最初に野菜を食べて血糖値の上昇を抑えること。セカンドミールは、一日の最初の食事(ファーストミール)が次の食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響を及ぼすというもの。GIの提唱者であるジェンキンス博士(トロント大学)が1982年に発表した概念です。
【知っておきたいGI値】
<穀物・パン・麺類>
食パン(95)、精白米(88)、うどん(85)、餅(85)、パスタ(65)、蕎麦(54)、玄米(55)、ライ麦パン(55)
<野菜>
ジャガイモ(90)、ニンジン(80)、トウモロコシ(75)、カボチャ(65)、サツマイモ(55)、キャベツ(26)、大根(26)、ブロッコリー(25)、ほうれん草(15)
2 睡眠の改善
肌のゆらぎは、「しっかり休んでほしい」という体からのサインでもあります。一番大切なのはどれだけ深く眠れるか。少なくとも3時間は“ぐっすり”眠らないと、大切な成長ホルモンの分泌が阻止されてしまいます。睡眠中は副交感神経を優位に立たせるメラトニンも大量に分泌されます。メラトニンには強い抗酸化作用もあります。
3 ライトメイクへの改善
肌がゆらいでいるときはノーメイクのほうが良いと思いがちですが、日中は、紫外線、花粉、PM2.5などの大気汚染と外的刺激がたくさんあるので、何も塗らずにいる方が肌には酷です。保護目的のライトメイクは「ゆらぎ肌」の味方になります。特に軽い感触でUV効果が期待できる化粧下地やBBクリームなどを塗るようにしましょう。ちなみに、BBクリームの“BB”とは、「Blemish Balm(ブレミッシュ バルム=傷を修復する軟膏)」の略。ピーリング後のデリケートな皮膚を保護して、肌再生を促す機能を追加したファンデーションとして、ドイツで開発されたのが始まりです。
春の「ゆらぎ肌」対策が夏のトラブルを跳ね返す肌へ導く
いかがでしたか?「ゆらぎ肌」と「敏感肌」の違いをご紹介しながら、ゆらぎ肌によるトラブル、原因、対策法についてじっくり見てきました。なんといっても心強いのは「ゆらぎ肌」は一時的なものであること。「春先はいつもこう」と諦めず、適切なお手入れで乗り切りましょう。それが本格的な春、ひいては夏のトラブルを跳ね返す肌へとつながっていくのですから。
参照
https://www.aad.org/public